東北大学大学院医学系研究科 大学院教育改革支援プログラム

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研究推進・倫理ゼミナール 2009年度

大学院生の研究力増進と研究倫理観形成を目的に、講演および懇談会形式で全大学院生を対象とした公開ゼミを実施する。本ゼミの最大の特徴は、ゼミの 企画・運営に大学院生(ルネッサンスTA)が直接参加し、いわば学会・研究会の企画・運営の模擬演習として実施する点である。同時に、TA以外の大学院生は講演の単なる聴衆となるのではなく、より積極的なゼミへの参加が義務づけられる。また、本ゼミは1年次学生の履修対象科目であり、ゼミ終了後の研究企画申請実習(スターター申請)と合わせて履修単位が認定される。

平成21年度 第1回 研究推進・倫理ゼミナール 報告

日時 : 平成21年7月14日(火) 17:00-19:00
講師 : 菅村和夫先生
(東北大学名誉教授 宮城県立がんセンター総長)
講演タイトル : 「免疫学に魅せられて “失敗は次へのステップ”」
担当 TA : 添田大司、工藤千枝子、住吉晃、藤田理恵

概要

今年度第1回目の研究推進・倫理ゼミの講師として、昨年に引き続き宮城県立がんセンター総長の菅村先生にお越しいただいた。

細菌学教室へ入局後のご自身の体験を中心にユーモアを交えながら話していただき、研究に携わって間もない私達にとって、今後どのような姿勢で研究に望むべきかを考えさせられる貴重な機会となった。限られた講演時間の中で、学生時代の話からご自身の趣味である登山の話、国内外の様々な場所を転々とし様々な人と出会い共に研究し現在までの数々の業績を上げるに至ったこと等、話題提供は多岐にわたった。菅村先生の絶妙な語り口もさることながら、ご自身の留学先で休みもなく研究に明け暮れた日々の経験談や研究の一環として南米に行ったときのお話をスライドを提示しながら説明していただいたときには、思わず息を呑んで聞き入ってしまった。また、研究者とはどうあるべきかという点に独自の視点から切り込んでいただき、今与えられた環境下において私達がどう研究生活を送っていくか必要な視点を与えてくれる講演であった。

文責:添田 大司

平成21年度 第1回 研究推進・倫理ゼミナール 報告
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平成21年度 第2回 研究推進・倫理ゼミナール 報告

日時 : 平成21年7月23日(金) 17:30-19:30
講師 : 大隅 典子 先生
(東北大学大学院医学系研究科形態形成解析分野・器官構築学分野 教授 東北大学脳科学グローバルCOE 拠点リーダー)
講演タイトル : 「伝わるプレゼンテーション“ビジュアルにいこう”」
担当 TA : 藤田理恵、中山博未、西條憲、住吉 晃

概要

今回の講師は、本学医学系研究科の教授であり、毎年全国で多くのご講演をなさっている、著名な女性研究者、大隅典子先生だった。

講演は、「よいプレゼンテーション」がどのようなものかということについて、大きく“プレゼンテーションアイテムの作成”と“プレゼンテーションの態度”に関してお話し頂いた。

アイテムの作成に関しては、「何について」「誰に」話すのかを念頭におき、ダイヤモンド型の構成を心がけること、また相手に伝える態度としては、聴衆を見て話す・適切な言葉を選ぶ・落ち着いている・謙虚である・ユーモアがあることが望ましく、そのためには、早めの準備とリハーサルが必要であることの重要性が具体例とともに詳しく伝えられた。

さらに、今回のゼミでは、大隅先生のご好意により学生のスライドを添削して頂けることになっており、講演の最後にあらかじめ募集したスライドの添削をして頂くことができた。新しい試みではあったが、スライド提供者のみならず、全員がどのように作成すると見やすいスライドになるかがわかる、非常にためになる実践的な内容であった。

プレゼンテーションの方法について今後ぜひ参考にしたい内容が満載の、大変有意義な時間だったと思う。

文責:藤田 理恵

平成21年度 第2回 研究推進・倫理ゼミナール 報告
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平成21年度 第3回 研究推進・倫理ゼミナール 報告

日時 : 平成21年9月17日(木) 17:30〜19:30
場所 : 臨床大講堂

講演1 タイトル : 「血液内科医から染色体研究へ」
講師 :
東北大学特定領域研究推進センター准教授
東北大学加齢医学研究所准教授
先進融合領域フロンティアプログラム テニュア・トラック教員
田中 耕三 先生

講演2 タイトル : 「簡単な実験器具の制作と研究」
講師 :
東北大学病院 周産母子センター
太田 英伸 先生
担当 TA : 河合貞幸、石 棟、楊 三月、渡部正司

概要

今回は、本学で数少ないテニュア・トラック教員の田中耕三先生と、光採用の保育器を実用化した周産母子センターの太田英伸先生のお二人の先生から、研究に対するモチベーションを維持する必要性などを交えながら、これまでの貴重な研究体験をお話頂いた。
田中耕三先生からは、スコットランド・ダンディー大でのポスドク研究の中で、動原体-微小管によるキネトコアの補足過程の様子が可視できたことに驚嘆させられた。大変な研究の傍ら、気分転換の場としたセント・アンドリュースの美しさが、美しい都市ダンディーと共にひときわ印象的であった。

太田英伸先生は、研究の基礎学の必要性に併せ、生物時計や明暗環境が特に新生児に及ぼす影響についての研究から、新生児にとって都合の良い明暗保育環境と、保育する側にとって都合のよい恒明光環境を両立させる光フィルター保育器を自ら試作し、今や、実用化し稼働していることを話され、感動を覚えた。

両先生とも、研究中には壁に突き当たることもあることながら、そこを乗り越えた先にある成功体験は何事にも代え難いものであることを熱く語られた。これらは、これから研究を始める人、壁に突き当たっている人、さらに一歩突き進んでいく人にとって、モチベーションを持ち続けることの大切さを強く教示したものであった。時間をオーバーしての熱い講演もあっという間の有意義な時間であった。

文責:渡部正司

平成21年度 第3回 研究推進・倫理ゼミナール
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平成21年度 第4回 研究推進・倫理ゼミナール 報告

日時 : 平成21年10月1日(木) 16:30〜17:30
講師 : 渡部 格 先生 星陵心臓友の会 会長
演題 : 「人間として人に接する基本」
担当TA : 西條 憲、石 棟、楊 三月、渡部 正司

概要

今回、講師として星陵心臓友の会 会長である渡部格先生にお越しいただいた。渡部先生は82歳であるが、まずその若々しく颯爽たる姿に驚かされた。

先生は娘さんの心臓手術を契機として昭和46年に患者会である心臓友の会を設立、教員としての職業と兼務し、38年間ボランティアで会を運営されてきた。その「人に接する」ことが多く、人との関わりが重要な職業、環境で人生を歩んでこられた貴重な経験談をお話いただいた。またご自身も医師になることを周囲に期待されていたが、父が心臓病で急変した際、医師の対応がひどいもので、それ以来医学部受験を頑なに拒んだというエピソードも紹介され、非常に印象深かった。今回私たちに講演いただいた先生のお気持ちも汲むことができると思った。

そして豊富な経験から先生がたどり着いた「人間として人に接する基本」は物事を解決するために行動する私と、その自分を冷静に判断する私、この2人の私を使い分けることであるということをお話しいただいた。心理学的な深い内容かと思われたが、確かにそれぞれ自分の経験と照らし合わせると共感できることであると思う。

スライドを使わない文字通りの口演であったが、アトラクティブな先生の人柄とお話で1時間が非常に短く感じられた。人と接することは医療を行う上での大前提であり、今回のゼミは私たち医療に携わる者にとって非常に有意義なものであった。

文責:西條 憲

平成21年度 第4回 研究推進・倫理ゼミナール
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平成21年度 第5回 研究推進・倫理ゼミナール 報告

日時 : 平成21年11月9日(月) 18:30〜20:00
講師 : 村松 秀 先生
(NHK エデュケーショナル 科学健康部 エグゼクティブ・プロデューサー)
演題 : 「論文捏造と科学界:テレビ番組制作の立場から」
担当TA : 河合 貞幸、岡田 貴志、添田 大司、中山 博未

概要

本ゼミでは昨年の論文捏造の話題に加え、それを取り巻く科学界について、という広いテーマで講演が行われた。

村松氏の番組作りに対する一つの観点として、「視点の転換」そして「分からなさ」というキーワードが挙げられるという。例えば、毒性物質もごく微量であれば確かに人を殺さない。しかし、それを環境ホルモンという視点から捉えた時、それは新たな問題として浮き彫りとなる。そしてそれは、その視点で見なければ決して「分からな」かった問題である。科学界は華々しい発展を遂げる一方で、このような「分からなさ」をその影に内包し、その多くは分からないまま見過ごされている。ベル研究所で起こった論文捏造も、科学界のあまたある「分からなさ」が積み重なり、空前の事件にまで発展してしまう。

私は、この問題は科学界だけでなく、我々の日常生活に縮尺しても同じような事が言えるのでは無いかと感じた。科学界に留まらず、科学の恩恵を被っている社会もまた、その進歩と共に変化している状況にある。
我々がその変化の影で生まれている問題(分からなさ)に気付き、その「分からなさ」に対しても積極的に目を向けてゆかなければ、本当の意味での豊かさは得られないのではないかと感じた。

我々は科学者として様々なしがらみや制約の中にあり、その中で「分かる」問題を解決しようと、成果を上げる事に躍起になりがちである。しかし「分からない」問題に対しても同様に目を向けていって欲しいと村松氏は述べた。全体を通じて本講演から、科学倫理という観点に留まらず、今後我々が現代社会人として考えてゆくべき問題について提起していただいたように感じた。

文責:河合 貞幸

平成21年度 第5回 研究推進・倫理ゼミナール
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平成21年度 第6回 研究推進・倫理ゼミナール 報告

日時 : 平成22年2月19日(金) 17:30〜
講師 : 審良 静男 先生
(大阪大学教授・同免疫学フロンティア研究センター拠点長)
演題 : 「自然免疫」
担当TA : 工藤 千枝子、添田 大司、河合 貞幸、西條 憲、岡田 貴志、中山 博未、藤田 理恵、渡部 正司

概要

本年度の倫理研究推進ゼミ最終回は、学生が自分たちで講師の選出から講演会の設営までを行う自主ゼミという形式で行われました。
事前に行ったアンケートの結果をもとに無理を承知で審良静男先生にお願いしたところ、ご快諾頂き、この企画が実現する運びとなりました。

審良静男先生(大阪大学)は言うまでもなく免疫学の権威であり、従来の「自然免疫」の概念を大きく覆した研究成果は万人の知るところです。また、論文の引用回数は世界トップクラスでコンスタントにインパクトのある成果を出し続けています。
その審良先生が7,8年ぶりに東北大で講演をされるとのことで、講演が始まる前から会場はほぼ満員で熱気に包まれました。

「自然免疫」は「獲得免疫」が出来るまでのつなぎと考えられてきた免疫学の黎明期から、「自然免疫」が「獲得免疫」と双璧をなす免疫システムであると判明する今の時代まで、自身の研究でその全容を明らかにしていく過程を直接拝聴できたことはとても心躍る瞬間でした。

自然免疫システムの中核をなすToll Like Receptor (TLR)の種類と機能がそれぞれ異なり、複雑な免疫システムの中で上手く機能しているという驚異、また、一旦免疫が暴走するとDICなどを引き起こし個体に対して致命的な状態を引き起こしかねないという事実、炎症や癌などいたるところで重要な役割を果たす免疫というシステムに圧倒され続けた講演会でした。
また、最後にご自身の最新の免疫学の研究についても話があり、今までもこれからも、免疫学の新しいトピックは日本発であるという予感を感じさせました。

このゼミは学生主体とのことで、講演会後の懇親会も多くの大学院生が参加し、普段聞くことのできない率直な質問や研究のノウハウをお伺いし大変盛り上がりました。
また、この様な会が開かれることを期待しております。

文責:工藤千枝子

平成21年度 第6回 研究推進・倫理ゼミナール
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