単位発生にみる雄雌ゲノムの駆引き | |
河野 友宏 (東京農業大学応用生物科学部バイオサイエンス学科) | ■要旨 哺乳動物では、雌あるいは雄ゲノムのみから構成される単為発生胚は妊娠の初期に致死となる。これは、生殖系列において性特異的にDNAメチル化修飾が行われ、父母アレル特異的に発現するインプリント遺伝子が存在することとなり、雌雄ゲノム間で機能上の決定的な差異が生じた結果に起因する。ゲノムインプリンティングが、単為発生を完全に阻止していることを検証するための最も直接的な証拠は、インプリント遺伝子発現を改変し雌性ゲノムのみから個体を発生させることである。我々は、一つの挑戦として、卵子の再構築および遺伝子欠損マウスの利用により、包括的なインプリント状況の改変を誘導し、単為発生胚の発生に対する影響を10年にわたり検討してきた。ここでは、単為発生マウスの作出の試みを紹介しながら、生殖細胞系列におけるメチル化修飾およびゲノムインプリンティングによる個体発生制御について考察する。 ■参考文献(番号をクリックすると、各論文ページへリンクします)
■学歴 1982年 東京農業大学大学院農学専攻博士後期課程修了 1993-1994年 英国MRC客員研究員 東京農業大学助教授を経て1996年教授、2001年より現職。 個体発生とエピジェネシスとの関連を、単為発生胚およびクローンを題材に研究している。 |