東北大学大学院医学系研究科・医学部

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質の高い研究環境を求め、遠方から独自の研究生活スタイルを構築
研究の視点で臨床を見つめなおす

インタビュー
障害科学専攻
内部障害学分野 在校生
佐藤 聡見
Toshimi Sato
学年:博士後期課程3年
出身地:福島県(在住)
2020.05.29

佐藤 聡見

世界のトップランナーのもとで研究を一から学びたい

●大学院に進学しようと思った理由を教えてください

理学療法士として病院に勤務を始めてから独学で臨床研究を行っていたこともあり、研究の質を高めるために、いつかは大学院に進学し専門的な知識を習得したいという思いを持っていました。ただし、当時は子供も生まれたばかりで学生生活と家庭や職場とを両立させるイメージがつかず、進学への一歩が踏み出せずにいました。そのような状況の中、学会で、内部障害学分野教授の上月先生の講演をお聞きする機会があり、その内容は腎臓疾患に対するリハビリテーションの効果に関するものでした。従来リハビリテーション分野では、腎臓の障害は介入を進めるうえでリスク因子とされ合併者にはなかなか積極的な介入が行えないという常識がありましたが、先生のお話はそれを覆す内容でした。「強度を適切に設定して介入することで運動療法は腎臓機能を改善する」現在はこれがリハビリテーション分野のスタンダードな考えになっていますが、当時は非常に新規的かつ衝撃的で聴講しながら胸が高鳴るような感覚であったのを今でも覚えています。そして、そのメカニズムの解明は世界で東北大学がトップランナーとして研究を進めていることも知りました。是非このような環境に身をおいて一から研究を学びたいという思いから、進学への意思は固まり、研究室の門をたたきました。上月先生からは、同じような境遇の社会人学生も在籍しており、県外からの学生を受け入れる体制も整っていることを教えていただき、安心して進学を決意しました。

生活スタイルを構築し、多くのことを吸収

●進学してみて、どうでしたか?

本当に良かったと思います。東北大学は、日本の大学院で初めて障害科学という専攻分野をつくった歴史があり、リハビリテーション医学に関する知識を科学的な視点で深く学ぶことができます。特に私たちの研究室では、基礎研究を行なう学生と臨床研究を行なう学生がそれぞれ多数在籍していますので、お互いの研究内容について議論する中で学べることが非常に多くあります。また、研究室で学んだ内容から臨床を見つめ直すこともできますので、患者さんの診療にあたる際にもより深くより広く考察する習慣がついてきているのを実感しています。
進学後は、研究を生活の中心において、家庭や仕事と両立しなければいけませんので、生活スタイルは入学前から一変し慌ただしい毎日を過ごしていますが、毎日がとても充実しています。もし一歩を踏み出せずに留まっていたらとても勿体ないことをしていたと思います。大学院のように国際的なフィールドで活躍されている多くの先生方から科学的な視点や倫理観、専門知識を直接学べるような環境はなかなか他にはないと思います。また、そのような先生方の仕事の姿を近くで拝見できることも大きなメリットと感じています。研究に限らず、時間の使い方や物事の捉え方、所作など勉強になることは限りないです。

●研究テーマとそれを選んだ理由を教えてください

現在取り組んでいる研究テーマは、「急性心筋梗塞発症後の身体活動量と腎機能の経時的変化との関係性」についてです。これまで心疾患の患者さんと長くお付き合いする中で、患者さんの予後や生活の質をより良くするために、主要な臓器である「心臓」の病態管理だけではなく、他の合併症や身体機能、生活習慣など包括的な管理が非常に重要であることを実感していました。特に心臓と非常に密接な臓器とされる腎臓の機能は心疾患患者さんの予後を大きく左右することが分かっています。そこで、当内部障害学分野の研究室がこれまで基礎研究にて報告を重ねてきた「運動の腎臓機能改善効果」に着目し、実際の心疾患の患者さんにもこれを応用し、腎臓の機能改善を図ることはできないかと考えました。その後、指導教官である上月正博教授から多くのご指導をいただきながら研究方法や倫理的な配慮、臨床現場との調整方法など詳細な研究計画を練って現在のテーマを構築していきました。

多彩なメンバーから多くの視点や知識を吸収

●研究室の雰囲気はどうですか?

雰囲気はとても良いです。内部障害学分野の研究室をお尋ね頂ければお分かり頂けるかと思いますが、研究室のメンバーは指導教官や秘書さん、学生を含め皆さん暖かく、何か相談事がある際には熱心に話を聞いてくれます。また、毎年多くの留学生を受け入れていることもあり国際色豊かであることも特徴かと思います。そして、研究室メンバーは、医師、看護師、理学療法士、作業療法士、臨床検査技師、社会福祉士、教育関係者など様々なバックグラウンドを持つ方々が集まっていますので、研究を進めるうえで非常に多くの視点や知識を学べることも魅力の一つかと思います。

質の高い教育・研究環境

●東北大学の良いところは?

まずは、何より教員や所属研究者の質の高さです。東北大学には、国際的なフィールドで質の高い研究業績を積んでいる先生方が各分野多数いらっしゃいますので、そのような先生から直接指導を受けることができるということは非常に大きなメリットだと思います。研究の内容が多岐に渡る場合は、研究室を跨いで各専門分野の先生方から指導を受けている学生もいます。また、東北大学は研究するための支援や環境がとても充実しています。特に私のように遠方に住む学生でもオンラインを通じて受けることができる授業を選択できたり、大学図書館へのリモートアクセス環境があったりと安心して社会人学生生活が送れます。私の研究室では、通学日以外でもメールを通じて研究指導や論文添削等を頂いており、遠方から通学する学生としては大変有難いです。そして最後に、倫理的な教育支援が充実していることです。研究を進めるにあたって知識や手技の習得はもちろん大切ですが、研究の倫理感を育むことは最も重要かと思います。研究室内の直接指導はもちろん、医療倫理学の講義や大学内の倫理委員会からの指導やアドバイスを通して多くのことが学べます。大学院生活を通して学んだ研究倫理感(Honesty; 正直、Trust; 信頼、Fairness; 公正、Respect; 敬意、Responsibility; 責任、Courage; 勇気)は、今後の研究人生において大変重要な核になると思っています。

学業・仕事・家庭の両立

●今後の目標や抱負を教えてください

まずは、現在の博士論文研究を無事終了し学位を取得することが短期目標となりますが、重要なことはその先であると思います。大学院修了後もこの5年間で学んだ知識や技術、そして臨床研究のノウハウを活かし、今後自律的により良い研究を構築し患者さんや社会に役立つ知見を継続的に発信していきたいと考えています。また、大学院修了後は大学で教鞭をとる予定となっているので、東北大学での学びをもとに今後教育的な立場としても研究者の育成や指導に関われるよう精進していきたいと思います。

●休日の過ごし方や、星陵キャンパス周辺のおすすめスポットを教えてください

社会人大学院生として県外から通学をしておりますので、通学日に職場の休日を当てています。日曜日も基本的には研究データの解析や論文執筆等を行っていますが、6歳と4歳の2児の娘がいますので、少しでも家族との時間をつくれるよう午前に集中して学業を終えて午後は公園で子供たちと遊ぶなど、メリハリをつけた生活を送れるよう心掛けています(実際にはなかなか難しい時もありますが(笑))。子供たちと過ごす時間は、研究のことは一切忘れてリフレッシュしています!

mylife

現在も県外でフルタイムの仕事をしていますので、日中は臨床業務を行っています。そのため極力就業時間内に業務を終了させるよう時間の使い方を大切にしています。東北大学は、大学院生が学外からも大学図書館にアクセスできる環境が整備されていますので、就業前の朝の時間や昼休憩の時間を利用して論文のチェックをしています。また、我が家はまだ幼い子供がおりますので、家庭との両立も重要になります。私の場合は、毎日就業後一旦帰宅して子供の入浴や食事等を済ませ、再度職場に来て研究データの解析や論文執筆をすることで何とか学業・仕事・家庭のバランスをとっています(どうしても帰宅時には日付が変わってしまうことも多いのですが、生活のスタイルとして定着するといつの間にか慣れてしまうものです(笑))。研究生活のバランスを保つには、家庭や職場の理解が重要になってきますので、より充実した学生生活を送れるよう研究生活のスタイルを周囲の方々と相談しながら構築していくことも大切かと思います。

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PROFILE
障害科学専攻
内部障害学分野 在校生
佐藤 聡見
Toshimi Sato

福島県立福島高等学校卒業後、山形県立保健医療大学保健医療学部理学療法学科を経て、東北大学大学院医学系研究科障害科学専攻博士前期課程 修了。平成19年より般財団法人脳神経疾患研究所附属総合南東北病院 リハビリテーション科入職(現在に至る)

●受賞歴・その他

2019年3月 PLOS ONE誌に投稿した論文「Association between Physical Activity and Change in Renal Function in Patients after Acute Myocardial Infarction」に関する記事が福島民報朝刊に掲載
2020年2月 第10回日本腎臓リハビリテーション学会Young Investigator Award会長賞受賞

現在、臨床経験14年目の理学療法士です。専門分野は内部障害に対するリハビリテーションで、心臓リハビリテーション指導士の資格を取得し、主に心不全や急性心筋梗塞、心臓血管外科術後の患者さんに対するリハビリテーション診療に従事しています。
私生活では、2児の娘をもつ父親で、研究・仕事・育児の両立に奮闘中です。