東北大学大学院医学系研究科・医学部

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恵まれた研究環境・制度を活用し
積極的かつ自律的な大学院生活を

インタビュー
医科学専攻
免疫学分野 助教
河部 剛史
Takeshi Kawabe
2020.05.29

河部 剛史

免疫システムの司令塔「Tリンパ球」の全容を解き明かす

●研究の概要を教えてください

私たちの体内にウイルスや細菌などの病原体が侵入すると、免疫システムはこれらの外来異物を検知し、生体内からこれを排除しようとします。免疫系の中でも「Tリンパ球」と呼ばれる細胞集団は、自己と非自己を識別し有害な非自己抗原のみを選択的に排除する、いわば免疫反応の司令塔としての役割を担っています。私たちの研究室では、このTリンパ球がいかにして生体内で保たれるのか、恒常性(ホメオスタシス)のメカニズムの解明に向けて研究に取り組んでいます。
特に、私たちは最近、Tリンパ球の一集団として非常に特殊な性質を持つ細胞群を発見し、これを「MP細胞」と命名しました(Sci Immunol 2017)。MP細胞は、Tリンパ球であるにもかかわらず自己抗原を認識する能力を有し恒常的に活性化状態を呈する一群として、現在注目を集めています(Nat Rev Immunol 2018)。私たちは、同細胞の産生・維持・活性化機構、生理学的ならびに病理学的意義について、あらゆる方面から精力的に研究を行っています。

独立したテーマで自由闊達に

●研究室はどのような雰囲気ですか?

研究室のメンバーは教員、博士ならびに修士課程の大学院生、学部学生からなっています。学生はそれぞれが独立した研究テーマを持ち、自由闊達な雰囲気の中、各自のびのびと研究活動を行っています。研究室員は多くはありませんが、研究室にはすぐれた実験環境・設備が整っており、あらゆる免疫学実験を遂行可能です。また、実験には失敗がつきものですが、そのような場合には教員や先輩の大学院生などに気軽に相談できるような雰囲気づくりを心掛けています。

●学生にどのようなことを期待しているかなども含め、進学希望者へのメッセージをお願いします

大学院への進学の理由は人それぞれだと思いますが、優れた研究を行うためには、自ら疑問を設定し自らそれに取り組む姿勢、すなわち自発性が最も大切になってきます。大学院で学べる期間は限られていますから、その間にできるだけ多くのことを吸収し成し遂げられるよう、進学希望者の皆さんにはぜひ積極的・自律的に大学院生活を送っていただきたいと願っています。

●修了後はどのような進路がありますか?また、修了生はどのように活躍していますか?

研究の道に進む場合、国内外の大学・研究所へ留学する方が多いと思います。それ以外の場合には、病院や企業に就職する方もいます。また、東北大学医学部にはMD PhDコースというものがあり、医学部在学中に大学院に入学することも可能です(その場合、大学院修了後は医学部に復帰し、医師免許を取得します)。いずれの道に進むにせよ、卒業後多くの方々が日本や海外で活躍されています。

●病院や企業に勤務しながらの修学は可能でしょうか?

可能です。大学院生活において最も大事なことは、新たなことを学びたい、未解明の謎を解き明かしたいという意欲です。一方、一定の研究成果を成し遂げるためには、それなりの時間が必要なこともまた事実です。ですから、病院や企業に勤務しながらの修学の場合は特に、教員と事前に綿密に打ち合わせるなどして、研究計画をよく練っておくことが大切かと思います。

アドバイザー制度やリトリート

●東北大学の良いところは?

優れた研究環境が整っており、あらゆる研究を行うことが可能です。様々な分野における世界水準の研究室が数多く存在しており、各人の努力次第で、トップジャーナルへの筆頭著者としての論文報告、主要国際学会での発表も可能です。また、学生個々に対して十分な教員数が確保されており、きめ細やかな指導を受けることができます。加えて、東北大学はアドバイザー制度を導入しており、学生は、所属研究室とは別の教員にアドバイザーとして進路その他の様々なことについて助言を受けることが可能です。
そして、医学系研究科では「リトリート」と呼ばれる大学院生の研究発表会が毎年開催されており、異なる研究室の学生同士の交流も盛んです。外国人留学生も多く在籍しており、異文化交流も広く行われています。こうした「横のつながり」を大切にできるのも、東北大学ならではの利点といえます。
さらに、東北大学は東北地方の中心都市・仙台に位置します。仙台は緑豊かな学術・文化都市で、食べ物もおいしく、交通網も発達しており、極めて恵まれた環境で学生生活を送ることができます。と同時に、他の大都市から立地的に独立しており、過当競争にさらされることなく自らの研究に打ち込むことが可能です。

column

昨年(2019年)まで5年半、米国NIHに博士研究員として勤務しておりました。NIHは首都ワシントンDCの近郊、メリーランド州ベセスダという都市にあり、緯度は仙台とほぼ同じです。気候も仙台と似ていますが夏はやや暑く冬はやや寒く、四季ははっきりしており、春は桜がきれいです。食べ物は全般においしく、きちんとした日本料理店も多くあります。
NIHは予算規模でも研究員の規模でも世界最大の医学研究施設であり、これまでに教科書を書き換えるような大発見をしてきた多くの先生方と一緒に仕事をすることができました。近年、日本における研究環境が飛躍的に向上し、研究者になるための要件として、以前ほど海外留学の必要性が叫ばれなくなってきています。しかし、「自由」や「多様性」などの科学に不可欠な考え方を学ぶという意味で、今日においても海外留学は極めて重要な機会であり続けていると私は思います。NIHでの得難い体験が私にそのことを学ばせ、研究者としての今の私を形作っています。

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PROFILE
医科学専攻
免疫学分野 助教
河部 剛史
Takeshi Kawabe

2007年東北大学医学部卒業。初期臨床研修修了後、東北大学大学院医学系研究科に入学、免疫学分野にて基礎免疫学を学ぶ。2013年同修了(博士(医学)取得)。東北大学東北メディカルメガバンク機構・助手を経て、2013年より米国立衛生研究所(NIH)国立アレルギー感染症研究所(NIAID)に博士研究員として勤務、T細胞免疫学に引き続き従事する。2018年より現職。2019年よりNIAID客員研究員を兼任し、共同研究を推進している。