研究推進・研究倫理ゼミ

研究倫理の歴史、原則、課題

2014.07.08 平成26年度第5回研究推進・研究倫理ゼミ

東北大学大学院医学系研究科 医療倫理学分野 教授 浅井 篤 先生

CIMG6005top

医療倫理学分野は、この4月に新しく開設されました。今回は、その初代教授として着任された浅井篤先生により、「研究倫理の歴史、原則、課題」というテーマでご講義いただきました。

CIMG5978講義1

はじめに、医療倫理に関わるさまざまな歴史的出来事を継時的に説明していただきました。1898年、ドイツで大学教授による梅毒ワクチンの生体実験が行われたこと。また、「ニュールンベルグ綱領」(1947年)において人の研究には同意を得ることが必要と提唱されながらも、国内の大学病院で同意なしで侵襲的研究が行われたこと。これらは氷山の一角ですが、倫理を問われる研究の問題が多々起こっていたことを理解することができました。そして、日本で行われていた731部隊を主とした細菌兵器実験、第二次大戦中に実施された8名の米国捕虜実験手術(遠藤周作の「海と毒薬」で有名)のお話に以前見た映画と読んだ本を思い出していました。

CIMG6002講義

「研究という行為自体に倫理的問題が含まれる」という先生のお話しは大きく心に響きました。基本的倫理原則は、「人格の尊重」、「最善の利益」、「正義・公正」の3つということですが、自発性同意と拒否は難しいこと、特に日本の文化の中で、本当は嫌だけれどもそれを声に出せないことがあるとのお話しには思わずうなずきました。研究に参加していただく方には、今現在の直接の利益は無いけれども、将来の人たちに役立つことなのだということを説明し、本当に納得していただいた上で参加していただけるよう努力することの大切さを改めて感じました。

研究不正と利益相反については、今話題となっているさまざまな問題に言及しながら、研究不正が起きる背景について説明して頂き、遠い世界のことに感じられる不正が、実は自分たちの身近な所で起こる可能性があるのだということを知りました。

CIMG6014アップ小2

最後に、2013年に改正されたヘルシンキ宣言(人を対象とする医学研究の倫理原則に関する声明文)を基に、今後の課題についてお話しいただきました。「どんな医学研究計画なら自分の家族を参加させてもよいか」を自問したいこととして挙げ、法と違って人間の倫理性には限界がある、しかし、あきらめず根気よく活動を続ける「終わりなき戦い」であるというお話には深く考えさせられました。

浅井先生は、講義の途中で、「まず皆さんで読んでみて下さい」と自分の眼で読み、考える時間を下さって講義を進めていらしていたことが印象的でした。

CIMG6008質疑

講義の後は、電子カルテの発展に伴い、過去の患者記録を利用する際の注意点は何か、倫理が厳しく窮屈になってきているがこれはますます加速するのか、などの質問が出たほか、個別で先生の元へ質問しに行く人が多数見られました。授業開始と同時に準備していたハンドアウトが無くなるくらいの多数の学生、教員の参加があり、興味深いテーマとわかりやすい先生のお話しに、大きな拍手と共に終了しました。

CIMG5998全体

文責:ウィメンズヘルス看護学分野 大学院生 佐藤 眞理
撮影:医化学分野 大学院生 土田 恒平

一覧へ戻る

pagetop