教員インタビュー
とことん研究に、のめりこみました。
大学院は、貴重な時間です。


西山先生は早足だ。
病棟での診察とラボでの研究を掛け持ちする毎日。
腕まくりした白衣が、ご多忙の日々を物語る。
ご専門の神経内科では、多発性硬化症の研究を中心に、その領域も、多岐にわたる。
「神経の世界は、不思議なことばかりです。
謎のとても多い分野なのです。
疾患も多彩なうえ、患者さんの悩みもさまざまで、研究しなければいけないことは、たくさんあります」
先生が現在のご専門にすすまれたのは、恩師の藤原先生の影響によるところが大きかったという。
「私ひとりのために、藤原先生が、講義をしてくださったのです。
そして、世界から学ぶだけでなく、日本から新しい成果を発信していかないか、とおっしゃっていただきました。とても感動しました」
先生は、今でも、その講義のことは、はっきり覚えている。
「やるしかない」と、その場で心に決めたという。
自分はいま、世界の最先端にいる。

西山先生は、今までの研究で、いくつかの忘れられない場面があるという。「視神経脊髄炎の研究では、自己抗体が、アストログリア細胞だけを攻撃することをつきとめました。最初は手探り状態で、試行錯誤が10ヶ月くらい続いたのですが、ある日のことでした。時間経過をみるため撮影していた動画に、細胞が破裂する瞬間が映っていたんです。それは、僕の仮説通りでした。
自分はいま、世界の最先端にいるんだって、とても興奮したことを覚えています」
この時に発見したことが、今の研究にもつながっているそうだ。

さらに先生は「自分の研究は患者さんに支えられている」と力説される。
「目の前の患者さんを治すための研究、ということを忘れないようにしています。研究で行き詰まったら、患者さんの顔や表情を思い浮かべます。
すぐに効果や成果がでるわけではありませんが、患者さんの喜ぶ顔を思いながら、根気よく続けることが、いい研究を生むように思います」
人と人のつながりが、いい研究を生む。

東北大学ひとすじの先生は、大学の魅力をこう表現されます。
「いろいろな先生が協力してくれます。東北大学は、とてもオープンで、気軽にコラボレーションができる気風があります。
しかも基礎研究がしっかりしているので、いい成果につながりやすいと思います」
学生時代は、バトミントン部に所属。その時の先輩、後輩のつながりは強固で、今も続いているという。音楽も大好きで、軽音楽部でバンドを結成。
「仙台のジャズフェスティバルに出たこともあります。
レパートリーは、クラプトンとかが多いですね」

大学院生活は、とても充実していたと語る先生。
「とことんやり尽くすことができて、とても楽しかったですね。
究めるというか、のめりこんでいける時間って、人生の中で、あまりないし、とても貴重な時間だったって、今でも思います。許されるなら、もう一度、大学院に入りたいくらいです」
最近は、海外の学会にもご出席され、研究者のネットワークも広がっているという。
将来は、アストログリア細胞の研究を通じ、さまざまな神経疾患の解明をしていきたいと語る西山先生。
撮影が終わると、白衣の腕まくりを直しながら、足早に病棟へと戻っていかれた。