医学科長 ご挨拶
笹野 公伸SASANO, Hironobu
東北大学医学部医学科においての学生教育は、しっかりとした知識と確かな技術に基づき高い医療倫理を有する医師を社会に向けて送り出す事を一番の目的としております。従来からいわゆるヒポクラテスの誓いと言われる概念が古今東西の医学生の心構えとして何よりも重要と考えられてきたのではないかと思われます。加えて現在の医療環境では論語にあります"仏心鬼手"と言う概念も医学生の教育理念として入ってくるのではないかと考えます。あわせて東北大学の従来からの基本方針であります“門戸開放”と“研究中心主義”に基づき自分で物事が考えられる医学部学生を育てていくのも本医学科では重用視しております。
医学部の卒業生は種々の領域でリーダーとして何よりも広い見識と深い洞察力が求められております。こうした事から医学部学生は、卒業後の多様な進路を考えますと広い視点で医学というものを学んでいく必要が今の時代何よりも社会から重用視されてると思われます。米国の医学部で教育に少し関わっていた時に医師たる者が一番やってはいけない事は" tunnel vision"に陥る事であるという警鐘を最初に強調された記憶があります。このtunnel visionあるいはKalnienk visonとも呼ばれる言葉は暗いトンネルの中では先の小さな明かりしか見えず、周囲が何も見えなくなるという事から、視野/考えが狭窄になるという現象の比喩として良く使われます。特に医学の領域でこの格言は、診療面では"病気は治りましたが、患者さんは亡くなってしまいました。”あるいは研究面では”癌特有の遺伝子と考えておりましたら元々検索した細胞を顕微鏡で見たら正常細胞でした”と言うような事は医師たる者絶対に回避すべきという内容を教育するのにキャッチフレーズとして使われます。本邦でも同様の事を示す非常に良い格言があります。すなわち“木を見て森を見ず”と言う言葉で、医学部学生は絶えずこの言葉を胸に刻むべきと考えます。そこで本医学科では、広い視野に基づいて問題解決に向けての指導力・実践能力を育む教育を推進しております。しかし同時に医学教育は学生さん方の能動的な学習能力が何よりも求められます。すなわち医学部の教育はある面で職業人教育である事は否めませんので、”水を飲みたくない馬に綱をつけて無理に池に連れて行く事はしない”と言う側面がある事もここで強調したいかと思います。
東北大学医学部医学科は教育と研究に日夜取り組んでいます。未来を支える医療人を目指そうとされている皆さんに本医学科にて、充実した時間を共有することを楽しみにしております。