活動内容

第2回脳カフェ 杜の都で脳と星を語る

 せんだいメディアテーク1Fに設置された150あまりの椅子が、イベント開始の15分前には、ほぼ埋まってしまっていました。2008年7月13日に開催された第2回脳カフェ 杜の都で脳と星を語る「7畳間から生まれた宇宙、1350gの宇宙」のときのことです。イベントは、東北大学で行われている脳科学研究と、市民の接点となる場として、昨年の12月に続いて企画されました。

会場前の様子
会場内の様子

 
 イベントは、2人の演者のショートプレゼンテーションと対談からなるトークセッションと、脳神経系の標本や顕微鏡写真、体験型のコーナーからなる展示の2つのパートで構成されました。
 今回のトークセッションのゲストは、大平貴之氏。プラネタリウムクリエーターである氏は、ギネスブックに世界最高と認定される光学式プラネタリウム“メガスター”を個人で制作し、半生がテレビドラマ化されるなどしている方です。大平氏の講演で始まり、拠点リーダーの大隅典子氏の講演、そして二人の対談まで、1時間半のセッションでした。

大平貴之氏

 大平氏の講演は「星空ができるまで、脳科学に思うこと」。小学生時代から遡り、プラネタリウム作りに挑んだ半生が語られます。夜光塗料で天井に星空を描くところから始まって、年齢が進むにつれてグレードアップし、大学を休学したりしながら真摯に取り組んでいく頃の話になると、ユーモア溢れる語り口に会場は大いに沸きながらも同時に唖然としてもいました。具体的に思い描かれた夢と、そこに向かう膨大だけれど着実なステップ、研究における大きなブレークスルーにも通じるものがあるかも知れません。


大隅典子 拠点リーダー

 大隅氏の講演は、「脳をつくる星の数の細胞たち」。銀河系の星の数と脳細胞の数の対比や、星の形とある種の脳細胞の形の対比などを手掛かりに、脳科学の現在についての全般的な語りから、成人になっても脳細胞が新生される話までを短時間にまとめたものでした。





対談の様子

 圧巻だったのは、対談。星を見た時の脳の反応についての大平氏から大隅氏への質問に始まり、ユーモアやジョークも満載の丁々発止のやり取りになりました。大平氏が対談の中で強く反応したのは、“報酬系”“懲罰系”という言葉そのもの。脳の中で、ある特定の行動や反応などをしたときの神経回路に対して、褒美や罰が脳内の物質として与えられることで、その行動をとることや反応が、強化されたり避けられたりする仕組みのことです。最近の脳神経科学では、一般的に使われる概念なので、学問の世界にいるとネーミングについての疑問など浮かびません。対談ならではの展開でした。


メガスターゼロ

 また、トークセッションの時間中に、大平氏の会社が最近開発した、メガスターゼロが披露されました。制御やスペックの都合上、星空の投影はできませんでしたが、機体の実物の前には、セッション終了後に、撮影をしたいという人の列ができていました。





展示の様子
展示の様子

 







 トークセッションの前後を中心に、脳神経科学の展示と、若手研究者によるインタラクティブなコミュニケーションも、12月の第1回開催に引き続いて行われました。展示されたのは、カブトムシなどの神経系の露出標本、画面上で自由に動かしてみることができるヒトの脳の三次元データ、光学顕微鏡による脳切片の観察体験など。若手研究者たちが自ら参加者に説明し語り合うインタラクティブな展示は、参加者の満足度も高かったようです。また、参加者のみならず、若手研究者自身にとっても自身の研究の社会における受け取られ方や価値について考え直す機会になったことと思います。

 300名弱の参加者の方々のうち、およそ半分の方からアンケートの回収を得ました。イベントの評価については、大変よかった、よかった、を合わせると、実に90%以上の方から高評価を頂きました。とは言え、予想を上回る御来場を頂いたこともあり、多くの方に立ち見を頂いたこと、申し訳なく思います。
 社会に向けて脳神経科学の研究を発信することで、研究する側自身も成長することができるような機会を、今後も作っていきたいと考えています。

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