東北大学大学院医学系研究科・医学部

大学院説明会
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大学病院の臨床検査技師として検査の質の向上を目指し、
仕事と学業の両立を実現

インタビュー
保健学専攻
臨床生理検査学分野 卒業生
松本 彩那
Ayana Matsumoto
卒業年度:2019年度
卒業学位:修士
現在の職場・会社名:東北大学病院
現在の役職:臨床検査技師
2020.05.29

松本 彩那

幅広い知識を獲得し、基礎を理解したい

●大学院に進学しようと思った理由を教えてください

理由は大きく分けて3つあります。
1つ目は、学部時代の約半年間の卒業研究では満足のいく研究結果が得られず、その研究を進展させたいと思ったからです。
2つ目は、卒業研究の過程で不整脈を中心とする循環器疾患についての知識不足を痛感したからです。卒業後は病院で生理検査担当の技師として勤務したいと考えていましたので、大学院に進学し、循環器疾患はもちろん、臨床検査に関する幅広い知識を獲得したいと思いました。また、保健学全般の基礎を理解することで、検査で得られる結果をさまざまな生体現象と関連付けて考察することができ、臨床における検査の質の向上につながると考えました。
3つ目は、臨地実習での経験です。実際に臨床の場で検査に携わった際、座学だけではなく、型にはまらずに臨機応変に対応することが非常に重要だと感じました。大学院での研究を通して、柔軟な思考力や的確な判断力・行動力を養いたいと思いました。

●進学してみて、どうでしたか?

学部とは全く異なり、座学の授業はほとんどなく、研究メインの生活がとても新鮮でした。知識も技術も未熟なため、最初は納得のいくデータを得られず苦悩しましたが、結果が出て徐々に傾向が見えてくると、やりがいや面白さを感じることができました。
大学院生活で最も印象に残っているのは学会への参加です。自らの研究活動について発表するだけでなく、会場では基礎から臨床までたくさんの発表を聞くことができました。英語の発表も多く、非常に良い刺激を受けました。実際に私も英語で口述発表する機会をいただけたのは、この先も強く記憶に残る経験となりました。大学院で学んだ研究の大まかな組立て方や、論文の読み方などは、これからも役立っていくと思います。
勤務と研究の両立は大変なこともあり、最初はとても不安でしたが、研究室の方々の協力や、オンライン授業システムなどの活用により、無事に2年間で修了することができました。周囲へ感謝の気持ちでいっぱいです。

きっかけは祖母への思い

●研究テーマとそれを選んだ理由を教えてください

私たちの研究室では心筋におけるカルシウム動態に注目した研究を行っています。私は「グルコース値の上昇が心筋の収縮と弛緩特性に果たす役割の検討」というテーマで研究しました。
糖尿病患者では、しばしば収縮機能の保たれた心不全(HFpEF)が発生します。しかしながら、糖尿病でHFpEFが生じるメカニズムは依然として不明な点が多く存在します。一方、グルコースは心筋細胞におけるカルシウム動態に影響を与え、心不全や不整脈の一因となる可能性が示唆されています。そこで私たちは、糖尿病モデルラットを作製し、グルコース値の上昇が心筋の収縮と弛緩特性に与える影響や、その機序について検討を行いました。
私がこのテーマを選んだ理由は、糖尿病患者における心機能障害の発生機序をこれまで以上に解明し、世の中に貢献したいと感じたからです。私の祖母は糖尿病を患っており、治療に励む姿を私はそばで見ていました。以前、祖母は私に「将来は医療関係の職に就いて糖尿病治療を発展させてほしい」と言っていました。私がこの疾患の研究に取り組むことで、少しでもその思いをくみ、また、同じように感じている多くの糖尿病患者に貢献したいと考えるようになったのが最初のきっかけです。

多様な仲間たちと支え合いながら

●研究室の雰囲気はどうでしたか?

私たちの研究室は各自が単独で実験を行う形ではなく、全員で協力しながら複数のテーマの実験を行う形をとっていました。大学院生だけでなく卒業研究中の学部生や先生も交えて、こまめに相談しながら日々の研究を進めていくことで、多様な意見を取り入れることができましたし、さまざまなテーマについて広く触れられて知識が深まったと思います。そのように普段から密にコミュニケーションをとっていたため、実験以外の場面でも全員でご飯に行ったり、誕生会をしたりと、和気あいあいとした雰囲気でした。もちろん研究がうまくいかずに苦悩する場面も多々ありましたが、そのような環境の中で協力し合いながら充実した大学院生活を送ることができました。また、私たちの研究室では、学業と両立して病院や検診センターなどで臨床検査技師としてアルバイトをしている大学院生も多く、様々な臨床の場の話を聞くことができ、とても刺激を受けました。

●東北大学の良いところは?

東北大学の建学の理念である研究第一主義のもと、レベルの高い環境の中で研究を行うことで、就職先を病院や検査センターだけでなく、視野を広げることができるところです。授業や分野によっては、医療系学部に留まらず、農学部系、理学部系、生命科学部系、工学部系、文系学部や社会人、留学生まで、多様な人々と関わることができ、刺激を受けながら自分自身が大きく成長できる場になると思います。
また、インターネットスクールや夜間開講科目が充実しており、研究との両立がしやすい点や、医学系研究科内の他専攻科目からも単位を取得可能であること、多職種との連携医療や医学全体を学ぶことができることも利点です。

「常に探究心を持って」

●現在のお仕事について教えてください。また、大学院時代のご経験はどのように活かされていますか?

現在は大学病院で臨床検査技師として生理検査を担当しています。具体的には心電図検査や呼吸機能検査、睡眠時無呼吸検査などに携わっています。
大学院時代の研究を通して、「なぜそうなるのか」「こうしたらどうなるか」などと常に探究心をもって業務に臨む習慣が身についたと思います。私の研究内容は心電図や心エコーなど循環生理学の基礎となる部分でしたので、これから働いていく上で役立っていくと思います。また、学会発表などの経験は、臨床データをまとめた発表に活かしていきたいと思っています。
大学院時代は心電図検定を受検したり、臨床検査技師としてクリニックでアルバイトをしたりしました。その経験は現在の業務につながっており、非常にいい経験ができたと思っています。

●今後の目標や抱負を教えてください

担当できる業務内容を増やすだけでなく、既に担当している業務においては、さらに技術や知識を向上させ、2級臨床検査技師や超音波検査士のような各種認定資格の取得も目指したいと思っています。
また、大学病院で働く身として、研究や教育にも取り組んでいきたいと思っています。臨床データを用いた研究は、基礎研究とは異なる部分が多々ありますし、日々の検査業務を担いながらというのはとても大変だと思いますが、大学院での経験は必ず役立っていくと思います。
その他では、英会話を勉強したいと思っています。海外旅行はもちろんですが、大きな学会に参加した時や外国人の患者さんを対応する時に、自分の英語力の無さを痛感します。聞き取りができても、自分が言いたいことをなかなか伝えられず、とてももどかしい気持ちになります。そのようなことが少しでも減るよう、頑張りたいと思います。その際まだどうしても恥ずかしがってしまうのも克服したいと思っています。

column

この写真は定禅寺通りで撮影したものです。定禅寺通りといえば、毎年冬に開催される光のページェントと呼ばれるきれいなイルミネーションがとても有名ですが、他にも春夏秋冬様々なイベントがあります。すずめ踊りのような伝統的で活気あふれるイベントもあれば、コーヒーフェスやジャズフェスといった、のんびり過ごせるイベントも一年を通してたくさん開催されています。どなたでも必ずお気に入りのイベントを見つけることができると思います。周囲にお店もたくさんあり、ケヤキ並木の中をただお散歩するだけでもとても気持ちが良いので、天気がいい休日にぜひ歩いてみてください。
最近は外出の難しい日々が続いているので、家でできる趣味として、私の地元の伝統工芸品である「こぎん刺し」を始めました。

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PROFILE
保健学専攻
臨床生理検査学分野 卒業生
松本 彩那
Ayana Matsumoto

青森県弘前市出身。2018年3月東北大学医学部保健学科検査技術科学専攻卒業、臨床検査技師免許取得。同年4月大学院医学系研究科保健学専攻へ進学と同時に東北大学病院で非常勤職員として勤務。2020年3月修士課程を修了。現在は東北大学病院で臨床検査技師として生理検査業務に従事。

●関連リンク

Mechano-electric and mechano-chemo-transduction in cardiomyocytes
臨床生理検査学分野