がん細胞イメージング
教員構成
- 教授 広田 亨
広田 亨
HIROTA, Toru
分野の紹介
がん細胞は、細胞分裂の度に染色体数が変動する「染色体不安定性」と呼ばれる性質を有していることがあり、この性質を獲得することが、がんの生物的悪性度と相関していることが知られています。しかし、その臨床的な重要性にも拘らず、染色体不安定性の発生メカニズムは、まだよく分かっていません。正確な染色体の分配を達成するための要訣はどこにあるでしょうか?そして、がん細胞では、どのプロセスに「病巣」が潜んでいるのでしょうか?私たちは、1)染色体の構築過程、2)染色体と微小管の結合過程、3)染色体分離のタイミングを決める過程、が鍵を握っているに違いないと考え、これらのポイントについて、生化学的・顕微鏡的アプローチを用いて研究しています。さらに、生理的なメカニズムの究明を進めると同時に、実際のがん細胞の細胞分裂について詳細な観察を重ねることによって、染色体不安定性を導いている要因を探究しています。
論文・書籍・受賞などの実績
①Kinetochore stretching inactivates the spindle assembly checkpoint. J. Cell Biol. 184: 383-390. 2009
M期チェックポイント信号発信の源泉を探る目的で、動原体の動態を生きた細胞で可視化することを試みた結果、動原体ストレッチングと命名した現象を見出した。この発見によって、従来の諸説は一掃され、動原体にかかる張力はチェックポイントに感知されないことを示唆した。Nature Cell Biol誌などで取り上げられて紹介された(2010)。
②Chromosome segregation machinery and cancer. Cancer Sci.100: 1158-1165. 2009
染色体動態を制御するメカニズムについて最新の知見をまとめ、癌細胞における染色体不安定性との関連性について考察したレビュー。田中耕三教授との共同執筆。
③The complete removal of cohesin from chromosome arms depends on separase. J. Cell Sci. 120: 4188-4196. 2007
遺伝情報の伝搬は染色体の分配によって達成される。染色体の構築は、コンデンシンおよびコヒーシンといった複合体の“分子メタボリズム”(クロマチンへの結合と解離)が基盤となり進行し、その分子動態の制御においてはAurora Bキナーゼが重要な役割を担っていることを見出した。
④Histone H3 serine 10 phosphorylation by Aurora-B causes HP1 dissociation from heterochromatin. Nature 438: 1176-1180. 2005
ある自己免疫疾患患者に由来する血清が、分裂期の染色体を特異的に染色し、その抗原がH3分子で、9番目のリジンのトリメチル化と10番目のセリンのリン酸化の両方の修飾を受けているものであることを示した。この修飾の発生はメチルトランスフェラーゼSuv39hおよびAurora-B依存的であり、染色体のセントロメア近傍のヘテロクロマチンに起こる。通常、大部分のHP1がM期に染色体から解離するが、H3の10番目のセリンのリン酸化が阻害されるとHP1はM期を通して染色体に結合したままとなった。したがって、Aurora-BによるH3のリン酸化は、ヘテロクロマチンからHP1やおそらくほかのタンパク質を取り除く「メチル化・リン酸化スイッチ」機構が存在することを示した。
⑤Aurora-A and an interacting activator, the LIM protein Ajuba, are required for mitotic commitment in human cells. Cell 144: 585-598. 2003
Aurora-AはG2期から中心体に集積し、その活性がM期への移行に必須であることを見いだした。このAurora-Aの活性化は、そのリン酸化基質であるAjubaという分子との相互作用によって促進される。細胞分裂の進行はCyclinB1-Cdk1の活性が中心的な役割を持つと考えられ、その最初の活性化は中心体で起こるとされているが、本論文はG2期後期の中心体におけるAurora-Aの活性化が、続くCyclinB1-Cdk1の活性化の前提となるイベントであることを証明した。
キーワード
細胞増殖、細胞周期、細胞分裂、染色体動態、染色体不安定性、Aneuploidy、細胞生物学、分子生物学、分裂期キナーゼ、チェックポイント
分野問い合わせ
- thirota*jfcr.or.jp(「*」を「@」に変換してください)
- TEL 03-3570-0446
- FAX 03-3570-0354