アメリカ心臓協会
Arthur C. Corcoran記念講演者賞受賞インタビュー(3/3)

腎臓の働きから脳の健康を見る

腎・高血圧・内分泌学分野
伊藤 貞嘉 教授

次世代に向けて

伊藤教授:私が若い人たちに言い続けているのは、「世界を目指せ」ということです。私は若いころ、大学を卒業し、初期研修終えたらすぐに開業医になろうと思っていました。しかし、古川市立病院で研修を終え、東北大学病院の第二内科に入局したところ、恩師である阿部先生(故阿部圭志教授)に、「伊藤君。来年、君をアメリカに派遣するから、とりあえず1年かけて英語の論文を1本書きなさい。」と言われました。さらに「1年目の担当義務はすべてこなすように」とも付け加えられました。

自分の中では早く開業医になろうと思っていたため、アメリカに行くことは全く想定していませんでした。それでも私は「これもチャレンジ」と思い、デトロイトに行きました。そして先ほどお話ししたレニン分泌に関する研究を行い、一定の成果を上げて帰国することになります。

日本に帰ってきて第二内科に戻ったのですが、今度はヘンリーフォードのカルテロ先生からからアメリカに戻ってこいと何度も声をかけられて、再び渡米することになりました。その後、細動脈の灌流に関する研究成果を上げると、NIH(アメリカ国立衛生研究所)などから大きな研究資金を得て、自分の研究室を持つこともでき、気が付いてみれば8年もアメリカに滞在していました。開業医になろうとしていた当初の意図とは大きく離れてしまいましたが、それでも海外に行って研究した経験は今の自分に大きく役立っていると思います。

日本の若者があまり海外に出ていかないのは、居心地が良いからなのでしょうか。

伊藤教授:確かにそれはあります。でも、やる気のある人であれば、日本の居心地の良さを反対に利用したらいいのではないでしょうか。私の経験から言えば、一時的に日本でのポジションを失ったとしても、海外にチャレンジすることの方がはるかに良いと思います。なぜなら、自ら海外に出ていくくらいの行動力や実力が備わっている人だったら、日本に帰ってきてもそれなりの職やポジションにつけます。だから私は常に若い人に対し「目先の安定ではなく、まず世界を目指してほしい」と言っているのです。

海外留学でつく実力は特別なものだという事ですね。

伊藤教授:つくのは実力や研究成果だけではありません。海外での研究生活で得られるものには、世界中の一流の研究者と知り合い、仲間を増やすことによって築かれるネットワークがあります。確かに研究の世界は競争なので、周囲はライバルばかりなのですが、そんな中でも互いを尊敬できる仲間を作ることは出来ます。私自身、世界中の研究者と友人になることで、多様な人生観や文化の違いなども吸収することが出来、人生そのものが豊かになったと感じます。

研究人生の中で留学する機会というのは、何度か訪れるかもしれません。しかし、私の経験から言うと、柔軟な思考ができ、吸収力が高い若い年代で経験しておいた方が良いと思います。東北大学の学生の中からさらに多くの人が世界を目指して果敢に挑戦してくれることを望んでいます。

伊藤貞嘉 教授

一覧へ戻る

pagetop