学際領域ゼミ

南極の湖沼生態系の研究活動

2016年9月23日(金) 平成28年度 第6回学際領域ゼミ

国立極地研究所 工藤 栄 先生

工藤 栄 先生

今回の学際領域ゼミは、国立極地研究所の工藤栄先生に、「南極の湖沼生態系の研究活動」と題して、南極の昭和基地周辺や 南極半島の湖沼で繁茂する藻類・地衣類の生態調査について講演していただきました。工藤先生は9回南極越冬隊に参加しており、南極の湖沼に住む植物の光合成反応と環境との関係から、極域で繁茂している植物の適応現象の解明について研究をされています。

南極の湖の形成と生息する生態系

南極の湖は、海岸が隆起して海水が閉じ込められて出来た湖や、1月から2月の間の短い夏の期間に氷が溶け、その氷の溶け水が窪地に溜まったことにより出来たとされています。そのため、湖の塩分濃度の影響で光が差し込む深さが違ったり、湖によって植物の生息状況が異なっていたり、と湖内環境が異なっています。日本から派遣される越冬隊のベース基地である昭和基地周辺の湖沼の周辺や湖底には、苔類や地衣類が繁茂しており、それが円錐状に形作られています。

講義の様子

どうして氷に覆われた湖沼で植物が生育できるのか

興味深いことに湖によって湖底へ到達する光スペクトルが異なっており、それがこの湖沼に住む植物の生態系への影響と円錐状植物の成長や表面の硬さに影響を与えていることです。氷が溶ける夏に湖底に光が注がれますが、光の殆どは紫外線であり、湖沼に住むプランクトン、植物にはむしろ成長を妨げる結果となります。しかし、湖底の奥に含まれる栄養物や紫外線から防御する色素を産生することで植物が過酷な環境下でも生育することができ、この防御色素の量に応じて、表面の硬さが異なるため、生き延びるために適応した結果だと考えられます。つまり、南極の湖沼系では、一般に成長に有利だと考えられている夏季は実は生育には不利な環境であり、そこにいる植物は生き残るために生態系を合わせていったといえるでしょう。

講義の様子

藻類を介してエネルギー獲得方法を学ぶ

南極の湖に住む植物は光エネルギーだけでなく、湖底の栄養物からもエネルギーを摂取し、生育していますが、その環境に適応する現象は現在解明中であり、過酷な環境下でエネルギーを産生できるメカニズムの機序を解明することは、これからの私達を取り巻く温暖化問題や砂漠化問題といった環境変動による植物の進化や生態系の発達を学ぶ上で必要な研究であると感じました。

文責: 山内 丈史

※所属や職名などは、記事発表当時のものとなっております。

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