• TOP
  • PICKUP
  • 大学院特集2016 女子大学院生奨励賞

ピックアップ

  • Interview

大学院特集2016 女子大学院生奨励賞

2016.5
東北大学病院老年科
石木 愛子さん

どのような研究テーマで七星賞を受賞されたのですか?

アルツハイマー病の研究です。アルツハイマー病の患者さんでは、脳の中にタウという原因タンパク質が蓄積するのですが、そのタウをPETによって可視化するという研究テーマで受賞しました。PETで検出できる、タウに結合する薬剤(トレーサー)を患者さんに投与して脳画像を撮影し、トレーサーが集積していたら、タウが蓄積していることになります。このことを利用すれば、タウの蓄積と認知症の進行度の関係性などが明らかになる可能性があります。今回はトレーサーの集積と認知機能の経時的変化を発表しましたが、これは関連する領域の研究テーマとしては、世界初でした。

どうして大学院に進学しようと思われたのですか?

出身は岩手県で、弘前大学の医学部を卒業した後、地元である岩手に戻り初期研修を受けました。初期研修が終わるタイミングで東日本大震災が起き、その後2年間被災地である岩手県陸前高田市で一般内科医として働きました。それまでは消化器内科医になりたいと考えていたのですが、被災地、しかも高齢化率が高い医療過疎の地域に行ったら、見る人見る人高齢者ばかりだったんですね。自分が目指していた臓器別医療の限界を感じて、高齢者医療について勉強したいと考えるようになりました。地元である東北地方で高齢者医療を勉強できるところを探し、東北大学に老年医学分野を見つけて大学院に進学しました。

どのような大学院生活を送りましたか

日々、星陵地区の東北大学病院で臨床の患者さんを診ながら、青葉山地区のサイクロトロン・RIセンターで被験者の方のPET脳画像を撮影し、また病院に帰ってくるという研究生活でした。臨床業務も研究も同時に行わないといけないので非常に忙しかったのですが、クリニカルクエスチョン、臨床に即した疑問が閃きやすい環境だったと思います。後輩へのアドバイスですが、プロテクテッドタイムを確保できる環境が望ましいと思います。その間は病棟や外来からコールが来ないで、研究に集中できる時間ですね。そういった時間がないと、どうしても臨床が優先になり、研究が後回しになってしまいます。時間の使い方を上手に管理すれば、充実した臨床と良質な研究が両立できると思います。

受賞した感想をお聞かせ下さい

誇らしく面映ゆい気持ちです。私などでいいのだろうかと思いますが、その分、責任を感じます。今回は第一回ということで、七星賞のことがまだ広まってないと思います。優秀な女性研究者の方はたくさんいらっしゃるはずですので、ぜひ、多くの方に応募していただき、もっともっと女性の人達が交流できる場になればと思います。産学連携でネットワークができた企業の女性研究者の方がいるのですが、その方が私の受賞のことを知り熱い激励のメールを下さいまして、本当に挑戦してよかった、これからも頑張らなきゃいけないと思いました。

女子学生へのアドバイスはありますか?

女子学生に限りませんが、最近、大学院離れが危惧されています。私が大学院に進学しようと思ったきっかけの一つは、被災地の病院で一緒に働いた先生が論文を書くように奨励してくださったことです。その時は、論文なんてどうやって書くの?研究ってどうすればいいの?と、皆目わかりませんでしたが、なんとか日本語で論文を書き上げました。そこで感じたことは、どういう状況に置かれていても、自分のクリニカルクエスチョンを感じる力と、データを集め解析して論文として文章にするという能力があれば、どんな場所にいても日本、そして世界に自分から発信できるということです。ただし、私にはスキルがなかったので、それを取得したいと思って大学院に進学しました。
大学の外で働くことは医者の世界ではざらにありますし、女性であれば、いったん家庭に入ったり仕事の配分を下げたりしなければならないことも多いと思います。そういう時でも知識と技術があれば、いつでもどこででも広い世界と繋がっていられることは本当に素晴らしいことだと思います。大学院生活で得た知識を活かして、これからもネットワークを広げていきたいと思っています。

将来のキャリアパスについてお伺いしたいのですが

まだ自分にとっても、すごく難しい問題です。ですので、今回の受賞を機会に、先輩方のアドバイスをぜひ聞きたいと思っています。個人的には細々とでも、着実に研究を続けていきたいですね。現在、老年医学分野自体が日本でそれほど多くあるわけではありません。高齢者医療が重要だと言われている割には、専門に研究している部門が少ないので、研究を続けながら結果を広く臨床の現場に還元していく、そういう仕事をしていきたいと思っています。

※所属や職名などは、記事発表当時のものとなっております。

ページトップへ戻る