2017年2月3日

第51回脳神経科学コアセンターセミナーの開催(3/14)

日時: 2017年3月14日(火)16:30-18:00
場所: 医学部開設百周年記念ホール(星陵オーディトリアム)
講師: 吉森 保 教授
     大阪大学大学院 生命機能研究科 細胞内膜動態研究室
             医学系研究科 遺伝学教室

表題: 細胞の守護神オートファジー:疾患に対抗する細胞内大規模分解システム

要旨: ギリシャ語で「自分を食べる」という意のオートファジーAutophagyは、全真核生物が備える細胞内大規模分解システムである。膜オルガネラであるオートファゴソームが細胞質や他のオルガネラの一部を囲い込み、そこにリソソームが融合し分解が起こる。オートファゴソームが電子顕微鏡で初めて観察されてから既に50年以上が経過するが、その分子基盤は永く不明のままであった。その状況を打破したのが、1993 年の大隅良典博士(現東京工業大学栄誉教授)による酵母オートファジーに必須の遺伝子群ATGの同定であった。このブレイクスルーを端緒にオートファジーの理解が急速に進み、オートファジーが細胞内浄化により細胞を健全な状態に保ち、発がん、神経変性疾患、感染症、心不全、炎症性疾患、ミオパシー、2型糖尿病、糸球体症などの多岐に亘る疾患を抑制していることも明らかとなってきた。オートファジーはまた、発生・分化、寿命延長、抗原提示などでも重要な役割を演じている。大隅博士は、この分野のfounderとして2016年ノーベル生理学医学賞を受賞された。

 この10年にオートファジー分野は劇的な成長を遂げ拡大しているが、それは主に哺乳類(=ヒト)の病理・生理との関係が注目されていることによる。私は1996年の大隅研発足時に助教授として招聘され、当時ほとんど何も判っていなかった哺乳類オートファジーの分子機構の解析に着手した。独立後も研究を継続し、オートファジーと疾患との関係についても追求している。私の20年に亘るオートファジー研究は、哺乳類オートファジー研究の爆発的な進展と時を同じくしているが、多少なりともその発展に貢献できたのではないかと考えている。我々が最初に手がけたLC3は初めて見つかったオートファゴソーム局在タンパク質であり、これによりオートファジーの光学顕微鏡による可視化が可能になった。LC3は現在も本分野で広く用いられ、論文被引用数は4,000を超え分野で1位である。最近には分野最大の謎として永年論争の的となってきたオートファゴソームの起源について、小胞体とミトコンドリアの接触サイトが形成の場であることを示した。我々はオートファジーが病原体の排除も行うことを世界に先駆け報告し、その解析から選択的なオートファジーが存在することも明らかにした。さらにオートファジーが病原体を認識する機構も明らかにした。また障害を受けたリソソームを除去する選択的オートファジーを新たに見出し、それが高尿酸血症性腎症の抑制に重要であることを明らかにした。大阪大学医学系研究科では世界で初めてオートファジーセンターが附属施設として設置され、我々の教室と10臨床教室が分野横断的な共同研究を展開し、オートファジーが関わる病態のメカニズム解明による疾患の制圧を目指している。その最初の成果として、高脂肪食摂取でオートファジー抑制因子Rubiconの量が増加し、その結果オートファジーが低下し脂肪肝を発症することを2016年に報告した。

本講演では、最終的な結論だけではなく着想の経緯等もなるべく含めてこれまでの研究について紹介したい。


連絡先:医学系研究科発生発達神経科学分野 大隅 典子 (022-717-8203)

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