研究推進・研究倫理ゼミ

研究倫理の歴史、原則、課題

2015.7.21 平成27年度第4回研究推進・研究倫理ゼミ

医学系研究科医療倫理学分野 教授 浅井 篤 先生

研究倫理は必要である:医療倫理学の第一人者である浅井教授

本日は、医療に係る倫理的問題を研究なさっている浅井篤教授より、医学研究の倫理に関してご講義いただきました。基本的倫理原則は、国の垣根を越え、医療に関わるすべての研究者が遵守すべき事項であります。研究における不正行為や利益相反が昨今問題となっておりますが、今回は正しいアプローチでより好ましい選択を行うことの重要性を再認識した講義でありました。なぜ研究倫理が必要なのか?まずそのことを以下にお示しいたします。

  • 今までに多くの非倫理的、または倫理的妥当性が疑わしい研究が行われてきたから
  • 善い意図で計画・実施されても、結果的に研究参加者に大きな害を与えた研究が存在するから
  • 研究を実施する当事者だけでは、研究計画の科学的倫理的妥当性を冷静に判断できないから
  • 研究者の社会的信頼が大切だから
  • 研究という行為自体に倫理的問題が含まれるから
  • 研究者は一個人として多様な利害関心を持っているから
浅井 篤先生

医学系研究は「人」を扱う

人を対象とする医学系研究は、研究に参加してくださる方(被験者)の人権の保護や安全の確保はもちろんのこと、科学性や倫理性を担保した上での実施が強く求められています。さらに研究者が作成した研究計画書は、所属する大学などの倫理審査委員会で承認されなければ研究を行うことができません。そして、倫理審査委員会で承認を受けた研究計画書に基づき研究を適正に実施することが求められます。すべての研究者は、以下に掲げる事項を基本方針としてこの指針を遵守し、研究を進めなければなりません。

「人を対象とする医学系研究に関する倫理指針」

  1. 社会性及び学術的な意義を有する研究の実施
  2. 研究分野の特性に応じた科学的合理性の確保
  3. 研究対象者への負担並びに予測されるリスク及び利益の総合的評価
  4. 独立かつ公正な立場に立った倫理審査委員会による審査
  5. 事前の十分な説明及び研究対象者の自由意志による同意
  6. 社会的に弱い立場にある者への特別な配慮
  7. 個人情報の保護

科学者は研究を行う権利を享受する一方で、このような多くの責任を負っているのだということを再確認させられました。

講義の様子

研究とは科学的知識の系統的追求

研究者は恣意的に研究データを操作したり、金銭的な利益のために専門的な判断を曲げたりしてはなりません。つまり、STAP細胞の論文不正問題のように新発見と偽り虚偽のデータを公表する、いわば羊頭狗肉ではいけません。また降圧剤バルサルタンの臨床試験の虚偽広告事件のように、製薬企業に所属する研究者が自社製薬剤の効果データを改ざんして虚偽・誇大広告を行ってはなりません。

これらの事例はまだ氷山の一角にしか過ぎないと言われておりますが、研究者は悪魔の囁きに負け自分の個人的経済的諸利益を、研究参加者の尊重と保護に優先することがないようにしなくてはなりません。最後になりますが、人生において嘘も方便がまかり通ることがあるかもしれません。しかし研究においては、「嘘」や「不正」によって科学の持つ根源的な価値観である「真理の探究」から大きく逸脱してはなりません。研究の現場や医療の現場での不正がなくなり、医学研究における科学知識のさらなる進歩に期待したいと思います。

文責:運動学分野 大学院生 杉山 将太
撮影:法医学分野 大学院生 荒牧 友美

※所属や職名などは、記事発表当時のものとなっております。

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