2014年1月27日

震災時における小児保健医療に関する調査結果などについて公開シンポジウムを開催

厚生労働科学研究費補助金(成育疾患克服等次世代育成基盤研究事業)東日本大震災被災地の小児保健に関する調査研究班(代表:呉繁夫教授 小児病態学分野)は、1月26日に仙台国際センターで、大震災から子どもたちをどう守れるかと題して、震災時における小児保健医療に関する調査結果などについて公開シンポジウムを開催しました。
本シンポジウムでは、研究班の研究成果として以下のような発表がありました。

プログラムと概略:
1.開会のあいさつ 厚生労働省 雇用均等・児童家庭局 母子保健課課長 桑島 昭文 先生
2.被災3県の小児科医療機関の被災状況 東北大学病院 小児科 田中総一郎 先生
 岩手・宮城・福島3県の小児科医療機関1080件に対してアンケート調査を行い、468件(43.3%)にご協力をいただいた。建物の被害は津波被害によるものが多かった。被災後1週間までは外来診療不可と制限ありが54.7%であった。電気・水道・電話などのライフラインは6~7割で被害を受け、5~10日間続いた。内陸部と沿岸部では、ライフラインの回復から診療の復旧までの期間が2倍であった。損壊した医療機器、医療インフラの再整備、マンパワーの確保が支援のポイントと考えられた。

3.震災時に小児科医が果たすべき役割 大阪大学 大学院人間科学研究科 国際協力学講座教授 中村 安秀 先生
 東日本大震災は、1)世界でもまれな高齢化社会を直撃した自然災害、2)広範囲にわたる被害地域、3)原発事故による身体的影響と長期疎開による社会的影響が特徴的であった。支援活動の中で日本の強みと考えられたことは、1)震災直後から隣接地域や全国から支援があったこと、2)世界の援助関係者が驚いた地元の現場力、被災した住民の避難所における自発的な活動がみられたこと、一方で、3)水・食料・衛生環境は国際標準を維持できていなかったことが指摘された。

4.子どもの発育状況に関する研究 東北大学 大学院医学系研究科環境遺伝医学総合研究センター 分子疫学分野教授 栗山 進一 先生
 全国自治体に協力を依頼し、乳幼児健診での身長や体重などのデータを収集し、震災前と震災後で子どもの発育に変化が生じたかを研究する。平成24年度は、岩手県・宮城県・福島県で11,602人(68市町村)のデータを集めた。また、全国の保育所から震災の影響を受けない平成16年生まれの子ども53,747人、震災の影響を受ける平成18年生まれの子ども69,004人のデータを得た。被災の有無、子どもの発育への影響などを考慮しながら、解析を進めている。

5.被災地における子どものメンタルヘルスについて:問題行動を中心に独立行政法人 国立成育医療研究センター 成育社会医学研究部部長 藤原 武男 先生
被災3県の子ども178人と、対照として三重県の子ども82人への面接を通して、子ども達の問題行動について解析を行った。被災3県の子どもの28%が深刻な抑うつや引きこもりなど「内向的問題」を抱えていた。攻撃的な行動をとるなどの「外向的問題」は21%、社会適応性など「総合的問題」は26%であった。三重県の子どもに比べ、内向的問題は4.5倍、外向的問題は1.9倍、総合的問題は3倍多かった。表面的にわかりにくい内向的な問題が多いために、子どもたちへのきめ細かな支援が必要である。

6.福島県における子どものメンタルヘルスについて:ナラティブを中心に 福島県立医科大学 神経精神医学講座講師 増子 博文 先生
 原発事故による避難の対象となった全住民(21万人)を対象に県民健康管理を行っている。未就学の子ども(11,717人)、小学生(11,791人)、中学生(6,077人)に対して、質問紙による調査を行い、支援が必要と判断された対象について、専門家による支援を行っている。
原発事故の影響で避難生活を続ける小学生は、震災から1年半を経て爪かみなどの問題行動を起こすようになった。子どもを支える両親や教師が、避難の長期化や復興の遅れで疲弊し、震災から時間が経って悪化するケースがある。

7.閉会のあいさつ 東北大学病院 小児科 呉 繁夫 先生

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