活動内容

第15回東北大脳科学グローバルCOE若手フォーラム

5月29日(金)に、第15回東北大学脳科学グローバルCOE若手フォーラムが東北大学星陵キャンパス(医学部)にて開催されました。

 今回も前回の第14回と同じ形式で東北大脳科学グローバルCOEに所属する研究室に所属する学生、若手研究者たちが各々の研究内容を発表しました。

 発表者は、脳情報処理分野(飯島研)の大原慎也さん、清水章さん、山田宗和さんと高次機能障害学(森研)の澤田陽一さん、脳機能解析分野(八尾研)の王紅霞(Hongxia Wang)さん、精神神経生物学分野(曽良研)のわたくし、有銘預世布(文責者)の計6名でした(発表者順)。

脳情報処理分野(飯島研)・大原慎也さん

 大原さんのテーマは、「ウィルスベクターを用いた神経回路の標識について」で、神経回路の標識にウィルスベクターを用い、ウィルス干渉という一度感染した細胞には他のウィルスが感染しにくくなるといった問題に関しても工夫をして対処していた点が非常に興味深かったです。また、2重に色分けされた投射ニューロンの写真は視覚的にも非常にインパクトのあるプレゼンテーションでした。


脳情報処理分野(飯島研)・清水章さん

 清水さんのテーマは、「嗅上皮付き単離脳標本を用いた嗅覚情報表現について」で、脳を生きた状態で取り出し、還流液を流し続けることで生かしたままにおいに関する分子情報と脳内の活動を解析していました。手技が非常に興味深く、脳の底面(腹側)の解析までも独自の対処法で解決されている点に独創性を感じました。



脳情報処理分野(飯島研)・山田宗和さん

 山田さんのテーマは、「前頭連合野における帰納的推論について」で、サルにおける逆転学習を用いて、行動の逆転と神経活動の関連を解析していました。背外側前頭前野は帰納的な推論に、腹外側前頭前野や眼窩前頭前野は刺激と報酬との連合学習に必要であることを報告しました。日頃研究対象としてマウスを使用している私には、逆転が起きたことをすぐに対応するサルの能力の高さに改めて驚きを覚えました。


高次機能障害学(森研)・澤田陽一さん

 澤田さんのテーマは、「パーキンソン病における注意のセット転換障害とその神経基盤」で、まず参加者たちにパーキンソン病とその診断について詳しく紹介されました。また、認知機能検査とPET(ポジトロン断層装置)を用いて、注意におけるセット転換障害と前頭葉の機能関連を報告しました。




脳機能解析分野(八尾研)・王紅霞さん

 王さんのテーマは、「Molecular determinant differenciating photocurrent properties of two channelrhodopsins from chlamydomonas」で、クラミドモナスのチャネルロドプシンを用い、光で神経細胞を刺激して活動されることを紹介しました。電気的に直接刺激するのではなく、光によって細胞へのダメージを最小限に抑えつつ、時間的・空間的な細胞刺激が可能になる技術であり、非常に今後の応用が期待される研究発表でありました。


精神神経生物学分野(曽良研)・有銘預世布

 有銘(文責者)のテーマは、「精神疾患モデルマウスを用いた認知機能改善作用の検討」で、統合失調症におけるドーパミン仮説、グルタミン酸仮説、神経発達障害仮説の一部を反映した各モデルマウスに対する認知機能改善薬の探索と作用機序の解析を発表しました。





 今回の若手フォーラムで発表させていただきながら、他の方の発表を伺っていると非常に多くの共通したキーワードが出てきたことに驚きました。例えば、私個人の研究内容だけでも、逆行性神経回路標識(大原さん)、前頭前野(山田さん)、ドーパミン神経(澤田さん)といった具合です。このような企画を今後さらに発展させて行くことは、GCOEに属する若手研究者たちが新たな視点や出会いの場になり、各々の研究生活をより一層刺激的なものにしてくれる機会となると感じました。

(文責 医学系研究科 精神神経生物学分野 有銘 預世布)

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