学際領域ゼミ

脳科学と新産業創生

2013.09.18 平成25年度第5回学際領域ゼミ

加齢医学研究所 脳機能開発研究分野 川島 隆太 先生

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脳科学研究の第一人者として大変著名な川島隆太先生をお招きし、『脳科学と新産業創生』という演題でご講演いただきました。

最初に、「スマート・エイジング」という概念について解説いただきました。これは東北大学が提唱している概念で、従来の老化の概念、あるいはアンチエイジジングの概念とは一線を画し、「エイジングによる経年変化に賢く対処し、個人・社会が知的に成熟すること」を目標とする概念とのことです。すなわち、

  • ①加齢は成長であり、より賢くなる
  • ②加齢は何かを得ることである
  • ③加齢は人間の発達である

という考え方です。
これまでの加齢に対するネガティブな印象を覆す、非常に前進的な考え方に感銘を受けました。脳科学研究における基盤技術は、MRI、MEG、脳波、NIRS(近赤外計測装置)などを用いたイメージングであり、これらを始めとした様々な機器を備えた川島先生の研究室では、非常に多岐に渡る研究が可能となっているそうです。

講義

後半は、「新産業創生への挑戦」と題し、以下の2つのテーマでお話しいただきました。

  1. コミュニケーションとスマート・エイジング
  2. 脳機能とスマート・エイジング

1.については、コミュニケーションを可視化・定量化することで共生社会を創生することをテーマとしています。
中でも印象的だったのが、「脳の情動反応を音楽で表現する」という、とてもユニークな発想です。これはNIRSにより測定した被験者の脳のデータをそれぞれ異なる楽器に当てはめて、音として評価するという研究です。会話という何気ない日常の動作一つをとっても全く違う印象を受けるのは驚きでした。
このように脳の情動をリアルタイムに可聴化することで、他者あるいは自分の心の在り方を音楽として捉えることができる、というメリットがあるということです。

2.については、脳機能の中でも、加齢と共に直線的に低下することが知られている背外側前頭前野(DLPFC)の機能に焦点を当てた研究です。これはパソコンでいうCPUやメモリーにあたる部分で、特に関わりの深い作動記憶(ワーキングメモリー)についてお話いただきました。講演中に、馴染みの「脳トレ」を出題していただき、私達も挑戦しましたが、中々難易度が高く、苦戦してしまいました。作動記憶は、トレーニングにより、記憶向上だけではなく、運動能力向上や脳体積の増加という成果も表れるそうです。

全体

講演では、仙台大学のスケルトン選手を例に、また認知症患者に対する学習療法について、映像を交えてご説明いただきました。認知症患者の学習療法では、脳の検査結果に応じた様々なレベルの問題を用意することで、格段に症状が改善するということです。今後これが更に発展していくことが期待される、刺激的なお話でした。

質疑2

今回の講演を振り返って印象的だったのは、「脳科学をいかに社会に還元していくか?」という重要な課題に、川島先生が非常に情熱的に取り組んでいらっしゃることです。
近い将来訪れる超高齢化社会に向けて、川島先生の研究が必ず役立ち、「スマート・エイジング」が当たり前の世の中になることでしょう。

全体2

文責:感染分子病態解析学分野 大学院生 山本 秀輝
撮影:発生発達神経科学分野 大学院生 木村 龍一

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