東北大学大学院医学系研究科・医学部

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目指すのは人の命を救う生物統計家

インタビュー
公衆衛生学専攻
医学統計学分野 在校生
伊達 翼
Tsubasa Date
学年:修士2年
出身地:大阪府
2020.05.29

伊達 翼

得意分野を医療に生かす

●大学院に進学しようと思った理由を教えてください

大学で専攻していた統計学の知識を生かして、病気の原因や治療法の解明につながるような研究を行いたいと思ったからです。大学に進学する際、「ビッグデータ」をテーマにしたニュースや記事を目にする機会が多く、私たちの生活の様々なところに統計学の知識が活用されていることを知り(例えば、YouTubeやAmazonの「あなたのおすすめ」欄)興味を持ち始めました。統計学は「ある1つの母集団に対してその性質を調べたり、また収集したデータから大きな未知のデータや未来のデータを推測」する学問です。私は特に「未来を推測することができるところ」に強く魅力を感じました。大学の卒業研究では「食事と健康について」どのような食事が健康(病気)に影響を与えるのかを調べました。疾患によっては身体に良いと思われている野菜や果物が悪影響を及ぼす可能性があることも分かりました。またその食材をどのくらい摂取すると何%の確率で罹患するのかも予測しました。
また医学分野には中学生の頃から関心を抱いていました。特に治療法がなく副作用の強い薬を飲み続け苦しい思いをしている患者や、病気で今まで通りの生活ができず悩んでいる患者に対して少しでも役に立ちたいという思いが大学生になって更に強くなりました。そのため大学時代に興味を持って専攻していた統計学の知識を医学分野で活用し、将来患者の命を救えるような生物統計家になりたいと思い進学を決意しました。

●進学してみて、どうでしたか?

分野の教授や講師を始め、多くの方々に恵まれ、充実した学生生活を送っています。大学生の頃と比較し、勉強に取り組む時間や得られる知識の量が増えました。また研究や課外活動を通して大学院外の教授や講師、現役の社会人の方々と交流する機会が多く、毎日貴重な時間を過ごせていることの幸せを実感することができています。修士1年では統計学だけでなく、疫学、倫理学など医学に関わる幅広い分野の講義を受講することができるため、数学系の学科に所属していた私にとって大変勉強になりました。更に講義で知り合った他分野の方と友達になり、専門的なことやプライベートなことまで様々な会話をし、交流を深めることができたことも良かったなと思います。今後も更に勉学に取り組み、修論に向けて邁進していきたいと考えています。

予後予測で患者と医師のコミュニケーションをスムーズに

●研究テーマとそれを選んだ理由を教えてください

研究テーマは、「Fractional Polynomialモデルの改良と進行がん患者の検査データのみを用いた予後予測精度評価について」です。現在、終末期のがん患者に対して、治療を継続することより余生を楽しく家族と暮らせるようにサポートする緩和ケアが注目を集めています。しかしながら、医者が進行がん患者の生存日数を診断する際、実際の日数よりも長くまたは短く見積ってしまうケースが多く問題視されています。
FPモデルは予後予測モデルの1つであり、モデルの構造がシンプルで数学的に扱いやすいことが特徴です。しかし、FPモデルの解析プロセスには経験的な所見によって複雑に設定されたものがいくつかあり、モデルの適合度が低下してしまう可能性があるのではないかと考えました。そのため、私はFPモデルをよりフレキシブルな設定に改良し、患者の予後予測精度の向上を目指すことにしました。
また、医者の診断結果や患者の主観的データはバイアスを含んでいる可能性が高く、解析結果の解釈が難しくなることがあります。そのため、患者の検査データのみを用いて、改良したFPモデルで解析を行うことにしました。
予後予測精度を高めることによって、終末期患者と医者とのコミュニケーションをスムーズにし、患者のコスト面や精神面を支えることができるのではないかと考え、上記の研究テーマにしました。

積極的な情報共有と交流で互いに意識を高め合える研究室

●研究室の雰囲気はどうですか?

自分の計画に合わせて自由に勉強を行え、悩み事や分からないことがあれば分野に所属している方々が優しく相談に乗ってくださるので大変温かく居心地の良い研究室だなと感じています。我々の分野では定期的に「勉強会(分野の皆様と幅広い臨床試験について触れながら理解を深めています)」と「抄読会(研究の進捗状況についてプレゼン形式で分野の皆様と共有します)」が行われます。そこでは、分野の研究員が集まり情報共有を積極的に行い、各々の研究のレベルや向上心を高め合っています。また、昨年度は分野飲み会や合宿など様々なイベントを通して絆を深めました。今年度はcovid-19の影響のため、同じ場所に全員が集まって顔を合わせて談笑する機会はまだないのですが、一刻も早く感染症が終息し皆さんとお会いできることを楽しみにしています。

●東北大学の良いところは?

東北大学(星稜キャンパス)「公衆衛生学」の良いところは8分野の横連携の強さと研究に活用できる情報量の豊富さだと思います。その理由は東北メディカル・メガバンク機構や東北大学病院臨床研究推進センターなどの協力体制が構築されているからです。より専門的な内容の勉強や研究が実現できる最適な環境であると思います。
また公衆衛生学専攻では、大学院生を中心とした学生主体の研究発表会が行われます。研究の成果を発表し、参加者同士で活発な議論が繰り広げられます。幅広い専門知識を学習できることはもちろん、教授や学生との交流を深める事もできます。

●今後の目標や抱負を教えてください

今後の目標は、「自ら考え行動に移し、何事にも挑戦すること」です。現在私は、修士二年生となり研究や就職活動を行っています。これらに共通して大事なことはクリエイティブな発想と、様々なことを経験することだと思います。新規性があり、社会にインパクトを与えるような研究にはやはり、突発的な発想が必要ですし、研究につまずいた時にすぐにリカバリーするためには今までの経験と知恵が必須です。更に就職活動での面接では他人とは違った考え方、ずば抜けた創造力が求められ、今までのその人を特徴付けるような経験談が評価されます。
今後情報社会が拡大していく中で、どのようなことを考え、行動するのか、そしてそこから何を学び、どのように次に移していくのかが重要になってくると考えています。私は、生物統計家として現在治療法もなく苦しんでいる患者や病気になったことで今までのような生活を送れず悩んでいる患者を救いたいです。そのために今後、研究や仕事を通して自分には何ができるのか、そしてそれはどういうところに生かされるのかを考え、積極的に挑戦していきたいと思います。

●進学を考えている方へのメッセージをお願いします

私は2019年の3月に東京の大学を卒業し、4月から仙台に引越し、東北大学大学院に入学しました。そのため仙台での生活は初めてで、慣れるか心配でした。しかし仙台は、「空気が綺麗」で「食材が豊富」、そして「東京を感じさせるようなお店」が多く、今までの生活とギャップを感じることなく充実した生活を送ることができています。現在東京や大阪など大都市の大学生で、東北大学大学院に進学したいと思っている方も多いと思います。そして中には新しい場所での生活に不安を抱えている方もいるのではないでしょうか。そんな方にぜひこの言葉をお伝えしたいです。『全く問題ない!むしろ最高!』

mylife

休日はよくカフェを訪れ、温かいコーヒーとお菓子を食べゆっくりリラックスすることが大好きです。私がカフェを探す時のポイントは「学校から徒歩で通える」、「個人で経営されている」、「建物や内装の独創的なデザインに魅かれる」カフェであることです。
そこでこの1年間で最もお気に入りのカフェを紹介します。
『meeting house』です。星稜キャンパスから徒歩で15分程度のところにあります。閑静な住宅街にあり、倉庫をリノベーションして建てられた店の外観は、引き込まれそうな独特な雰囲気を醸し出しています。更に奥深い香りのカフェラテと手作りのお菓子がうまくマッチしていて、何度も足を運びたくなるようないいお店です。
カフェに興味がある方、また散歩がてらカフェに行きたいなと思う方、是非一度訪れてみてください。

写真1

PROFILE
公衆衛生学専攻
医学統計学分野 在校生
伊達 翼
Tsubasa Date

大阪府出身で、5歳の頃より東京で育つ。大学院入学を機に仙台へ。(仙台では「伊達」と言うと「伊達 政宗」を連想される方が多く、また「伊達政宗の末裔ですか?」と聞かれることが多いのですが、全く関係はありません。)趣味は、「料理」と「サッカー」。特に料理は大学生の頃に興味を持ち始め、様々なジャンルの料理に挑戦しています。仙台にはフレッシュな食材が豊富なので今まで以上に料理の幅を広げることができています。