東北大学大学院医学系研究科 大学院教育改革支援プログラム

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研究推進・倫理ゼミナール 2008年度

大学院生の研究力増進と研究倫理観形成を目的に、講演および懇談会形式で全大学院生を対象とした公開ゼミを実施する。本ゼミの最大の特徴は、ゼミの 企画・運営に大学院生(ルネッサンスTA)が直接参加し、いわば学会・研究会の企画・運営の模擬演習として実施する点である。同時に、TA以外の大学院生は講演の単なる聴衆となるのではなく、より積極的なゼミへの参加が義務づけられる。また、本ゼミは1年次学生の履修対象科目であり、ゼミ終了後の研究企画申請実習(スターター申請)と合わせて履修単位が認定される。

平成20年度 第1回 研究推進・倫理ゼミ 報告

日時 : 平成20年6月27日(金) 17:00〜19:00
講師 : 菅村 和夫 先生
(東北大学大学院医学系研究科 前研究科長・病理病態学講座免疫学分野 教授)
講演タイトル : 「免疫学に魅せられて 〜失敗は次へのステップ〜」
担当 TA : 市川 聡、中目 亜矢子、添田 大司

概要

菅村先生ご自身の,大学卒業から細菌学教室への入局、留学を経て、interleukin receptor common gamma-chainの発見など数々の業績を上げるに至るまでのstoryを軸に、様々な人との出会いや、失敗体験談も交えながら、大変興味深い講演を頂いた。

「研究に失敗はつき物であり、そこから何を得て次につなげるかが重要」ということは先生が強調してお話されていたポイントであり、実際菅村先生が体験された幾つかの失敗談について、その時何が原因と考えられ、そこから何を学ばれたかということを、我々が今後研究を進めていく上での教訓としてお話いただき、大変貴重であった。

また、菅村先生が出会った世界の研究者とのepisodeを通して、研究者とは、あるいは科学者とはどうあるべきかということについても先生の視点からお話頂き、今後我々がどのような姿勢で研究に携わっていくべきかという根本的な部分を考える上でも大変参考になるお話であった。

文責:市川 聡

平成20年度 第1回 研究推進・倫理ゼミ 報告
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平成20年度 第2回 研究推進・倫理ゼミ 報告

日時 : 平成20年7月31日(金) 18:00〜19:30
講師 : 大隅 典子 先生
(形態形成解析分野・器官構築学分野教授)
講演タイトル : 「伝わるプレゼンテーション」
担当 TA : 工藤 千枝子、望月 研太郎、渡辺 祐子

概要

いかに上手にプレゼンテーションを行うか。これは、大学院に入った学生が最初につまずく問題ではないでしょうか。今回のゼミは、普段気になっているけどあまり聞く機会がない事を教えてくれる、願ってもないプレゼンでした。当日は学生・教師を問わず百名以上の聴衆が駆けつけ、今回の演題に対する関心の高さが伺えました。

『伝わるプレゼンテーション』という題で講演するには、講師の先生においても重責だったのではないでしょうか。そのプレゼン自体がお手本となるべきで、講演内容はもとより、演者の一挙一動や話し方まで注目されるのですから。大隅先生の講演はそんな重責をものともせず、百戦錬磨の雰囲気を感じさせる見事なプレゼンでした。身振り手振りを交えて話される内容は、スライドの背景から当日のチェック項目、話し方にいたるまで多岐にわたり、明日から即利用できる非常に実践的な内容でした。『伝える』だけでなく『伝わる』ためにはどうしたらよいのか、聴衆を知ることから始めるということ。一つ一つの具体的な内容を、この短い文章でお伝えすることはかないませんが、聞き逃してしまった方は、大隅典子先生の著書『バイオ研究で絶対役立つプレゼンテーションの基本』を読んでいただければと思います。

平成20年度 第2回 研究推進・倫理ゼミ 報告
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平成20年度 第3回 研究推進・倫理ゼミ 報告

日時 : 平成20年9月12日(金) 17:00〜19:00
講師 : 室山 哲也 先生(NHK解説委員)
講演タイトル : 「テレビマンのコミュニケーション論」
担当 TA : 渡辺 祐子、市川 聡、立花 良之

概要

今回の講師は、脳科学・科学技術・環境問題・災害等を重点テーマに番組制作され、数々の受賞をされている、NHK解説主幹の室山哲也さんだった。

まず「医者のコミュニケーション能力が問われている!」というテーマで、専門性の高い内容を伝える際に「補助線をひく」重要性が伝えられた。

さらに、免疫学教室石井准教授の趣味を題材に、「質問力」を高めるための全員参加型の演習がなされた。「何かがchangeしたとき」に関する質問によって、「一点突破・全面展開」された場面を目の当たりにできた。

最後に、コミュニケーションに関する数々の名言を我々に投げかけられ、子供からの「どうせ死ぬのにどうして生きるの?」という問いに答えられるような番組を制作していきたいとおっしゃり、ゼミは閉じられた。

ひとりひとりの心に留めたいエッセンスが満載の、大変有意義な時間だったと思う。

文責:渡辺 祐子

平成20年度 第3回 研究推進・倫理ゼミ 報告
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平成20年度 第4回 研究推進・倫理ゼミ 報告

日時 : 平成20年9月25日(木) 17:00〜19:00
講師 : 今井淳太 先生(糖尿病代謝科)
「膵β細胞再生の試み」
森口尚先生(医化学分野)
「筑波大学とミシガン大学と東北大学で学んだこと」
講演タイトル : 若手教官による「私の履歴書」
担当 TA : 中目亜矢子、貫和 奈央、工藤 千枝子

概要

二人の先生から、医学部を卒業してからどのような道を歩んで研究を続けて来たか、実際の研究データとともにお話いただいた。

今井先生は、コントロールの難しい糖尿病に対し、膵β細胞の移植などの経験を経て、膵β細胞の再生の必要性に着目され、adenovirusでPDX1を導入することで実験的には再生が可能になることを示された。また、糖代謝が、脳・液性因子・自律神経の3者のネットワークでコントロールされていることを示され、新たな糖尿病治療の可能性についても言及された。

森口先生は、筑波大学・ミシガン大学という二つの大学を経て、東北大学に着任されるまでの、研究の経過や成果をお話下さった。MafやGATAという転写因子に着目して研究を進めておられ、複数のラボでの経験を経て、研究者として前進して来られた道筋をご紹介下さった。

今後私たち院生がどのように学び、どのような道を選択していくか考えるにあたり、先輩の経験をお聞きする機会が持てたことは、今後の研究生活の大きな糧となったと思う。

文責:中目亜矢子

平成20年度 第4回 研究推進・倫理ゼミ 報告
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平成20年度 第5回 研究推進・倫理ゼミ 報告

日時 : 平成20年10月10日(金) 18:00〜20:00
講師 : 村松 秀 先生
(NHK エデュケーショナル 科学健康部 エグゼクティブ・プロデューサー)
講演タイトル : 「史上空前の論文捏造」番組取材の現場から
担当 TA : 貫和 奈央、添田 大司、望月 研太郎

概要

今回の講演では我々にとって身近な科学や論文をテーマにお話をしてくださった。

はじめに村松氏がこれまでNHKでどのような番組に携わってきたのかを紹介してくださった。もちろん我々にとてもなじみのある番組もたくさん含まれていた。

そして、ベル研究所でのシェーンの論文捏造がどのような過程で行われ、発覚したのかを多くの映像を交えながら話してくださった。「なぜこのような論文捏造が起こってしまったのか?」「防ぐことはできなかったのか?」このような疑問をシェーン本人、上司、ジャーナルの編集者、ベル研究所の研究者、世界中の研究者への取材を通して解明していった。しかし、個人の考え方や不正への対策は論文捏造を防ぐには対症的なだけで、実際は「科学」が変化してしまったことを考える必要があるのではないかと説明した。

科学倫理を考える上での問いかけとして「科学とは何をするものか?」「科学者とは?」と、まず科学を根本から考えることが必要なのではないかとお話くださった。実際に我々は「科学ってなに?」と聞かれた時にしっかり答えることができるだろうか。我々は想像力を豊かに、創造力を高め、適宜視点を転換し人々とコミュニケーションをとりながら科学を考えていくことが必要であることを気づかされた。

また、質疑応答では参加者から活発なディスカッションが繰り広げられ、改めて今回のテーマについて多くの人が注目していることを再認識した。

文責:貫和 奈央

平成20年度 第5回 研究推進・倫理ゼミ 報告
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平成20年度 第6回 研究推進・倫理ゼミ 報告

日時 : 平成21年1月20日(火)
講師 : 中村祐輔先生(東京大学)
講演タイトル :
「ベッドサイドからベンチサイドへ そしてベッドサイドへ
患者さんに思いが届く医学研究を」

概要

本年度から始まった大学院GPの倫理研究推進ゼミ、最後は大学院生自身が企画運営を行う『自主ゼミ』という形式で行われました。

事前に大学院生にアンケートを取り、是非講演を聞きたいという講師を募った結果、圧倒的多数の支持を得て中村祐輔先生が推されました。

ご存知の通り、中村先生はヒトゲノム解析センター長であり、HapMap Projectや癌ペプチドワクチンの開発・臨床試験などその活躍は衰えるところを知りません。非常に多忙な先生であるということは言うまでもないですが、今回は私たちの依頼に即ご快諾くださり、この講演会の企画が実現することとなりました。

本来は大学院生を対象としている講演会ですが、会場は大学院生に限らず教員やコメディカルの方々まで立ち見も出る盛況ぶりとなりました。

演題の『ベッドサイドからベンチサイドへ そしてベッドサイドへ  患者さんに思いが届く医学研究を』とは中村先生の研究スタイルをそのまま現わしている言葉だと気づかされます。

講演会の始まりは若き日の外科医だった中村先生の姿から始まり、主治医だった癌患者さんの日記、臨床医時代に癌という強敵と闘った事が中村先生の癌研究のモチベーションとなります。アメリカにわたり、大腸癌の主要な癌遺伝子であるAPC遺伝子のクローニング、P53の標的分子群の単離、国際HapMap Projectの日本代表、数々の疾患関連SNIPの発見などその後の活躍は皆の知るところですが、中村先生の研究は常に臨床への還元、まさしく患者さんの元に戻ってくる成果を目指しているということが痛いほどに伝わってきます。現在メディアでも良く取り上げられている癌ペプチドワクチンもまさしくその一つです。オールジャパンの体制で挑む癌ペプチドワクチンの臨床試験は今後の癌治療を明るくする兆しとなるのではないでしょうか。

大学院生のみならず研究に携わる全ての医師に研究者としての志を改めて思い起こさせる講演会でした。

平成20年度 第6回 研究推進・倫理ゼミ 報告
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