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さくらサイエンスプラン2016を終えて

生体システム生理学分野 教授
虫明 元

さくらサイエンスプログラムは、独立行政法人科学技術振興機構(JST)が2014年4月に発表したプログラムです。このプログラムの目的は、アジアの若者を研修生として招聘することで、日本の大学・研究機関を身近に感じてもらい、アジア諸国の優秀な若手人材を日本に集めることです。医学系研究科では、仙台への留学生支援で実績のある財団法人東北多文化アカデミー(TTA)と連携して2014年度は30名、2015年度は15名の招聘を行いました。特に初年度は3名の参加者が大学院に進学する結果となり、大成功でした。また東北大学医学部のさくらサイエンスの好印象は参加した学生から波及しているようで、その評判は各機関で定着しつつあるようです。3度目となる今年も医学部はさくらサイエンスプログラム2016への参加を決めました。

さくらサイエンス2016の準備

さくらサイエンスプログラムはJSTの公募によるもので、各大学、企業等の応募による、競争の大変激しいプログラムになりました。我々は過去2回の実績に加え、プログラム内容を精査・改善し、TTAとの連携によって、今年度1回目の公募で無事採択されました。医学部のさくらサイエンスプログラムの特徴は、研修生が大学内の研修先を選べる仕組みです。すなわち研修生が各自自分の専門や関心に合わせて個別化した研修を受けられるということです。昨年からはじまった医学部のオープンラボの制度の中で研究室ごとの案内パンフレットが日本語でも英語でも検索できるようになりました。さくらサイエンスでは、この資料等から本研究科の研究活動を具体的に知ってもらい、申請時に研修希望の研究室を指名させ、その理由を英語できちんと説明する事を求めました。実際に申請書類から、さくらサイエンスへの参加希望者の東北大学の研究室のの理解に基づいた、研修に対する高い期待や動機が読み取れました。

東北大学の連携機関を中心に中国、韓国、ベトナム、インドネシア等のアジア諸国の12を超える機関に声をかけ、参加希望者を募集しました。機関毎に推薦を絞ってもらいました。定員15名に対して23名の応募があり、申請書評価と希望研究室とのマッチングを経て、15名の研修生が選ばれました。中国は天津医科大学、南開大学、南京医科大学, 中国医科大学, 復旦大学、他の国からは国立モンゴル医科大学,インドネシア大学からと3カ国7機関からの参加となりました。

さくらサイエンス2016の概要

医学部での研修初日となる8月22日(月)には下瀬川医学研究科科長が臨席され、医科学専攻長の片桐秀樹教授、障害科学専攻長の福土審教授、医科学専攻修士課程長の中山啓子教授、生命科学の国際大学院の代表者として大隅典子教授の参加のもとで開会式が催されました。式は、交流室の周婉婷先生の司会による和やかな雰囲気の中で行われました。下瀬川医学研究科長の挨拶、TTA押谷理事の挨拶に続いて、中山教授による医学科大学院の紹介、福土教授からは障害科学大学院の紹介、さらに大隅教授からは生命科学国際大学院構想についての紹介がありました。研修生を代表して復旦大学から参加したMan Wangさんが挨拶しました。続いて平成26年度さくらサイエンスに参加して現在東北大学医学部博士課程に在学中の先輩Qiu Jiahe(仇嘉禾)さん(中国・女, 内部障害学)、Nguyen Chi Longさん(ベトナム・男,生物化学)の2名から、さくらサイエンス2014参加時の経験と大学院に進むことになった経緯などが紹介されました。さくらサイエンスの先輩からの話には、研修に望むにあたって役に立つ情報が多く伝えられ、研修生の皆さんも熱心に聞き入っていました。初日午後は、東北メディカル・メガバンク機構、東北大学クリニカル・スキルスラボなど世界最先端のバイオバンク施設や次世代シークエンサーなどの最新鋭研究機器を実見することで東北大学が建学時から掲げる「研究第一」の精神が研修生に伝わったと思います。

先輩の話

下瀬川研究科長

2日目から5日目は、本プログラムの中心となる、事前に希望した研究室での4日間の研修です。各研修先では、お世話役の先生に実地で実験指導を受けたり、訪れた先生と関連する複数の研究室を同時に見学させてもらったりしたようです。また4日目の木曜日には皆で片平の魯迅の学んだ階段教室などのキャンパスツアーを行いました。東北大学は古くから留学生を積極的に受け入れ身近な大学という印象を持ってもらうのに有効だったようです。東北大学が持つ「門戸開放」の姿勢を肌で感じることが出来たのではないでしょうか。

各研究室での研修以外にも、週末には、東日本大震災の津波被災地である石巻を訪問し、石巻赤十字病院で、被災時の石巻赤十字病院での対応や状況について研修を受けました。その後、今回初めての企画となる南三陸町での震災地のバスツアー、ホームステイを行いました。4つの家庭に分かれてのホームステイで、初めて日本の普通の家庭の経験をすることへの不安もあったようです。しかし、翌日集合場所に戻ってきた学生たちは、本当にその一晩を楽しんだようで、見送ってくれた家族ともいつまでも名残を惜しんでいました。仙台に戻る途中、松島に立ち寄って、瑞巌寺、五大堂などの見学をしました。またこけし作りの文化体験もありました。研修期間中も夜は小グループで街に夕食に出たり、訪問先の研究室関係者と街に出たりした研修生もいたようで、日本文化や仙台市の生活環境に触れる良い機会になったと思います。

片平キャンパスにて

スキルスラボ見学

さくらサイエンス2016の報告会

仙台を離れる8月29日(月)の午前中には研修生による報告会が開かれました。一人一人が研修先の研究室での活動を専門的な内容も含め、要領よく自信を持ってプレゼンしていたのは大変印象的でした。発表後一人一人、大学からは福土先生、片桐教授から修了証書が各研修生に授与されました。片桐先生からは、基礎医学と臨床医学の双方の視点からの医学研究の重要性を強調され医学研究の国際化の意義を話されました。研修生の何人かの方から、また日本に戻ってきて研究したいとの言葉も聞かれました。報告会後の交流会では大学スタッフと研修生が交流を深め、また研修生同志の友情もさらに育まれたようでした。

発表の様子

修了証授与後に

今回は、3つの台風が次々に日本に襲来する最中でのプログラム実施となりました。幸い、スケジュール等への直接の影響はほとんどなく、無事にさくらサイエンスプログラム2016を終えることができました。昨年度に引き続き準備段階からご尽力された石井直人教授、中山啓子教授、周先生、大学院教務そしてこのプログラムに関わった先生方に心より感謝いたします。また、研修生一人ひとりにきめ細かくご対応いただいたTTAスタッフの皆さんに深く御礼申し上げます。また短期研修生の週末の被災地訪問に随行していただいた余子媛さんをはじめ、ボランティアの学生さんにも感謝します。このような短期研修を今後も続けることで、本研究科のアジアでの認知度が上がり、近い将来に多くの留学生が訪れることを期待しています。

さくらサイエンスプログラム 参加者集合写真

【寄稿】第一回さくらサイエンスクラブ同窓会を終えて(2016.10.3)

東北多文化アカデミー 虫明 美喜氏

去る2016年9月24日(土)東京お台場にある日本科学未来館において、第一回さくらサイエンスクラブ同窓会が開かれました。

2014年度から始まったさくらサイエンスプラン参加者のうち、再来日した学生および送り出し機関への呼びかけがあり、東北大学医学部からは2014年度参加者であるNguyen Chi Long, Dyshelly Nurkatika Pasccapurnama、仇嘉禾の3名、東北多文化アカデミーから虫明美喜が参加しました。

当日はあいにくの雨模様でしたが、43名の学生と12機関の参加者があり、来賓のご挨拶、学生代表(東北大学歯学部学生)の挨拶に続き、参加学生を6~7名のグループに分けてのディスカッションが行われました。さくらサイエンスにいつどんなふうに参加したのかや現在の状況、日本で学んだことなど、全国の大学に散らばった学生同士の有意義な情報交換が行われました。今後も長期にわたりこのプログラムを継続してほしい、という強い要望がどのテーブルからも上がっていました。

続いての懇親会は料理や飲み物を囲んでの交流がありましたが、余興では、医学部からの3名の参加者が次々にマイクの前に立ち、美声を披露して会に花を添えてくれました。

2014年度3000人、2015年度4000人、2016年度5000人の招へいのうち、現在210名の学生が日本に戻ってきました。これから10000人規模の招へいを予定しているとのこと、日本とアジアの学生の交流が全国各地でますます盛んになることを祈りつつ、会場を後にしました。

参加者集合写真

医学部のメンバーで

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