艮陵新聞特集 留学体験記⑶

遺伝子治療の実現を信じて留学

小児病態学分野
内山 徹 先生
留学先:National Institutes of Health

先天性免疫不全症に対する遺伝子治療の研究 のため、2007年3月から2010年8月まで米国の国立衛生研究所(National Institutes of Health: NIH) へ留学する機会をいただきました。

遺伝子治療の本場へ

私は2003年に当時の加齢医学研究所発達病態研究分野(土屋滋教授)に来ました。当時は土屋教授、久間木悟、峯岸正好両准教授によりX連鎖重症複合免疫不全症への遺伝子治療の研究が行われていました。

パリのDr. Alain Fisherのグループとの共同研究で臨床試験の準備が進められていましたが、合併症として白血病発症の報告から我々の計画も一時延期となりました。

しかし、単一遺伝子疾患に対する遺伝子治療への可能性を信じ、遺伝子治療の本場である海外で勉強を行う決心をしました。

NIHへ留学

NIHは複数の研究所によって組織されていて、私は国立ヒトゲノム研究所のDr. Fabio Candottiのラボで勉強させていただきました。

現在欧米で様々な遺伝子治療が行われていますが、その最初は1990年にNIHで行われた、免疫不全症の一つであるアデノシンデアミナーゼ欠損症(ADA-SCID)に対する遺伝子治療であり、現在も Dr. Fabio Candottiが中心となり続けられています。

より安全な遺伝子治療を目指して

先天性免疫不全症に対する遺伝子治療ではウイルスベクターを用いた遺伝子導入が主流ですが、染色体上の癌遺伝子の活性化という問題があります。
より安全なベクター開発を目指し、NIHでは従来のレトロウイルスベクターの他にレンチウイルス、フォーミーウイルス、アデノウイルスなど様々なウイルスベクターを扱いました。
また、患者から樹立したiPS細胞を利用した遺伝子修復方法の研究も経験しました。さらに遺伝子治療後のADA-SCID患者の検査を通して、実際の遺伝子治療における効果や安全性の評価方法など身につけることができました。

チャレンジの連続だった

イタリア人ボスのラボということもあり、同僚はイタリア人が多く、夜な夜な彼らのコミュニティーに呼び出されてはワインを飲んでいました。彼らと将来(私はそう若くはありませんでしたが)を語り合ったことが懐かしく感じられます。

海外生活は何事もいい意味でチャレンジの連続でした。自分が何をどこまでできるのか改めて実感できる場所であり、充実した毎日を送ることができました。

留学に関するQ&A

  • Q1 留学の準備の際に、最も苦労したことは何でしょうか?

    私は独身なので、日本を旅立つまでの諸々の手続き(引っ越し、役所関係)を仕事の合間に行うことが大変でした。逆に一人なのでビザなどは比較的楽でした。

  • Q2 留学先はどのように探しましたか?

    国際学会の際に留学先のボスに直接打診しました。

  • Q3 留学に際する費用について、奨学金などの支援は受けることができましたか?
    あるいは、留学先での生活費はどのように工面されましたか?

    留学先でポスドクとして給料をもらいました。また、2年目より日本学術振興会より海外特別研究員として課題を採択してもらうことができました。

  • Q4 留学先で困ったことは何でしょうか。

    留学一年目の英会話です。

  • Q5 留学前に是非ともやっておくべきことは何でしょうか?

    留学先で直面する問題のほとんどは、単純にあちらでの生活経験がないということに起因するので、現地の日本人と連絡を取っておくと非常に楽です。

(艮陵新聞276号、2012年4月2日発行)

※公開の記事は、本人と艮陵新聞の許可を得て転載をしております。
また、所属や職名、略歴などは、記事発表当時のものとなっております。

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