学際領域ゼミ

情報科学からみたゲノム医療

2015.9.17 平成27年度第4回学際領域ゼミ

東北メディカル・メガバンク機構ゲノム解析部門 教授 長﨑 正朗 先生

世界のゲノム医療に対する取り組みについて

ゲノム解析に要する時間と費用はこの10年で1/2000000以下と縮小してきており、それと同時に個別化医療への応用が進み、ゲノム解析における経済効果は飛躍的に上昇してきている。ゲノム研究の手法もゲノムワイド関連解析(GWAS)による大規模メタアナリシスから全エクソームシークンス解析(WES)、全ゲノムシーケンス解析(WGS)へと推移してきており、そのため膨大なゲノム情報量が必要となることから、国内外の研究施設が産学官共同により取り組む必要があり、データ共有のための国際的ルール作り・仕組み作りが、喫緊の課題となっている。

ゲノム医療実現に向けた課題を以下に示す。

  1. 対象疾患をどのように設定するのか(がん、希少疾患等)。
  2. 全ゲノム情報の蓄積の規模をどうするか(対象人数、計画期間等。)
  3. どのような体制で全ゲノム情報の解析・データ集積を進めるか。
  4. どのような仕組で蓄積した全ゲノム情報の利活用を進めるか(個人情報の取り扱い、産学連携等)。

データの蓄積量が増えるため、個人情報の取り扱いが最重要課題だと考えられた。

長﨑 正朗先生

日本におけるゲノム医療の実現課題について

わが国でも世界と同様に、①患者コホート・バンク→②前向き住民コホート・バンク→③家族情報付前向き住民コホート・バンクの順に開発されてきた。母集団が大きければ、新規発症者の患者数が目標人数に達しやすく、多数の疾患の解析が可能になるが、母集団が小さければ限られた疾患のみになる。そのため他地域、多施設との連携が必要となってくる 。多因子疾患等の克服にむけては、さらなる連携を深め、コホート/バイオバンク間のデータ統合解析(メタ解析・プール解析等)の推進が必要である。また、データ統合解析を行うことにより、要因グループ別の解析、遺伝環境交互作用の解析、ひいては、エビデンスの構築・蓄積を促進できる。

東北メディカル・メガバンクでのゲノム解析の成果

東北メディカル・メガバンクでのゲノム解析の成果

  1. 独自のアルゴリズムによりスーパーコンピューターを用いて、日本人専用のSNPアレイ「ジャポニカアレイ」の設計に成功した。
  2. 日本人標準リファレンスパネル(1KJPN)と組み合わせることで、「ジャポニカアレイ」に搭載の約66万個のSNPだけから、日本人のもつ1%以上のSNPのうち90%(約824万個)を復元した。
  3. 「ジャポニカアレイ」は日本人に固有な体質・疾患の関連SNPの探索に利用を開始した。
  4. 成果はJournal of Human Genetics(6月25日)に掲載された。

個人情報などの課題を克服し、スーパーコンピューターなどを活用してゲノム解析技術を飛躍的に伸ばすことで、今後疾患を様々な側面から分類でき、個別化医療への応用、予防医療、医療費削減などの可能性が期待できると考えられた。

講義の様子

文責:血液・免疫病学分野 大学院生 鴨川 由起子
撮影:発生発達神経科学分野 大学院生 須原 佑樹

※所属や職名などは、記事発表当時のものとなっております。

一覧へ戻る

pagetop