学際領域ゼミ

自然免疫における病原体の認識と排除

2014.09.08 平成26年度第5回学際領域ゼミ

学研究科 生命機能解析学分野・教授 倉田 祥一朗 先生

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倉田祥一郎先生は、「自然免疫」と「発生・再生」に関する研究に取り組んでおられます。

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今回のゼミでは、まず、免疫についての一般知識と自然免疫について分かりやすく教えて頂きました。免疫は生体を病原体などから守る防御機構であり、「獲得免疫」と、「自然免疫」とに分けられます。前者は、感染やワクチンにより抗体を得ることで働く、文字通り「獲得」した免疫のことを言います。しかし、獲得免疫は、我々も含めたごくごく一部 (4%) の生物しか持たない機構のようです。つまり、植物もふくめ、大多数の生物は、生まれながら「自然」に持つ免疫機構で、病原菌など外来性の敵から自身を守っているとのことです。さらに、病原体の数だけ抗体を生産し、外敵に対抗する獲得免疫に比べ、自然免疫は、ほんの数種類の抗菌ペプチドと呼ばれるもので、すべての防御機構がまかなわれているということに非常に驚きました。

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次に、先生が実際行っているご自身の研究成果についてお話し頂きました。
先生は、ショウジョウバエを用い、ペプチドグリカン認識タンパク質 (PGRP) に注目して研究を行っておられます。RGRPは、侵入してきた細菌を認識し、免疫系を走らせるセンサーの役割を担っています。そのサブタイプの一つである、PGRP-LEの発現を抑制すると、リステリア菌が細胞内に感染したショウジョウバエは、ほぼすべて死んでしまうとういうデータを見せて頂きました。
先生が発見されたPGRP-LEが、いかに防御機構に重要であるかが分かります。

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最後に、先生は昆虫を媒介とする感染症に対する、画期的な戦略についても紹介して下さいました。現在昆虫媒介性伝染病は世界で年間3~5億人の患者が存在し、100~150万人の死者を出しています。先生は昆虫の防御反応を抑制するいくつかの化合物を見つけました。この薬剤を投与されたショウジョウバエは、軟腐病の作物に存在する菌や、カイコに感染する原虫に感染すると、それらが原因で死んでしまいます。つまり、この薬剤を散布すれば、殺虫剤と異なり、病原菌に感染したハエのみ選択的に死滅させることが出来るため、環境への影響が少なく、二次感染を抑えることが出来るとのことです。

現在、全世界で猛威をふるっているエボラ出血熱や、日本を騒がせているデング熱は蚊を媒体とした伝染病であることが知られ、大きな社会問題となっています。先生の研究が将来発展し、実用化されれば、これまでなかった視点から昆虫媒介感染症に対抗できるかもしれません。今後の発展が期待されます。

倉田先生は今回のゼミで、様々なバックグラウンドを持つ参加者に対して、免疫の基礎的事項から、自身の専門的な研究の話まで、時にユーモアを交え、非常に分かりやすくお話して下さいました。そのため、免疫に対して知識のない人から専門家まで聞き入る事の出来る大変貴重な講義となったと思います。

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文責:機能薬理学分野 大学院生 長沼 史登
撮影:画像情報学分野 大学院生 一関 雄輝

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