赤ちゃんの微かな鼓動を”見る
〜より正確な胎児健康状態の把握へ挑戦

八重樫教授 木村教授 杉林医師
東北大学大学院 医学系研究科 周産期医学分野(*1)
東北大学大学院 医学系研究科 融合医工学分野(*2)
八重樫伸生*1 木村芳孝*2 杉林里佳*1 

お母さんはいつもお腹の中の赤ちゃんが元気かどうか気がかりだと思います。産科医にとっても、お腹の赤ちゃんの健康状態はとても重要な問題です。赤ちゃんが元気に産まれてくることができるようにいつでも見守っています。

さて、それではお腹の赤ちゃんが元気かどうかを調べる方法といえば何を思いつくでしょうか。妊娠20週以降でしたら、お母さんは赤ちゃんがよく動いているかどうかで赤ちゃんの元気度合いを知ることができるでしょう。客観的な方法としては、超音波検査や胎児心拍モニタリングという機械を用いて元気かどうかを評価しようと試みています。この胎児心拍モニタリングは現在世界中で広く用いられていますが、偽陽性率が高い、つまり元気であるにも関わらず元気ではないと判断される場合があることが問題となっており、まだ産まれなくてもよい赤ちゃんを早くお産にしてしまう結果を招く場合があります。

(図をクリックすると拡大します)

より正確に赤ちゃんの健康状態を判断する方法はないのでしょうか。私達の研究室では、お母さんのお腹の上から赤ちゃんやお母さんに侵襲を与えることなく計測できる胎児心電図の開発を行っています。(図1)胎児心電図は実は100年以上昔の1906年にCremerにより発見されています。その後1960年代まで開発が続きましたが計測が難しかったため心拍数の変化の抽出のみに留まり、その後にあらわれた胎児心拍モニタリングにより取って代わられました。

胎児心電図の計測画面

(図をクリックすると拡大します)

なぜ胎児心電図の計測は難しいのでしょうか?お母さんのお腹の上から子宮の中の赤ちゃんの電気信号を計測するためには、色々な障壁があります。成人の心電図は数ミリボルトという大きさですが、お腹の上から計測する赤ちゃんの心電図の大きさは約10マイクロボルトと、成人の数百分の一という小ささなのです。(図2 Ch1-Ch11) この小さな電気信号を、お母さんの心電図や子宮等の筋肉による筋電図、胎動等のノイズの中から探さなければなりません。またお腹の中の赤ちゃんは、成人と違っていつも同じ向きでじっとしているとは限りません。

胎児心電図解析結果

(図をクリックすると拡大します)

このような状況から赤ちゃんの心電図を計測するために、お母さんの心電図をキャンセルする技術や小さな電気信号を計測するための特殊な電極やアンプの開発、新たなデータ処理方法の開発を行いました。(図3) これまで胎児心電図は日常診療では用いられていませんので、現在のところお腹の赤ちゃんの正常値はありません。しかしこれまでの胎児心拍モニタリングでは心拍数の変化でしか評価ができなかった健康状態の評価をよりくわしく行うことができるようになるのです。

2013年4月より私達の研究室で開発した胎児心電図を用いて、これまでの胎児心拍モニタリングと比較を行う臨床試験が始まりました。皆様のお腹の赤ちゃんの健康状態を胎児心電図で調べることができる日は間もなくです。

(2013.5.7掲載)

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