学際領域ゼミ

非行臨床における医療の役割

2015.10.5 平成27年度第6回学際領域ゼミ

仙台矯正管区第三部長、前八王子少年鑑別所長 臨床心理士 吉村 雅世 先生

「鑑別」とは

ニュースや新聞を通して「少年鑑別所」という言葉を一度は耳にしたことがあるという方は多いと思います。しかしそこで何をするのか、また目的についてはなかなか詳しく知る機会はありません。本日は、仙台矯正管区第三部長(前八王子少年鑑別所長)の吉村雅世先生より「非行臨床における医療の役割」というタイトルで、その実態について医療介入の視点からご講演いただきました。「鑑別」という用語が少年事件のみに用いられることや非行等に影響を及ぼした原因を明らかにした上で少年が非行を繰り返さないようにするための指導や教育に役立てるものであることを導入として説明していただきました。

吉村 雅世先生

少年鑑別所における医療

少年鑑別所では、「鑑別」業務として医師による疾病や障害の有無といった診察・診断や「収容」業務として少年たちの健康管理が行われます。この診察・診断までには心理士による心理検査や法務教官による行動観察など、多くの鑑別資料が収集されます。この背景には、精神科領域の問題や身体疾患が非行に結び付く場合(ある特定の疾患が直接非行に結び付くわけではなく、あくまで二次的に起こる問題)があるため、様々な職種が連携し、その特性を活かし背景要因が何であるかを明らかにしていきます。その後、今後どこで、誰が、どのように指導・教育していくかを慎重に検討するそうです。本講義では疾患別の事例を通して、非行の背景にある要因としてどのような問題があるのか介入方法も含め説明していただきました。身体疾患から非行に繋がる最たるものとして「自分の病気とうまく付き合えない」ことから非行にはしる場合や、先に述べた「収容」の観点からは生活習慣の乱れや情緒不安定さなどが要因として多いとのことでした。その他にも不安定な生育環境や劣等感なども挙げられました。精神的にも、身体的にも、また環境的にも「弱さ」を抱える少年が多いとのことで、医学的見地からの介入の重要性を述べられておりました。

「病気と付き合う、自分と付き合う」

今回の講義では一貫して、非行の背景要因についてご説明いただきました。最後に吉村先生から、非行臨床における医療としてこの背景要因への関わり方をお聞きすることができました。「自分の身体を大切にする」このことを少年たちに教育することが非行臨床における医療の一つであるとのことでした。これは言い換えると「自分に責任を持つ」ということで、自分の身体の状態、限界を知り自分に出来ること・やれることを知る、つまり自分について理解し、自分に合った生活を送る(生き方を考える)ことこそが非行を繰り返さない、ひいては他人を大切することにも繋がるのだといいます。ここでの医療従事者としての関わりは、少年たち自身の身体のことや精神的問題について専門的な立場から伝えサポートする非常に重要な役割を担っています。専門性を活かす場として、今回、少年鑑別所について知れたことは大変貴重でした。また医療介入の必要性が強く望まれるのは決して病院だけではないことを改めて考える良い機会となりました。

講義の様子

文責:高次機能障害学分野 大学院生 川﨑 伊織
撮影:教務課大学院教務係

※所属や職名などは、記事発表当時のものとなっております。

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