学際領域ゼミ

ソフトウェット電極で創る診断・治療デバイス

2015.9.1 平成27年度第3回学祭領域ゼミ

工学研究科バイオロボティクス専攻 教授 西澤 松彦 先生

さりげないセンシングで実現する日常人間ドック

生体に密着する張付型センサを用いてリアルタイムの生体情報を正確に長時間モニタリングするため、最近の医療工学におけるテーマは「より小さく薄くソフトにウェットに」がトレンドとなっています。本日は、世界で唯一のほとんど水で出来ているハイドロゲル電極を開発した東北大学工学研究科バイオロボティクス専攻、教授の西岡松彦先生より「体にしっとり馴染むソフトウェット電極で造る診断・治療シートデバイス」というタイトルでご講演いただきました。ハイドロゲル電極開発までの背景や生体を部品として用いたバイオハイブリッドデバイスへの利用、その他世界でバイオハイブリッドデバイスの開発で利用されている様々な技術のご紹介をいただきました。

教授 西澤松彦

ソフト・ウェットなものづくり工学

一般的な電気デバイスは金属や半導体、セラミックやプラスチックなどの硬い材質で作られていますが、細胞や組織と密着し、生体に馴染むデバイスは柔らかい材質でなければなりません。アガロースやコラーゲン、ポリアクリルアミドをはじめとした80%以上が水でできているハイドロゲルは柔軟で水分子を透過するため、生体によく馴染む素材と考えられてしましたが、伝導体が断線しやすい、従来の印刷技術ではハイドロゲル上に回路の印刷が不可能といった問題が有りました。そこで西澤先生のグループは、基板に描いた回路に伸縮性のある伝導性ウレタンゴムを流し込み、上から高伸縮性のハイドロゲルをかぶせ、PEDTという素材でメッキをするようにハイドロゲルと伝導性ウレタンゴムを接合することで、これらの問題点を解決しました。こうして作られたハイドロゲル電極は非常に丈夫で、オートクレーブによる滅菌が可能であり、酸素や栄養分の透過を妨げずかつ細胞毒性のない理想的な生体融合電極と期待されています。

講義の様子

生体を部品として使うバイオハイブリッドデバイス工学

バイオハイブリッドデバイス工学は、生命の仕組みや病気を「調べる」、生物の持つ能力を「真似る」、タンパク質や細胞という部品を「使う」、この3つから成り立っています。今回は筋細胞を用いたバイオハイブリッドデバイスを例に講義を頂きました。私達は筋肉の収縮と弛緩を繰り返すことで運動を行っています。筋肉として機能を持ったバイオハイブリッドデバイスを造るには、私達の筋組織と同じように筋細胞が整然と並び、共同的に働けるようにしなければなりません。西澤先生のグループは細胞を1個単位で局所的に配列できる技術を開発しさらに、筋細胞をガラス基板上に配列したのち、筋組織として収縮できる適度な硬さを持つゲルシートに転写することに成功しました。また、ハイドロゲル電極と組み合わせることにより生体外で筋肉の運動と代謝を評価するツールとして、さらに今後は動物実験を用いない薬効・安全性試験への応用が期待されます。

講義の様子

バイオハイブリッド:生命システムと電気機械の融合

さりげないセンシングを実現するためには、医療デバイスは体外から皮膚、皮下、埋込と侵襲性が高まり、それに伴い医療デバイスとしての寿命・信頼性への要求も高まっていきます。現在、生体内にもある酵素を用いたバッテリーを使ったバイオハイブリッドデバイスによって、この寿命と信頼性という課題を克服しようとする試みが世界中で取り組まれています。 「安全でエネルギー効率と分子認識性に優れたバイオ材料はより機械的に、長寿命で正確性と即応性に優れた工学材料はよりバイオ的に」相反する2つを融合させるバイオハイブリッドデバイスは、私達に新しい機能を持った体の一部を与えてくれる、期待を抱かずにはいられない講義となりました。

文責:微生物学分野 大学院生 上野 史彦
撮影:災害精神医学分野 大学院生 久保 有美子

※所属や職名などは、記事発表当時のものとなっております。

一覧へ戻る

pagetop