活動内容

第20回東北大脳科学グローバルCOE若手フォーラム

2009年11月27日(金)東北大学星陵キャンパス(医学部)にて、第20回東北大脳科学グローバルCOE若手フォーラムが開催されました。
今回は大学外から研究者の方を1人招聘し、ご講演いただきました。

ご講演中の田中先生(その1)

 今回の講演者の方は、京都大学生命科学系キャリアパス形成ユニット特定研究員の田中暢明先生でした。
 田中先生は「ショウジョウバエの“Neural Circuit”を調べる ‐ 嗅覚系をモデルにして」というテーマでお話をして下さいました。
田中先生は遺伝学と電気生理学の実験手法を組み合わせて、まず昆虫において感覚情報を統合する脳の部位であるキノコ体での神経活動を調べました。
 この実験により、バナナなどの食べ物の匂いを嗅いだ時に、キノコ体で「電位振動」と呼ばれる特徴的な神経活動が観察されました。
それでは、この電位振動が生じるのに必要な神経回路とはどのようなものなのでしょうか?


ご講演中の田中先生(その2)

 田中先生はGal4エンハンサートラップ法と免疫組織化学とを駆使して電位振動に必要なニューロンを探索し、2つの局所介在ニューロン群(それぞれ「LN1」および「LN2」と名付けられた)を形態学的に同定しました。
これら2つのニューロン群は、嗅覚受容ニューロンからの入力を受け取る部位である触角葉の近傍に位置し、触角葉の糸球体に向けて突起を伸ばしていることから、匂い刺激によって引き起こされる電位振動に関わっている可能性が考えられます。
 そこで、LN1およびLN2の機能を明らかにするために、これらニューロン群それぞれの神経活動を人為的に抑制した上で電位振動が起こるか否かを調べました。
 その結果、LN2の活動を抑制した時にのみ電位振動が消失したことから、LN2がこの現象に必要な神経回路を形成するニューロンであることが示されました。

 少数または単一ニューロンレベルでの神経形態とその機能の解析は、現在神経科学でもっとも「熱い」研究領域の1つであると言えます。
そのような競争の激しい領域にあって、田中先生の研究は素晴らしく、ご講演を聴かせていただいた私にとってたいへんな刺激となりました。


懇親会の様子

 ご講演終了後、私たちは田中先生を囲んだ懇親会および2次会に繰り出しました。
田中先生はとても気さくな方で、個人的にもいろいろと貴重なお話を聴かせていただいたのですが、あまりに楽しかったせいか私は一部記憶が飛ぶほど飲んでしまいました。(苦笑)


(文責: 野島鉄哉 ゲノム行動神経科学グループ・山元研究室)

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