教員インタビュー

世界で誰も知らないことを、私だけが知っている。
研究は、とても楽しいものです。

東北大学医学部大学院 医学系研究科 細胞増殖制御分野 教授
副研究科長 中山 啓子 先生
中山 啓子 先生
中山 啓子 先生 インタビューの様子

最初は、「たまたま」だったという。
「女性だし、学位はとっておいたほうがいいかな、というくらいの気持ち」で大学院に進学を決められたという。
卒業後は、ご主人の留学とともに渡米。
先生はアメリカで、大学の研究所に入られた。

研究って、こんなに楽しいものなんだ。

ところが、アメリカで始められた研究は、大学の専門とは、まったく異なっていたそうだ。

「それでも、研究することが、純粋に楽しかったですね。成果はどうであれ、理論的に組み立てていく過程そのものが、私には楽しいですね。
だから、研究テーマの違いは、あまり悩みませんでした。
私は学生によく言っているのですが、医学部は、すべてを勉強するので、どんな研究にも役に立つのです」

アメリカから帰国後、先生は、ご主人と同じ研究室で、研究を続けられた。
当時の興味深いエピソードがある。

「その日は、ミーティングを抜け出してラボに籠り、ひとりで解剖していました。自分の仮説が違うかもしれないっていうデータが前の週に出ていて、悔しくて、ひとりでじっくり確かめたかったからです。
丁寧に解剖をすすめていくと、通常では考えられない変異が、見つかりました。
身体から力が抜け、しばらく呆然となりました。
それは、私の仮説が正しかったことを裏付ける決定的なものだったからです。急いでミーティング室に行き、みんなの前で発表しました。主人もいましたから、ほらみろ、って感じで、自慢してやりました」

先生は、いたずらっぽく笑いながら、当時を思い出しながら、話してくれた。
負けず嫌いの先生らしい「逸話」だ。

自分に向いている研究は、きっと見つかる。

先生の研究室では、笑顔がたえないという。

「大学で研究する良さは、ひとりじゃなくて、研究仲間がいることもあると思います。
私の研究室では、よくディスカッションします。予想通りにいかなくても、それを理論的に組み立て直したり、検証することが大切です。
研究仲間との意見交換で、自分だけでは気づかなかったことを見つけたり、そこから新しい展望が開けることは、よくありますね」

現在、医学系専攻長もつとめられる先生は、研究に最適な環境づくりをするための仕事にも、取り組んでいらっしゃる。温泉で合宿して学生間の交流をはかったり、相談にのってあげたり。
緻密な客観性が要求される研究の世界とは裏腹に、それは、アナログで人間的な作業だ。

「研究は、誰にでもフィットする分野があると思います。
自分は向いていないと決めつけないで、やってみたら、きっと面白さがわかると思います」

ご研究一筋に歩まれた先生の言葉には、たしかに説得力がある。

「東北大学は、多様性を享受できる大学です。ある分野の研究をして自分に向いていないと思ったら、他の研究分野に変わるとか、今までにない新しい研究に取り組むとか、そういう相談や学内の調整もしています。
本人が、よりモチベーションをもてる研究分野を見つけることが、何よりですから」

先生は、最近、ピアノを習いはじめたという。
「なんでも新しいことを覚えるのは、楽しいものですね」

趣味はお勉強、と公言される先生らしい言葉だ。

インタビューの後の撮影では「ふだんの授業のような板書をしてほしい」というカメラマンのリクエストに、快くこたえていただいた。
先生は黒板に向かい、化学記号とタンパク質の生成過程を、すらすらと書かれていく。

中山先生の目は、生まれて初めてクリオネを見た少女の目のような輝きに満ちあふれていた。

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