学際領域ゼミ

犬と猫の脳神経疾患~獣医学と医学の連携~

2014.09.03 平成26年度第4回学際領域ゼミ

日本獣医生命科学大学獣医学部・准教授 長谷川 大輔 先生

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DSC08694中里先生と

長谷川大輔先生は、獣医大学の教員であり、かつ、大学付属動物病院で犬、猫など様々な動物の神経内科、脳神経外科を専門とする臨床獣医師です。
今回は、ご自身の犬、猫を用いたてんかんの研究が、ヒトてんかん学の基礎研究として貴重な情報になったという経験を踏まえ、獣医学と医学の連携の重要性についてご講演されました。

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一般的な医学の動物実験では、大抵ラットやマウスといった小動物が用いられます。理由としては母体数が集めやすいこと、遺伝学的に操作しやすいといったことがあげられると思います。ただ、小動物による動物実験が実際のヒトの病態を表しているかというと必ずしもそうではありません。今回、長谷川先生は犬や猫といった中型動物の神経疾患の病態が人と類似していることから、このような中型動物の基礎研究が獣医師の臨床だけではなく、人間を扱う医師の臨床へも応用されるのではないかということ、動物の臨床、研究のスペシャリストである獣医師と、ヒトの臨床、研究のスペシャリストである医師との協力により、よい研究ができ、それぞれの臨床にフィードバックされるということを「translational research between veterinary medicine and human medicine (獣医学‐医学間のトランスレーショナル研究)」という言葉を用いて説明されていました。

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私は、犬や猫の病気についてはほとんど知識がないのですが、犬や猫にもてんかん、認知症、ライソゾーム病、脳腫瘍といった疾患があり病態がヒトととても似ているとのことです。動物の臨床に関してはこちらの意志が伝わらず、かつ相手は言葉を話さず、本人(動物)からの問診が不可能なこと、検査を行うにも沈静しないとできなく、体重も小さいため、診断に必要な情報を得るのが大変だという印象でした。てんかんに対してはヒトであれば診断には問診と脳波、画像診断となるところですが、獣医学では脳波はほとんど行われず、問診、症候学が中心で、最近画像診断が普及してきたとのことでした。

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てんかんにおける基礎研究では主にラット、マウス、猫を実験動物として人為的に作成した発作モデルと、ELマウス、遺伝性てんかんラットといった遺伝性てんかんモデルがあり、これらのモデルをもとに発展してきた歴史があります。しかし、人為的に作成した発作モデルは真のてんかんではなく、ラットやマウスの遺伝的モデルでは脳回がなくサイズが小さいという問題点がありました。そのような背景の中、長谷川先生らは「自然発生性家族性てんかん猫 familial spontaneous epileptic cat (FSEC)」の家系を発見し、猫で初めての遺伝性てんかんモデルとして分離することに成功されました。

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FSECはヒトで最も一般的な難治性てんかんである内側側頭葉てんかんの自然発生モデルとして有用であるとともに中型動物であることから基礎研究だけではなく、様々なてんかんの臨床研究にも対応できるものとして期待されるとのことでした。

他にもライソゾーム病や、認知症、脳腫瘍について実際の臨床例をもとに動画を交えてお話しされ、それぞれの疾患における人との共通点、相違点、現在の研究がどのように進んでいるかなどをわかりやすくお話ししていただきました。

長谷川先生が所属されている日本獣医生命科学大学獣医学部付属動物病院には神経内科、脳神経外科のほかにも一般外科、産科、循環器科、呼吸器科、眼科といった様々な科があるそうです。
自身が研究を行っていくうえでマウスやラットといった小型動物だけではなく、犬、猫等中型動物にも目を向けるというように、様々な世界に研究のチャンスが転がっていることを実感し、他の分野の研究者と共同研究することの素晴らしさについて学ぶことができました。

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文責:耳鼻咽喉・頭頸部外科学分野 大学院生 高梨 芳崇
撮影:看護アセスメント学分野 大学院生 佐々木 康之輔

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