活動内容

第2回脳科学GCOE若手フォーラム(07.11.30)

11/30(金)に、第2回東北大学グローバルCOE若手フォーラムが、東北大学星陵キャンパス(医学部)にて開催されました。

磯田先生
富田先生

今回は、磯田昌岐先生(理化学研究所・脳科学総合研究センター・象徴概念発達研究チーム)、富田望先生(本学電気通信研究所・ブレインウェア実験施設・実世界コンピューティング研究部)をお招きしました。以下に報告をさせていただきます。


磯田先生には、「自動化された動作から制御された動作への切り替えを実現する神経メカニズム」と題して講演を行っていただきました。私達の日常生活の中では、慣れ親しんだ習慣的な行動を、状況に応じて変えなくてはならない場面に遭遇することがあります。このような場面では、「慣れ親しんだ行動を抑制する」ことと、「状況に応じた適切な行動発現を促進する」という2つの過程が必要ですが、この両方の過程に重要な役割を果たすのが、前頭葉の内側部に位置する「前補足運動野」という部分である、ということが今回のご講演の骨子でした。導入部では、日常誰しも遭遇するような身近な状況をとりあげて専門家以外の方々の関心をもぐいぐい引き込み、講演の核の部分では、果たして、前補足運動野の一個一個の神経細胞活動が、慣れ親しんだ行動の抑制に関わるのか、適切な行動発現を促進するほうに関与するのかが洗練されたスライドを用いて論じられました。筆者は日々磯田先生と同様の方法論に基づいて実験を行っていますが、脳の神経細胞が時々刻々何を語っているかは、優れた実験系の下で初めて見えてくるものであるということを痛切に感じます。磯田先生の研究成果は、実験系の巧妙さ、時間的解析の詳細さ、解剖学的知見の裏づけが揃い、前補足運動野の機能側面を鋭い切り口で見せてくれるものでした。<文責:中島>


 富田先生には、「実環境における随意運動のリアルタイム制御機構 −生物の生存脳機能解明に向けて−」と題して講演を行っていただきました。実環境で機能するロボットの設計を考える際、その実環境は常に予測不可能的に変化します。一方、生物はそのような環境の変化に適応し運動を実行します。未学習の環境や学習の時間スケールよりも早い環境変化に対しては、学習システムだけでは対処できません。生物の個体生存のためには、学習によらず多様な運動パターンを発現可能なリアルタイム運動制御機構が必要不可欠です。そのようなからくりを、人工物であるロボットに組み込む設計方策をご紹介いただきました。生物の神経のネットワークから発生するパルス、またそのネットワークのつながりの変更による多様なパルスパターンを参考に、同じ機能を持つ制御器を6足、2足のロボットに持たせ、学習システムによらない自律分散的な制御手法で、適応性に振る舞うロボットの設計に成功されておりました。また、その制御器に障害を持たせた場合の歩行パターンが、実際のパーキンソン病患者の歩行パターンと酷似しておるなどの、興味深い話もご紹介いただきました。<文責:梅舘>

交流会の様子
交流会の様子

生体システム生理学 PD 中島敏
工学研究科 D1 梅舘拓也

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