活動内容

第3回脳カフェ「杜の都で脳を語る」(09.07.12)

150人程度の参加者の方々が一斉に、ハートの図形が描かれた紙を前後に揺すっています。色が作り出す錯視を体験して、感嘆の声があがる――。今回の脳カフェの、ゲスト講演に招いた北岡明佳氏(立命館大学文学部教授)は、錯視研究・錯視アートの制作で著名。40分の講演時間を目一杯使った実演と解説の中には、参加者が、まさに「体感」する一こまもありました。

満員のせんだいメディアテーク
司会進行の岩田有未さん








 
 3回目を迎えた東北大学脳科学グローバルCOEの「脳カフェ」。過去2回と同じく、せんだいメディアテーク1Fのオープンスクエアで7月12日(日)に行われました。今回は、講演2題と、若手研究者による展示・実演。講演は、冒頭で紹介した、北岡氏による「錯視を起こす脳のメカニズムを考える」と、拠点メンバーの福田光則教授(生命科学研究科)による「脳科学から美白へのアプローチ:肌や髪の毛が黒くなる仕組み」。この2つの講演を、もと東日本放送(KHB)のアナウンサー岩田有未さんのナビゲートで、参加者に書いて頂いた質問を用いたインタラクティブな時間もたっぷりとって、進行しました。

演者の北岡明佳氏(立命館大学教授)

 会場は、北岡氏の作品に、あるいは、福田氏が掲げた「美白」の文字に惹かれてか、たくさんのお客様にいらして頂いて満員の盛況となりました。北岡氏の講演は、「色の恒常性」「脳内処理時間を見る」「『蛇の回転』錯視」「美容に関する(?)錯視」の4部構成。主に“色”を利用したオリジナルの錯視アート作品をふんだんに取り上げたスピード感あふれるもので、参加者の皆さんも大いに沸きながらのイベントとなりました。主催者としては、特に、最後に、もう一人の演者を意識した演題を用意してくださったことに、感じるところがありましたが、北岡氏の結論は、「『美容に役立つ錯視学』はまだまだ遠い」とのことでした。


演者の福田光則氏(東北大学脳科学GCOE)

 福田氏の講演は、肌が黒くなるもとである、メラニン色素が、どこでどのようにして作られて、そして、肌に運ばれるか、について、基礎科学が解明している最新の知見を伝えるもの。脳神経科学の研究の対象である「細胞内での物質の輸送」が、メラニン色素をつくるメラノサイトの輸送と共通している、ということ、驚かれた方も多いかと思います。この講演、すぐに美白を実現する、ということにはつながらず、そういう意味では、がっかりされた方もあるかもわかりませんが、集まった質問用紙には、かなり高度に専門的なことまで理解されたものも多く、寄せて頂いた関心が深いものであることを実感しました。


若手研究者による展示とヘビ型ロボット実演

 講演と共に行われた、若手研究者の展示・実演の中心は、ヘビ型ロボットの実機の実演。生物の体の仕組み、また、体の動きの制御の仕組みに学んだロボットの動きは、来場したあらゆるお客様の視線を浴びていました。また、講演に関連したメラノサイト輸送を映した動画や解説パネル、昨年に引き続いて展示された顕微鏡写真なども展示され、若手研究者の解説を受けて来場した皆様が御質問やコメントをし、そして若手研究者たちがより研究について考える、というコミュニケーションも生まれていました。


市民図書館内、期間限定の脳科学特別書架

 今回の脳カフェで初めて取り組んだのは、会場となったメディアテークの3F以上にある仙台市民図書館との連携です。こちらの働きかけに応えて、脳カフェ当日を挟む10日間程度、仙台市民図書館には脳科学に関する特設書架が設けられ、100冊の本が館内から集められ、貸出にも供されました。事前に図書館にいらした方が書架をご覧になって、イベントに来場し、また、イベントに来場した方が本を借りることでより詳しく脳科学に触れ、といったループを作ることにも成功した、と言えるのではないかと自負しております。



 イベントがイベントだけに終わらず、研究を生きた形で市民の方に手に触れられる場をつくっていくために、今後もさまざまな工夫に挑戦していきたいと思います。


参考:
 演者 北岡明佳氏のウェブサイト: 
北岡明佳の錯視のページ http://www.ritsumei.ac.jp/~akitaoka/
 また、以下のページから当日の講演資料を見ることもできる
 http://www.psy.ritsumei.ac.jp/~akitaoka/TohokuCOEnocafe2009.html


謝辞:
 本企画の実施において、下記の方々に特にお世話になりました。
特定非営利法人脳の世紀推進会議、財団法人しんゆう会、仙台市立図書館

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