研究推進・研究倫理ゼミ

大震災後のメンタルケア・被災地を対象とした研究の倫理

2015.9.9 平成27年度第5回研究推進・研究倫理ゼミ

災害科学国際研究所災害精神医学分野 教授 富田 博秋 先生

東日本大震災における災害精神医学

コホート調査より、心的外傷ストレス反応のある者、抑うつを呈している者は震災以後3割で推移し、長期的にこころの傷は残っていくという知見についてご紹介頂きました。震災後4年が経過した今でも多くの方々が、こころの傷を抱えて生活していることを十分に理解することについて考えさせられました。また、被災者の方々の理解にあたっては、心的外傷や喪失からの回復のプロセスを理解した上で接していくことの重要性についてご教授頂きました。研究活動を通して、“震災当時のことに触れることは避けなければならない”ということではなく、対話を通して精神状態の回復に繋がった事例についてもご紹介いただき、“安心”のある環境づくり、“心理的侵襲”に対してサポート体制が大切であることをご教授いただきました。

教授 富田博秋

被験者(被災者)の保護を最大化するために

震災以後の調査において、研究の倫理として考えるべき事例をご教示いただきました。

  • 多数の研究への参加を余儀なくされた(同じ質問紙に繰り返し答えさせられる)
  • 緊急事態であるために必要な手続きを踏まなかった
  • 説明同意なく実施し、結果の報告もなかった

再度確認したい研究の倫理のポイントとしては下記の点が挙げられます(一部抜粋)。

  • 研究の意義の確認
  • “事前”の準備(平常時から)
  • 受入れ状況(時期)
  • 調査内容(心理的侵襲)
  • 研究の説明と同意
  • 心的侵襲に対するサポート体制
講義の様子

「研究の倫理」と「研究の必要性」との調和

オクラホマ大学のセントラルIRBの例をご教示いただき、被災地における研究を一括して審査することで、重複した研究を防ぎ、被災者にとってより安楽な対応に繋ぐことのできる一つの方策をご教示いただきました。被災地での研究は、すべて被災地の倫理委員会で審査されているわけではありません。そのような中、研究の倫理を再確認する上で、今一度、土地(Field)に耳を傾け、土地の温度を肌で感じ、研究を見詰め直すことも必要であろうと考えました。
最後に、被災地における研究の倫理について考えるにあたり、“日常から”各々が「倫理観」を涵養していくことこそ重要なのだと、改めて学ぶことができたかと思います。

文責:公衆衛生看護学分野 大学院生 大橋 由基
撮影:腎・高血圧・内分泌学分野 大学院生 島 久登

※所属や職名などは、記事発表当時のものとなっております。

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