泰達国際心血管病院への心臓リハビリチーム派遣報告記

東北大学の心臓リハビリプログラムを世界へ

心臓外科手術後のリハビリについての講演と実技指導

平成26年9月21日(日)〜23日(火)にかけて中国天津市にある天津医科大学付属泰達国際心血管病院で行われた2014 Binhai International Cardiac Rehabilitation SymposiumおよびChinese Cardiac Rehabilitation Clinical Skill Conferenceに内部障害学分野教授兼東北大学病院リハビリテーション部長・内部障害リハビリテーション科長の上月正博教授はじめ5名のスタッフが招聘され、心臓外科手術後のリハビリについての講演と実技指導を行いました。

泰達国際心血管病院への心臓リハビリチーム派遣を終えて

内部障害学分野 教授 上月 正博
内部障害学分野 助教 坂田 佳子

このたび、我々は中国天津市にある天津医科大学付属泰達国際心血管病院において心臓外科手術に対する心臓リハビリプログラムについての講演と実技指導を行いました。この心臓リハビリのシンポジウム兼スキルカンファランスは、昨年11月に私が天津医科大学客座教授に就任し、泰達国際心血管病院で「心臓リハビリの効果と実際:回復期リハで寿命を延ばせる!」という特別講演をしたことがきっかけとなり、今年初めて開催されました。

心臓外科手術後のリハビリについての講演と実技指導

初日は、開会式に続き、私が「日本でのリハビリ専門医療スタッフの育成」について講演し、この講演の中で東北大学の心臓リハビリプログラムの“3つの特色”を紹介しました。一つ目は、心大血管疾患のすべての時期のリハビリ、すなわち、急性期、回復期(12日間の入院プログラムと外来通院型プログラム)、維持期(「メディックスクラブ仙台」(NPO法人))という包括的プログラムを行うわが国唯一の施設であること、二つ目は心臓リハビリのみならず、呼吸リハビリ、腎臓リハビリ、脳卒中のリハビリ、重度肥満症のリハビリなど総合的かつ重複障害に対応したリハビリを行う唯一の施設であること、さらに三つ目は、動物モデルを用いた心臓リハビリ基礎学術研究にも力を入れている施設であることです。

心臓外科手術後のリハビリについての講演と実技指導

続いて、当分野にて医学博士を取得した伊藤大亮助教(東北メディカル・メガバンク機構・理学療法士)が「心臓外科手術患者の運動耐容能の評価と運動処方」と題して講演を行い、運動時の循環・呼吸・代謝について、心肺運動負荷試験の実施方法や測定項目について講義を行いました。講演後には、泰達国際心血管病院兼天津医科大学心血管病臨床学院教授の劉 暁程先生、天津医科大学リハビリ・運動医学部長の王 家仲教授、天津市リハビリ医学会会長の張 桂祥先生をはじめ、心大血管疾患あるいはリハビリ医療において中心的役割を果たしている先生方が集まり、盛大な歓迎会を開催して頂き、心大血管疾患患者の生命予後を目指し、心臓リハビリを普及していくことが日中の共通目標であることを再確認しました。

心臓外科手術後のリハビリについての講演と実技指導

2日目の午前は、坂田佳子助教が「心臓外科手術急性期リハビリプログラム」と題して、心臓外科手術後の急性期リハビリのエビデンスや進行スケジュールについて概説し、当分野(医学系研究科障害科学専攻)博士後期課程に在籍している柿花隆昭君(リハビリ部・理学療法士)が「心臓外科手術前のリハビリ評価や理学療法」について、術後の合併症予防のために手術前に行っておくべきことなどを解説しました。 午後からは、まず、ベッドサイドでの筋力や運動耐容能の評価方法や呼吸器合併症予防のための呼吸訓練などの術前のリハビリ介入についての実技指導を行いました。続いて、病棟にある心臓リハビリ室において心肺運動負荷試験を実施し、1日目に行われた実施方法や測定項目の解釈、実施に際しての注意点などについての確認を行いました。

心臓外科手術後のリハビリについての講演と実技指導

3日目の午前は、この10月に医学系研究科医科学専攻修士課程に入学した竹内雅史君(リハビリ部・理学療法士)が「心臓外科手術後急性期のリハビリ評価や理学療法」について講演を行った後、内部障害学分野に留学し博士号を取得した郭  琪先生(天津医科大学准教授)と曹 鵬宇先生(吉林大学准教授)が中国における心臓リハビリの現状についての講演を行いました。午後は術後の離床訓練の実技実習を行いました。まず、スタッフをモデルに実習を行った後に、ICUにおいて冠動脈バイパス術後の患者さんを対象として実技指導を行い、患者さんに対する手技だけでなく、バイタルサインや心電図変化についての注意点、リハを実施する際のベッドの配置や各種ライン類に配慮など、かなり細かい点についての指導も実施しました。

心臓外科手術後のリハビリについての講演と実技指導

今回のシンポジウムには、天津医科大学や泰達国際心血管病院だけでなく、様々な医療機関から多くのスタッフが参加され、講堂は連日満席状態でした。また、質疑応答時間が講演時間と同じかそれ以上の長さになってしまうくらいたくさんの質問があり、中国の医療スタッフの心臓リハビリに対する熱意と実施への意欲を感じました。さらに、参加者が非常に多く、病棟に入ることができなかった参加者もいたため、病棟での実技実習の様子は講堂にてライブ中継されました。なお、現地スタッフに対する通訳は郭先生と曹先生が務めてくれました。

心臓外科手術後のリハビリについての講演と実技指導

今後は、世界の心臓リハビリのスペシャリストを招いて行うシンポジウムと実技指導を中心としたスキルカンファランスをそれぞれ年に1回開催することが劉院長との会談により決定いたしました。泰達国際心血管病院がある濱海(Binhai)地区は、中国における、いわゆる“医療特区”であり、この地域の医療に対して莫大な経済投資が行われており、その中でも泰達国際心血管病院はプロジェクトの中心となっています。同院は病床数600床、ICU80床、CCU40床、手術室16室、カテーテル室5室を有する、アジア最大級の心血管専門病院で、年間1500~2000例もの開心術を行っています。さらに、数年後には病床数が300床を超える規模の心血管リハビリ専門病院の設立も予定されています。したがって、同院が中国における心臓リハビリのモデルとなることは間違いありません。すなわち、我々が日々実践している東北大学の質の高い心臓リハビリプログラムが世界へ発信されていくことになると思われます。また、今回は当分野で学んだ医学系研究科の修了生が日本で学んだ知識や経験を生かして母国にて活躍している姿を見ることもできました。後進の育成にもさらに力を入れたいと思います。

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