百周年レポート

研究第一、実学尊重、門戸開放の校風のもと、多数の留学生も机を並べる学内では、それぞれに医学・医療・福祉への強い意志を持った学生や研究生が、第一線の「学び」を実践しています。長い歴史をもち、研究と医学教育の最前線である本学医学部の、過去、現在、そして未来についてレポートします。

医学部開設百周年記念ホール −星陵オーディトリアム− 医学部開設百周年記念ホール −星陵オーディトリアム−

復興を担う医療人の育成にふさわしい環境を

大内 憲明|東北大学リサーチプロフェッサー/第37代医学系研究科長

星陵会館の老朽化

これまでの東北大学医学部学生の教育環境は、とても十分と言えるものではありませんでした。教室数は足りないし、厚生施設である星陵会館の老朽化も進んでいました。追い打ちをかけるように震災によって、星陵地区の学生の教育環境も大きなダメージを受けました。
震災復旧が優先され、ますます学生、あるいは教職員のための厚生施設的なものはおざなりになってしまいました。そんな中、医学部の定員が増えるなど地域医療を担う東北大学医学部への社会からの期待は、震災以後ますます高まってきていました。そこで、2012年に私が研究科長に就任して最初にとりかかったのが、学生や職員みんなが各々の力を十二分に発揮出来るような、教育環境・厚生施設の改善です。

既存の建物と合築するアイデア

オーディトリアムは山本先生が作成された計画案がありましたが、震災後、ものすごい勢いで建築ラッシュがあり、資材や賃金の高騰で単一の独立した建物を建築することはかなり難しい状況でしたので、既存の建物と合築するアイデアが生まれました。そして星陵キャンパスの中心にあたる星陵会館のある場所は、東側に並木通りがあって一般の方々も通行し、キャンパスのどこからもアクセスしやすく通行の妨げにならない場所です。そこで老朽化の著しい星陵会館を改築すると同時に、星陵キャンパス全体での最大収容のレクチャーホールまたは講堂をつくるという計画へ変更しました。

とにかく「ゆとり」を持つ

講堂は最低でも280人は収容できるような大ホールを計画しました。医学科二学年(270人)や医学科・保健学科一学年(279人)を同時に収容できるので最終講義や学位記伝達式も星陵オーディトリアムで実施できます。白衣式などのセレモニーも行えるように、登壇する場所と座席との間を離し、平場を確保するなど多様な利用の仕方に対応できるよう細部の検討も繰り返しました。
大ホールの内装コンセプトは、とにかく「ゆとり」を持つ。座席前は新幹線のグリーン車より広くなっています。また、どの席からも柱が視線を遮らないようになっています。外構の緑地をうまく活かそうと、建物周りのヒマラヤスギもヒポクラテスの木もきちんと残した形でホールの形状と内部空間を調整することに、相当苦労しました。

左/ゆったりとした座席スペースをそなえ、音響にも配慮 右/周辺の緑に配慮された形状の採光部 左/ゆったりとした座席スペースをそなえ、音響にも配慮 右/周辺の緑に配慮された形状の採光部

星陵キャンパスの中心に

一階の入口は部屋を置かない、何も置かない、とにかくオープンにしようと考えました。例えば大学院生のリトリート発表会をこのスペースで行えます。これまでは片平のさくらホールで行っていましたので、ポスターやボードを前の日にトラックで運ぶ必要があり準備が大変でしたがその負担がなくなります。また、市民公開講座などにも利用でき、地域に開かれたスペースとなっています。二階にはホールの他に、大会議室、小会議室が2つあります。もちろん講義や実習にも利用できますが、一階と一体で使うことで、いろんな学会、地方会、研究会等の開催も可能になります。

左/星陵地区で最大の席数を誇る大ホール 右/リトリート発表会など多目的に使えるエントランスホール 左/星陵地区で最大の席数を誇る講堂 右/リトリート発表会など多目的に使えるエントランスホール

このように、星陵オーディトリアムは、星陵会館と一体で使われることで様々な用途への利用が可能となるよう計画しました。医学部だけではなく星陵キャンパスの中心に位置し、学生や職員に留まらず一般の方々へも開かれた、高い公共性をもったシンボリックな建物にしたかったのです。

大内 憲明

東北大学リサーチプロフェッサー。大学病院副病院長・がんセンター長を経て、2012年〜2015年医学系研究科長。専門は腫瘍学、外科学、分子生物学、ナノ医科学。

大内 憲明
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