東北大学大学院医学系研究科・医学部

大学院説明会
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臨床経験を学問的に振り返り、
自分を充実する機会として進学
現在は教授職として看護教育に従事

インタビュー
医科学専攻
行動医学分野 卒業生
佐藤 菜保子
Naoko Sato
卒業年度:2012年
卒業学位:博士(医学)
現在の職場・会社名:福島県立医科大学
現在の役職:教授
2020.06.11

佐藤 菜保子

新たな挑戦、そして人生を充実させるために

●大学院に進学しようと思った理由を教えてください

大学院進学前は看護師として13年ほど臨床で仕事をしていました。仕事を通して患者さんの心理や看護師のストレスマネジメントなどに関心を持つようになり、外部の講習会で不定期に学んでいましたが、基礎から系統立てて学びたいと思うようになり、他大学に社会人編入し若い人たちと一緒に心理学を学びました。そこで大人になってから学ぶことの楽しさと価値を知りました。このとき30代の半ばになっていましたが、自分のこれまでの臨床経験を学問的に振り返ってみたい、新たな挑戦をしてみたい、という気持ちが強くなり、人生後半に向け自分を充実させる機会として大学院に進学しました。

大変さもあるが、未知の世界への冒険のような楽しく贅沢な時間

●進学してみて、どうでしたか?

社会人学生として大学院生活を送りました。仕事を持ちながら、そして家庭では主婦として、母としての役割もあるなかで、毎日時間に追われるように過ごしました。うまくいかないことや大変だと思うことも時々ありましたが、それが苦にならないほど、新しい学びや研究は未知の世界への冒険のように楽しく感じられました。研究テーマが明確となってからは、課題達成に向けた自分自身の姿勢が変化したと思います。具体的には、思考過程、創意工夫のしかたが変化し、また、実践・行動に関わる度胸や、失敗から学ぶ力も強化されたようにも思います。頑張って一歩踏み出せば年齢は関係なく新しい世界が広がることも知りました。大学院生活は人生において考えてもとても贅沢な時間だったと思います。担当してくださった指導教授をはじめとした多くの先生方、支えてくれた家族や友人、職場や研究室の仲間には心から感謝しています。

ストレス関連疾患の治療やケアの構築につながるテーマを選択

●研究テーマとそれを選んだ理由を教えてください

行動医学分野では、ストレス関連疾患の代表格である過敏性腸症候群 (IBS) におけるCorticotropin-Releasing Hormone Receptor 1 (CRH-R1) 遺伝子多型の影響について研究し、CRH-R1遺伝子型およびハプロタイプとIBSの症状の関連から、ストレッサーに応答した結果生ずる脳腸相関においてCRH-R1遺伝子多型が病態に関連する可能性があることを明らかにしました。ストレスや心理的負担、それらの疾患との関係性に関心があり、東北大学だからこそできる研究に挑戦したいと思っていました。研究テーマは心身医学に関する広い範囲で選択可能でしたが、指導教授がIBSの研究で世界的にも第一人者であり、専門的な指導を受けられること、また、ストレス関連疾患の患者さんの治療やケアの構築の際にエビデンスとなりうる研究に携わりたいと思い選択しました。

多様で質の高い知識を得ることができる研究室

●研究室の雰囲気はどうでしたか?

幅広い年代の学生が在籍しており、それぞれが静かに研究活動している様子を見て最初はとても緊張したのを覚えています。話してみると医師、看護師、理学療法士、作業療法士、心理士、薬剤師など多様な背景を持つこと、研究テーマや研究手法も様々で、また常に留学生もおり、足を運び日常会話するだけでも勉強になりました。週1回のカンファレンスは海外論文の抄読や、大学院生それぞれの研究に関する議論やプレゼンテーションで構成され、日々最新の情報を得るとともに、洗練した結果の示し方、考察の仕方など、知識を蓄積してゆくことが出来る雰囲気でした。カンファレンスを通して、自己学習だけでは到底得られない量の質の高い研究に触れることが出来たと思います。

幅広い分野の指導を受けることができる東北大学

●東北大学の良いところは?

指導してくださる教授をはじめとした先生方は研究室を超えた横の繋がりが強く、非常によい連携が図られている点が良いところだと思います。そのため研究を深めてゆく上で、指導教授からの専門性の高い助言を頂けることは勿論、所属研究室を超えた幅広い分野の多くの先生方から、直接的にも間接的にもたくさんの助言や指導を頂くことができました。また、様々なご専門の先生のお考えに触れることで、研究にアイディアが広がったほか、在学中に研究者としての姿勢やコミュニケーション力が磨かれたように思います。昼夜問わず図書館も使用できますし、最新の研究にアクセスできるデータベースも充実しており、常に最新で刺激的な情報に触れる機会が多いのも魅力だと思います。

尊敬できる師、自分の信念、支えとなる仲間を持つことの大切さ

●現在のお仕事について教えてください。また、大学院時代のご経験はどのように活かされていますか?

大学で看護に関する教育を行っています。現在は役職上、授業を担当するだけでなく、大学の運営にかかわる責任のある仕事も行っています。また教育だけではなく、がん患者さんを対象とした研究や、研究で得た知見をベースとした、患者さんの生活の質を高めるための社会支援に関する活動も行っています。大学の教員には研究も教育も求められ、その仕事には終わりはありません。時に苦しい時もありますが、努力の成果が実った時や、ふと、患者さんの力になれたかな?と思える時、本当に頑張って良かったという大きな喜びも得られます。苦しい時にも目標を見失わずに課題を達成してゆくには、尊敬できる師を持つこと、自分の信念を持つこと、また、苦しい時に励みや支えとなるような仲間を持つことが大切だと思います。東北大学での大学院生生活ではこれらすべてを得ることができたと思っています。特に志を共にし、離れていても一緒に頑張れる多くの仲間は私の宝です。

学ぶことの楽しさや研究することの意義を伝えていきたい

●今後の目標や抱負を教えてください

大学院で挑戦した研究テーマは現在も、当時協力を頂いた先生をはじめ新たに多くの共同研究者の先生のご協力を頂きながら現在の仕事に関連させ継続しています。IBSのモデルを基礎としたCRHのがんへの作用、そしてがん患者さんの抑うつや認知する情動と生活の質(Quality of Life : QOL)の関連について研究を続けています。がんと診断された患者さんが自分らしく生活できるよう、あらゆる角度から支援を考えられるような結果を示してゆきたいと思います。また、この研究に限らない新しい知見を講義やゼミにどんどん取り入れて学生さんたちに学ぶことの楽しさや研究することの意義を、日々伝えてゆきたいと思います。

●進学を考えている方へのメッセージをお願いします

仕事や家庭と研究生活の両立には周囲の理解と協力が必要です。大学院で学ぶ数年間には、周りに負担や心配をかけてしまい、それを悩みに思う日もあるかもしれません。家族や職場の人とは普段から時々互いの状況を伝え合うなど、コミュニケーションをよくしておくと良いと思います。進学前そして研究生活をスタートさせてからも、日々の生活や周りの人を大切にして、周囲の協力を得られるよう調整を心掛けると良いと思います。
進学を迷っている皆さん、勇気を出して新しい自分に挑戦する一歩を踏み出してみてください。

mylife

疲れを感じたり、アイディアに行き詰ったときは、息抜きを兼ねてよく学内の敷地を散歩しました。特に星陵会館(生協)、5号館周辺は自然にあふれ、春には桜、初夏には新緑や花水木、秋には銀杏や紅葉など様々な種類の樹木の四季折々の変化は本当に目を楽しませてくれます。池に浮かぶ桜の花びら、銀杏の葉や冬の薄氷などとても季節感を感じることが出来ます。時にはカメラをもって歩いてみるととても良い気分転換になります。松林では大きな松ぼっくりも拾うことが出来ますので、時々遊びに来る保育園児に負けずに探してみてください。

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PROFILE
医科学専攻
行動医学分野 卒業生
佐藤 菜保子
Naoko Sato

2008年3月障害科学専攻博士課程前期(行動医学分野)修了。2012年9月医科学専攻博士課程(行動医学分野)修了、博士(医学)。1991年4月よりNTT東日本東北病院に看護師として勤務、その後、宮城大学助手、東北大学大学院医学系研究科にて助手、助教、講師を経て現職に至る。2012年第3回Japan Gut Forum特別奨励賞(佐々木彩加, 佐藤菜保子, 鈴木直輝, 金澤素, 青木正志, 福土審)、2015年日本行動医学会 第22回日本行動医学会 最優秀演題賞受賞(小室葉月, 佐藤菜保子, 佐々木彩加, 鈴木直輝, 鹿野理子, 田中由佳里, 山口(加畑)由美, 金澤素, 割田仁, 青木正志, 福土審)。

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