2019年4月24日

ヒト由来カルシウムポンプの高分解能構造と活性制御機構を解明

 東北大学多元物質科学研究所の井上道雄助教、渡部聡助教、稲葉謙次教授(生命科学研究科、理学研究科化学専攻 兼担)、および奈良先端科学技術大学院大学の塚崎智也教授、大阪大学の高木淳一教授、東北大学未来科学技術共同研究センター/東北大学大学院医学系研究科の加藤幸成教授、京都産業大学の永田和宏教授らを中心とした共同研究グループは、JST戦略的創造研究推進事業において、筋収縮の制御やアポトーシスの誘導など、様々な生命現象において重要な役割をもつカルシウムイオンの恒常性を保つ上で必須のカルシウムポンプSERCA2bの高分解能構造を世界で初めて明らかにしました。

 細胞小器官の一つである小胞体は、細胞内での適切なカルシウムイオン濃度を維持するために、カルシウムを取り込み、蓄える働きがあります。SERCA2bはこのカルシウムの取込みを担い、全組織に広く発現している膜たんぱく質です。骨格筋や心筋に特異的に発現するSERCA1a(SERCA2bのアイソフォーム)やSERCA2a(SERCA2bのスプライシングバリアント)とは異なり、SERCA2bには11番目の膜貫通ヘリックス(TM11)を含む特徴的なC末端領域があります。このC末端領域によってSERCA2bの活性が制御されることは過去に報告されていますが、その詳しいメカニズムは分かっていませんでした。

 我々は、SERCA2bの立体構造をX線結晶構造解析によって決定し、TM11がこれまでの予想とは全く異なる位置に存在することを明らかにしました。TM11は、SERCA2b分子内でL8/9ループとTM10の一部と相互作用することが構造から分かり、アミノ酸の変異体解析によって、これら分子内相互作用がSERCA2bの活性制御に重要であることが明らかとなりました。また、同じ手法で決定したSERCA2aの立体構造と比較したところ、SERCA2bのTM11によって膜貫通へリックス領域の動きが抑えられることが示され、この動きの抑制がSERCA2bの活性を制御することを考察しました。これらの成果によって、SERCA2bの他のカルシウムポンプとは異なる活性制御のメカニズムが原子レベルで明らかとなりました。

 本研究成果は、2019年4月23日11時(アメリカ東部時間)に米国科学誌Cell Reportsに掲載されました。

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