学際領域ゼミ

脳死と児童虐待

2014.06.17 平成26年度第1回学際領域ゼミ

東北大学大学院法学研究科 教授  水野 紀子 先生

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第一回学際領ゼミは法学部の水野紀子先生を講師としてお招きし、『児童虐待と臓器移植』というテーマで講義をしていただきました。

先生のプレゼンテーションはテンポが良く語り口も軽妙で、気づいたときには話に引き込まれていました。 随所に織り込まれたウィットに富んだ話題の数々に、会場からは感嘆の声や笑声の絶えない活気に溢れる講義となりました。

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講義の始めに、法学とは何か、日本民法が民族性に裏打ちされ、どのように形成されてきたかを説明していただきました。
日本には古くから、「共住・共食を基本とする、ある一定の生活集団の成員」である「イエ」制度があります。 これが現在の民法にも強い影響を与えているというお話には驚きました。

続いて、水野先生が深く関わられた夫婦別姓問題等の事例に触れながら、現在の日本民法の法的問題点を指摘されました。 日本人の家庭観・伝統的育児方法は法律にも深く影響を与えています。 それが日本での児童虐待問題の解決の難しさ、根の深さの要因になっていることを丁寧に説明してくださいました。

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最後は、今回の講義のメインテーマである臓器移植の話です。 人間の死の定義を「脳死」とするか「心臓死」とするかの議論は、いまだ決着を見ていません。 これを包括的に解決するために、旧臓器移植法では、臓器提供は「ドナーの自己決定」に委ねられるということで妥協を余儀なくされました。結果として、「自己決定」できない子供からの臓器提供は事実上不可能となったわけです。

これらの歪みを解消するため、平成22年に改正臓器移植法が制定され、遺族の書面による同意があれば子供からも臓器提供ができるようになりました。 ですが、虐待死児童からの臓器提供は今もなお認められていません。 先生は繰り返し、虐待死児童からの臓器提供を認めないことは、子供の虐待を防ぐこと、あるいは被虐待児童の権利を守る事にはつながらないのだと強調されていました。 改正臓器移植法にはこのほかにも知的障害者からの臓器提供が行えないなど、いまだ解決されていない問題が山積しています。

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講義終了後も直接質問にいく学生が絶えませんでしたが、先生は一人一人に丁寧に対応してくださいました。

水野先生の日本民法の矛盾や歪みに対する糾弾と、これを変えていかなければならないという強い意志が熱く伝わってくるような情熱的な講義でした。

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文責:微生物学分野 大学院生 光齋 久人
撮影:皮膚科学分野 大学院生 山内 丈史

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