2011-03-23
震災時のストレスへの対応について
地震・津波が起こって日数が経過しました。東北大学では、阪神大震災の時にもストレスを緩和する活動に協力しましたが、その時の経験も含め、今回の東北関東(東日本)大震災の被災者の皆様にメッセージをお送りします。
・ストレスの原因
大災害が起こると、災害そのものが大きなストレッサー(ストレス要因)になるだけでなく、災害の記憶、余震の持続、ご遺体を目にすること、親しい方々の安否の心配、お金の問題、将来の見通しの不確実性、避難所での寒さ対策、食事、集団生活、など、様々な問題が起こります。
・ストレス応答
このため、「正常な反応として」さまざまな身体的・精神的変化が生じます。これをストレス応答と言います。
多くの場合、自律神経が興奮しています。そのため、身体的な不調として、下痢、腹痛、脈が速くなる、血圧が上がる、血糖が上がる、頭痛がする、などの症状が現れます。精神的な不調として、眠れない、不安、気が塞ぐ/落ち込む、などの症状が現れます。このような症状は自然に回復するこが多いことも覚えておきましょう。
・ストレス症状への対策
ストレスを緩和するには、まず、安全、安心、安眠を確保することが重要です。避難所を運営する方とよく相談をして、これらを実現できるようにしましょう。
・医療チームへの相談の仕方
様々な医療チームが避難所を訪問していると思います。医療チームの相談担当者に、ご自身の身体の不調についてお話しして下さい。高血圧の悪化(血圧上昇)、糖尿病の悪化(血糖上昇)、かぜ/インフルエンザ、便秘、下痢、胃の痛み、潰瘍の悪化(腹痛、吐血)、などには医療が即座に助けになります。
不眠、食欲不振、排便の不調についてお話しするだけでなく、気分の不調についてもお話ししてください。
・ストレスを和らげる方法
避難所では、一緒にいる親族だけでなく、ほかの方々とも心を寄せ合って過ごすことが大切です。いろいろな個性の方々が集まっていると思いますが、あまりに他人を批判したり、「こうすれば良かった」と繰り返して考えること、「もうだめだ、もうどうでもいい」と捨て鉢な気持ちになることは、こころのエネルギーの無駄使いになります。生活の中で起こった「ちょっと良いこと」を数えるのは気持ちを明るくします。
・PTSD/外傷後ストレス障害という病気
大災害がおこって1ヶ月ほど経った後でも、何度も地震・津波の記憶がよみがえってくることがあります。これをフラッシュバックといいます。これと同時に、不眠、いいようのない怒り、集中困難、警戒する気持ち、ちょっとしたことに驚いてしまう、などの症状は、外傷後ストレス障害(PTSD)の始まりの兆しです。このようなことが疑われたら医療チームにご相談下さい。薬物で回復が望ましい方向に行きます。地震・津波について、繰り返してお話しすることは、症状を悪くする心配があるので、あまりしないようにしましょう。
・ほかにも起こりやすい症状や病気
不眠、食欲低下、ゆううつな気分、喜びを感じない、焦る気持ち、疲労、罪責感、思考力低下、生きていたくない、などの症状のいくつかが2週間以上も続くときは、専門医の診察が必要になるので、医療チームに相談して下さい。
また、避難所では下痢、急性胃腸炎が流行しやすくなります。それらが回復した後にも、ストレスや緊張で腹痛や下痢になることがあります。このような病気を過敏性腸症候群(IBS)と呼びます。喫煙者は下痢や急性胃腸炎の後にIBSになりやすいと言われています。
このような病気を予防するには、上記の「ストレスを和らげる方法」を実行しましょう。
・ストレスによる病気を予防しましょう
ストレスは、ここに挙げた他にも、いろいろな病気の原因、あるいは病気を悪化する要因になります。何かと不便な生活でしょうが、近所を歩くなど、適度に体を動かし、自然の中に春の息吹をみつけて気持ちを落ち着かせましょう。
つらい症状を「自分の気持ちの問題・気の持ちよう」と抱え込まず、医療をしっかりご利用ください。
東北大学大学院医学系研究科行動医学教授 福土 審
東北大学病院総合診療部・心療内科教授 本郷 道夫
東北大学大学院医学系研究科精神・神経生物学教授 曽良 一郎
東北大学大学院医学系研究科精神神経学教授 松岡 洋夫