教員インタビュー

手術だけでは治せない。
その限界を超えるのが、研究です。

東北大学大学院 医学系研究科 消化器外科学分野 教授 海野 倫明 先生
海野 倫明 先生
海野 倫明 先生 インタビューの様子

「お待たせしました」
お約束の16時ぴったりに、バリトンボイスが会議室に響いた。
濃紺のピンストライプのスーツに身を包んだ海野先生は満面の笑顔で迎えてくれた。
ご専門は、消化器外科。東北はもとより、全国各地から、患者さんが先生を頼って訪れる。

東北大学を卒業後、先生は初期研修で手術のトレーニングをスタートされる。

「外科の先生になろうと思いましたから、まずは手術ができなければいけないですよね。そこで、大学卒業後は、水戸協同病院で、手術のトレーニングを受けました。それはもう、徹底的に叩き込まれましたね。」

手術だけでは治せないこともある。

その後海野先生は、大学院に入られ、研究の毎日へ。「臨床にいきましてね、外科の限界を知ったんですね。手術だけでは治せないという現実を、思い知らされました。研究を知らないといけない。研究の成果をノウハウにして、臨床の現場にフィードバックしたいと思いました」

通常は3~4年で終える基礎研究に、先生は、6年間も費やされたという。

「ともかく厳しい研究室でした。しごかれましてね。たとえば、実験に失敗するでしょ。
そうすると、寝ないで実験しろ、ということになります。ギリギリまでやれ、ということです。
それこそ、基礎研究に命をかけるような先生でした。そういう姿勢は、とても勉強になりました」

その厳しさを物語るエピソードがある。
「研究ではネズミを使いますよね、おそらく僕は、ラットの膵臓を切る手術数では、日本で一番切っているんじゃないかな」

最初は困難かと思うことも、できるようになる、と先生はおっしゃいます。

「たいていのことは、努力すれば、乗り越えられるって、思うようになりました。
どんなシーンでも、不可能かと思っても、人間って、できるようになるんだって、教えてもらいましたね」

難しい研究を数多くこなされてきた先生だからこその言葉だ。

これからの臨床医は、アカデミックサージャンたれ。

先生は「臨床医になるからこそ、若い時に研究する時間が必要」と言葉に力を込められる。
東北大学では、臨床と基礎研究の融合に、またとない環境がそろっているからだ。

「外科医は、手術が上手ならそれでいい」と言う方がいますが、僕はそうは思いません。

臨床では、いろいろな予想外の問題にぶつかります。それを受け止められるかどうか、どうしたら解決できるかを知っているかどうかが大切です。
研究を知っていれば、解決方法は、たくさんあるって、気づきますから、きちんと対応できるわけです。仮説があって、証明するという、研究の基本的な取り組み方がわかっている外科医が、これからは必要です」

こうした「アカデミックサージャン」を若手から育成することに、先生は積極的に取り組まれている。

最後に、将来のビジョンをお伺いした。

「臨床研究を、やりたいですね。外科の臨床研究では、日本は遅れています。手術の方法って、科学的に比較できていないんです。
最適な手術方法を証明できるような研究に取り組みたいですね」

インタビューをお願いした教授室には、段ボールがうず高く積まれていた。
「忙しくって、なかなか片付かなくて」と先生は少し照れながら打ち明けられた。
この日も、夕刻に終わった取材の後でも、スケジュールはびっしり埋まっていらっしゃるという。

教授室のダンボールが片付くのは、まだまだ先のことになりそうだ。

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