活動内容

第9回脳科学GCOE若手フォーラム(08.06.27)

6/27(金)に、第9回東北大学脳科学グローバルCOE若手フォーラムが、東北大学星陵キャン
パス(医学部)にて開催されました。

澤村先生
講演時の様子

澤村先生には「高次視覚野におけるfMRIとニューロン活動記録との比較」と題して講演をして頂きました。今日、ヒトのfMRI、そしてサルの単一細胞記録は神経科学の分野で非常に多く用いられている研究手法です。というのもfMRIはヒトの脳活動を非侵襲的に計測することが可能であり、またサルの単一細胞記録は細胞の電気的活動を直接測定することが可能だからです。しかし研究手法には長所・短所があり、なかなか一筋縄ではいきません。澤村先生は同一の課題を異なる測定法で評価することにより、これらの問題点を明らかにしました。
 fMRIを用いて高次視覚野を調べる有名な方法として、adaptation methodsがあり、1990年代から広く用いられています。これは特定の視覚刺激を持続的に与えられるとそれに対応する視覚領野の活動が減弱する、という特徴をうまく利用した方法です。視覚刺激A、Bに対し、ある細胞群において、単一刺激が繰り返された場合(A-A)と、異なる視覚刺激が連続して提示された場合(B-A)に減弱応答が同程度に観察されたとき、その細胞群は視覚刺激A及びBに選択性がないということになります。しかしfMRIは血流動態を測定したものであり、神経活動を間接的に見ているに過ぎず、解釈に二つの前提を必要としました。つまり、.劵箸よびサルのfMRIで同程度の減弱応答効果が認められる、∈挧Ψ欧砲ける電気生理学的刺激選択性と減弱応答の選択性とが相関する、という前提です。fMRIにおいてある領域の活動が減弱するという事実があったとしても、それが実際に細胞活動の減弱を意味しているかは分かっていませんでした。
 澤村先生ははじめにヒトとサルとで同じ課題を施行し、その際の活動をfMRIで測定しました。その結果、ヒトとサルで高次視覚領域に同程度の減弱応答効果が認められることが分かりました。しかし、次にサルを用いて減弱応答がみられた視覚領域から細胞活動を記録したところ、刺激選択性に関して完全な相関は認められませんでした。よってfMRIにおけるadaptation methodsは、刺激選択性を過剰評価しているという可能性が示唆されました。
 澤村先生にはベルギーでされていた仕事を主にお話頂きましたが、それだけでなく海外での体験談など、今後海外での仕事、研究を考えている若手へのアドバイスもして頂き、盛り沢山の内容でした。(齋藤 記)

小野田先生
講演時の様子


小野田先生には、「ストレス制御に関する認知神経科学的研究 −予期とサポートの観点から−」と題して講演を行っていただきました。21世紀は、こころの時代、ストレスの時代と呼ばれておりますが、ストレスは多くの精神疾患の発症、症状形成や持続に関与しているため、現代のような社会でいかにストレスを制御し、人間らしく健康な生活を送るかは大きな命題です。
小野田先生の所属されたグループでは、ストレス制御の認知側面として情動の予期と社会的サポートに着目され、その認知神経科学的なメカニズムをMagnetoEncephalo Graphy: MEGとfMRIを用いて比較検討されました。まず情動の予期に関する検討で、MEGにより与えられた刺激に前後してα波の周波数成分の減少(event-related desynchronization; ERD)が起こるかどうかを測定しました。その結果、予測される刺激がストレスフルである時に、よりERDが起こることが明らかになりました。また、同じパラダイムでfMRIを用いて脳活性が測定されましたが、ストレスフルな刺激の予期において、より前帯状回及び扁桃体の情動反応が喚起され、前頭前野−視床−視覚野のネットワークが活性していることが明らかになりました。このことから、予期することでストレスフルな刺激に関する感覚入力を抑制することができると示唆されます。また、社会的サポートに関する検討ではfMRIを用いて社会的痛みと社会的サポートによる脳活性が測定されました。社会的痛みは前帯状回の活動により表象されますが、社会的サポートが与えられた場合、社会的痛みは低下し、それは前帯状回の活動と関連していることが明らかになりました。また社会的サポートによる社会的痛みの低下は左外側前頭前野と負の相関を示したことから、情緒的なサポートは前頭前野における感情抑制処理が促進され前帯状回の活動を抑制することで効果を持つことが示唆されました。
小野田先生の研究テーマは、私たちの生活に非常に身近であり、さらにとても分かりやすくお話いただきましたので、大変勉強になりました。(多那 記)

Copyright © Tohoku Univ. All Rights Reserved.