新型インフルエンザに立ち向かう =押谷仁教授からのメッセージ=

過度に恐れず、しかし適切に恐れて、想像力を働かせ、冷静に対処し、危機を乗り切る
-東北大の学生諸君、東北大関係者の皆さん、そして市民の皆さんへのメッセージ-

押谷 仁
東北大学大学院医学系研究科 微生物学分野
教授 押谷 仁

我々人類は新たな脅威に立ち向かうことになった

我々人類は新たな脅威に立ち向かうことになった。豚インフルエンザが変異した新型インフルエンザによるパンデミック(世界的大流行)である。このようなウイルスには人類の多くは免疫を持っておらず、急速に感染が拡大し大きな被害が起きる可能性がある。残念ながら現代の医学はこのウイルスの拡大を完全には止めることはできない。しかし、我々は過去のパンデミックだけでなく、過去十数年の感染症の流行から多くの教訓を学んできた。もしこの新型インフルエンザが1997年に起きていたら、世界中でさらに被害が拡大していた可能性が高い。1997年の香港および2003年から今に続く高病原性鳥インフルエンザ(H5N1)の流行はパンデミックの脅威を我々に示してくれた。そして2003年に起きたSARSの国際的な流行は、グローバル化する世界の中では感染症の問題がひとつの国では解決できないということを明らかにした。

新型インフルエンザウイルス

まずこの脅威に立ち向かうためにはこれから起こることを冷静に見極める必要がある。このウイルスは人類にとっての完全に未知のウイルスではない。毎年冬に流行するありふれたインフルエンザウイルスの一つであることにはかわりがない。この点で完全な未知のウイルスであったSARSとは大きく異なる。この新型インフルエンザの感染性や病原性(毒性)といったウイルスの特徴も少しずつだがわかってきている。我々がこれまで想定してきた高病原性のウイルスよりははるかに致死率は低いということもわかった。何よりも我々は抗インフルエンザ薬などの多くの対策の選択肢を持っている。これらの対策をうまく組み合わせて使えばかなりの程度被害を抑えることは可能であると考えられる。

税関での様子

このままのスピードで感染が拡大すると急速に感染者が増える可能性がある。すなわち新型インフルエンザウイルスによる感染はすべての人の身近に起こることなのである。すべての人がなるべく感染を避ける、感染してしまった場合にはできるだけ他の人に感染させないという強い意志を持つことが社会全体を守ることになる。自分が感染し他の人に感染させるということは、自分自身は軽症で終わるかも知れないが(現時点では感染者の多くが軽症に終わることが想定されている)、身近にいる弱者、すなわち感染した場合重症化する可能性の高い人に感染させる可能性があるということを意味している。

日本での被害軽減に最大限の努力をするとともに、このウイルスのもたらす世界的な被害にも目を向ける必要がある。現時点ではこのウイルスが世界各国に広がることは避けられない状況である。日本よりも大きな被害が起こるかもしれない国の人々のことも少しだけの想像力を使って考える必要がある。この世界規模の大流行との闘いを通して将来の国際社会のあり方を考えるべきである。

まず、今回の新型インフルエンザの姿を見極めること、さらにすべての人が何をすべきか何ができるかを冷静に考えることができればこの危機は必ず乗り越えられると私は考えている。

(写真は時事通信社「時事ドットコム」の「新型インフルエンザ特集」から、許可を得て掲載しています。 時事通信社「防災リスクマネジメントWeb」には押谷教授が自治体や医療機関に向けた解説原稿や、厚生労働省の記者会見の詳報などが掲載されています。)

新型インフルエンザの星陵地区FD時の講演内容の公開について

新型インフルエンザが蔓延しています。我々は最新の情報を知り、適切に対応する努力が重要ですが、その一環として、5月18日(月)に星陵地区でFDを開催しました。 当日、微生物学分野の押谷仁教授からWHOでの最新の情報も含めて「豚由来A(H1N1)による新型インフルエンザの現状と今後起こり得ること」と題するご講演をいただきました。非常に重要な内容であり、都合がつかなかった多くの教職員、学生等にも情報が伝わるように、講演内容を以下のサイトで公開しました。質疑応答などはQ&Aとして最後にまとめてありますので、ご覧ください。

講演「豚由来A(H1N1)による新型インフルエンザの現状と今後起こり得ること」
(東北大学内からのアクセスに限定しています。)

医学系研究科 厚生委員会委員長 堀井 明

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