研究推進・研究倫理ゼミ

「東北大学細菌学教室における化学療法の歴史:抗生物質研究からEPR効果の発見とナノメディシンへの発展」

2017.6.30 平成29年度第2回学際領域ゼミ

バイオダイナミックス研究所理事長・所長 熊本大学名誉教授・大阪大学招聘教授
前田 浩 先生

今回の研究推進・研究倫理ゼミでは東北大学細菌学教室出身であり、トムソン・ロイター引用栄誉賞を受賞した前田浩先生に講演していただきました。前田先生は高分子薬剤が選択的に 癌局所に集積しやすいというEPR効果(Enhanced Permeability and Retention effect)を発見し、高分子の薬剤について研究されています。講演では前田先生の研究の歴史やEPR効果、またEPR効果を用いた新たな抗癌剤についてお話しいただきました。

前田浩先生

前田 浩 先生

EPR効果と癌治療
癌細胞周辺の血管内皮細胞では正常細胞周辺の血管内皮細胞と異なり、広い隙間が空いており、高分子化合物であれば正常な血管内皮細胞は透過できないが 癌組織周辺の血管内皮細胞は透過でき、選択的に癌 組織へ集積させることができます。これがEPR効果であり、正常細胞を 傷害せずに癌組織へと抗癌剤を集積させることができます。前田先生はこの効果を利用し、ピラルピジンという既存の抗癌剤にブドウ糖鎖に似た高分子を付加することで癌細胞に選択的に作用させることができるP-THPという抗癌剤を開発しました。その他にも可視光線で励起させることで抗癌作用を示す亜鉛プロトポルフィン(ZnPP)に高分子を付加することで選択的に腫瘍 組織へ集積させることができるP-ZnPPの開発にも携わりました。EPR効果を利用した薬剤は 癌のみに対して選択的に作用できることから、副作用の少ない抗癌剤が期待されます。

講義の様子

講義の様子

境界領域に踏み込むことで新たな発見へ
講演後のディスカッションでは臨床研究から創薬へ結びつけるにはどうすれば良いか、光照射を用いた癌治療はマウスだけでなく人への応用も可能なのかなど実際の研究や治療に結びつく議論が多く交わされました。
前田先生自身も多分野のるつぼであった当時の細菌学教室での様々な分野の研究者や医者との研究を通して多彩な分野の勉強の大切さを実感しており、講演会の最後に聴衆の若い研究者に対し研究には多彩な知識が必要であり、マルチな分野への挑戦は大きな糧になる。好奇心と問題意識を持ちつつビジョンを広く持ちいろんな挑戦をすることが大切だと激励されておりました。
日本における死因の1位である癌の新しい治療法への期待や、研究における多彩な分野の知識や挑戦の大切さが実感できた講演でした。

ディスカッションの様子

文責:分子血液学分野 佐々木 瞳
撮影:医化学分野 石原 大嗣

※所属や職名などは、記事発表当時のものとなっております。

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