WHO要請による、西アフリカ地域でのエボラウイルス感染症調査への協力

医学系研究科微生物学分野 押谷仁教授らの報告

Global Outbreak Alert and Response Network(GOARN)と専門的知識を生かした国際貢献

西アフリカのギニア・シエラレオネ・リベリアの3か国を中心としてエボラウイルス感染症注1の大規模な流行が起きており、2015年1月末の時点で2万人以上の患者が報告されており、うち8千人以上が死亡している。エボラウイルス感染症は1976年に初めてアフリカで確認された感染症であり、1976年以降20回以上にわたりアフリカの国々で流行を繰り返し起こしてきている。非常に病原性の高い感染症として知られていて、致死率は90%にも達することもある。しかし、過去の流行では感染者の数は数百人にとどまっており、今回の流行は過去に経験のないような大規模な流行である。

世界保健機関(World Health Organization:WHO)は大規模な流行の際に専門家を派遣するシステムとしてGlobal Outbreak Alert and Response Network(GOARN)というネットワークを2000年から運用している。GOARNには世界中の多くの研究機関が登録しており、大規模な流行など公衆衛生上の危機が生じた場合に、それぞれの登録機関がWHOの要請に基づいて自発的に専門家を派遣することを基本としている。東北大学大学院医学系研究科も2007年からGOARNに登録しており、2009年の新型インフルエンザの際にも東北大学職員をフィリピンやモンゴルに派遣した。

今回の西アフリカのエボラウイルス感染症の流行に際し、東北大学からは斉藤繭子、中島一敏、押谷仁の3名の医師がシエラレオネとリベリアに派遣された。それぞれの活動の概要は以下の通りである。

エボラウイルス病発生地域でWHOソーシャルモビライゼーション専門家と

エボラウイルス病発生地域でWHOソーシャルモビライゼーション専門家と

1)斉藤繭子(医学系研究科微生物学分野・講師、派遣国:シエラレオネ、派遣期間:2014年11月9日〜12月17日)

前半はコイナドゥグ県の行政機関の中心地であるカバラで県内サーベイランスシステムの維持、症例データベースの管理、WHOカントリーオフィスへの流行状況の報告が主な業務であった。後半は南部のホットスポット(流行地)に設立されたコミュニティケアセンターのあるカバラへ移動し、WHOからNPO(OXIFAM、Meidcos del Mundo)へのセンター業務の移行、接触者調査への協力を行った。この県では11月上旬に流行のピークがあり、任務期間は症例数が減少傾向であったため、遠隔地での接触者調査の徹底や関係機関の連携強化が活動の中心であった。

2)中島一敏(大学病院検査部・講師、派遣国:シエラレオネ、派遣期間:2014年11月16日〜12月19日):

斉藤講師と同じコイナドゥグ県へ派遣された。同県は、シエラレオネの東北端に位置する、ギニアと長い国境を有する最僻地で、シエラレオネの14行政区(県)の中で最も遅く初発患者が確認された場所であった。ホットスポットのカバラ地域は、斉藤講師を始め多くの専門家・外部支援が投入され状況は沈静化する傾向にあったが、ギニア等周辺地域では患者発生が継続しており、カバラ以外の地域での患者発生が懸念されていた。活動内容は、県全体の疫学状況の把握と整理、カバラ地域以外における未報告患者の探索、県のサーベイランスシステムの機能評価、県衛生部支援、県調整会議におけるリエゾン等であった。これらの活動を、ホットスポットを活動拠点とした斉藤講師と連携し行った。

リベリアの地方に派遣されたWHOチームと対応について協議しているところ

リベリアの地方に派遣されたWHOチームと対応について協議しているところ

3)押谷仁(医学系研究科微生物学分野・教授、派遣国:リベリア、派遣期間:2014年11月12日〜2014年12月25日):

当初は主に地域レベルの対応の支援を行うのが主な任務であった。派遣時にはリベリアでは感染者は減少傾向にあったものの、首都のモンロビアを中心にまだ毎日のように新規感染者が発生しており、地方でも数多くのホットスポットと呼ばれる、感染者の集積が起きている状況であった。このためモンロビアや流行地域での対応の支援を行っていた。派遣期間の後半はWHOリベリアオフィスに設置された、エボラ対応チーム全体のコーディネートを行うというのが主な任務であった。エボラ対応チームには疫学調査・感染制御などの7つの専門家チームがあり、40名を超える専門家が世界各国から派遣されていた。それらのチームの活動の支援を行うとともに活動全体のコーディネートを行っていた。

グローバル化の進展とともにエボラウイルス感染症のような感染症が国境を越えて伝播するリスクは確実に増加している。昨年には日本国内で70年ぶりにデング熱の感染が確認されている。このように海外の感染症の流行が日本に波及するリスクもグローバル化とともに確実に増加している。このような時代にあって、国際社会は連携して、感染症を現場で封じ込める体制を強化する必要がある。日本への波及を未然に防ぐという観点からも、このようなグロバールな感染症の流行の対応にも日本がより積極的な国際貢献をしていくことが求められている。東北大学は世界に開かれた大学を目指しているが、研究面だけではなく、このような専門的知識を生かした国際貢献も東北大学の重量な役割である。

注1:かつてはエボラ出血熱(Ebola Hemorrhagic Fever)と呼ばれており日本では今でもエボラ出血熱の呼称が使われることが多いが、必ずしも出血を伴わないことも多く現在では国際的にはエボラウイルス感染症(Ebola Virus Infection)が正式の名称として使われるようになっている。

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