東北大学大学院医学系研究科・医学部

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社会と医療の橋渡し役として
体系的に医療を学ぶ

インタビュー
公衆衛生学専攻
医療管理学分野 在校生
溝部 鈴
Rei Mizobe
学年:修士2年
岩手県盛岡市(生まれは山口県萩市)
2020.06.04

溝部 鈴

「医療」を体系的に学ぶ

●大学院に進学しようと思った理由を教えてください

私は本学農学部の出身です。しかし卒業したのは20年以上前のこと。決して優秀な学生ではありませんでしたし、当時は就職氷河期でその先の見通しがたちにくく、家庭の事情もあり学部を卒業してすぐに就職する道を選びました。運良く、製薬メーカーの技術職に就くことができましたが、コツコツと一つのことを突き詰め続けることより、色々な環境で色々な方と接しながら色々なことを進める仕事をしたいという思いがあり、当時東京お台場に開館したばかりの科学館に転職しました。当時、文部科学省では科学技術を正しく理解し、科学リテラシーを身につけるための方策が提言されており、その一環で、難しい科学技術をわかりやすく市民に伝える「インタープリター(現:科学技術コミュニケーター)」という仕事に携わることになりました。それ以降10年間ほど、基礎科学技術広報、研究広報の仕事を続けておりましたが、妊娠・出産を経て広報以外の業務を経験する中で、さらに広報の現場で研鑽を重ねたいと思い、東北大学病院に広報室が設置されることを聞き、仙台に戻ってきました。医療は基礎科学技術が基盤となっているわけですが、当たらずとも遠からずで、医師をはじめとした医療スタッフと患者、家族、社会環境など多くの人が関わりますし、人の命にかかわるだけに発信した情報が受け手側にどう伝わるかにも配慮が必要です。着任当時の病院長に医療行為は科学以外の要素があり文学的センスが必要だよと、指導いただいたのを覚えています。その後、医療機関の広報として様々なメディアやイベント等を通して社会と交流し、信頼関係の醸成に努めています。仕事をするなかで感じるのは医療は身近でありながら、その仕組みについて理解している方は多くないということです。私自身も過去を振り返っても医療についてきちんと学ぶ機会はなかったように思います。今の医療は、医療費削減や働き方改革など多くの課題を抱えていますが、医療と社会の橋渡し役として、医療を体系的に学び、広報という視点から何か貢献できることがあるのではないかと思い、進学することにしました。

●進学してみて、どうでしたか?

仕事をしながら学業、特に研究を行うことは私一人で成立するものではありませんので、家族を含め、ご理解くださる周囲の方々、柔軟にご指導くださる先生方には感謝してもしきれません。講義では公衆衛生と関連する幅広い分野の教育を受けることができます。特に、東北大学の災害科学国際研究所、東北メディカル・メガバンク機構、大学病院臨床研究推進センターとった世界水準の教育研究拠点が融合した教育環境となっており、世界トップクラスの講師からの指導を受けられる恵まれた環境であることを改めて認識しました。私の所属する医療管理学分野は、1952年に全国に先駆けて開講された病院管理学講座を前身としており、医療の社会面、経済側面、政策面について先駆的研究を推進しています。指導教官の藤森教授は、「包括医療費支払い制度(DPC/PDPS)」の設計と普及に取り組まれる第一人者であり、日本の医療体制、政策の全体像を学ぶことができます。低コストで質の高い医療を提供するという日本の素晴らしい医療制度が抱える様々な問題点をあらゆる視点から捉え、限られた医療資源をどのように有効活用するべきか、という医療を見る視点を身につけることができます。私は現在、高齢者に対する侵襲性の高い医療の現状や、治療成績傾向等をDPCデータに基づいて解析することに取り組んでいます。少子高齢化が進む中で、日本は多くの課題を抱えています。高齢者に対する医療をDPCデータから考えて見たいと思っています。

仕事・学業・育児の歩みを止めずに

●研究室の雰囲気はどうですか?

同じ敷地内で仕事をしていますので、ずっと研究室にいることはありませんが、それでも訪ねた時はあたたかく迎え入れてくださるアットホームな雰囲気です。十分なスペース、資料が揃っており、居心地がとても良いです。

●東北大学の良いところは?

私のような社会人もあたたかく受け入れてくださる文化があること、また学際的で、あらゆるバックグラウンドの方と出会い、世界水準の環境中に身を置くことができる点が良いところだと思います。講義でも多角的な観点から議論を深めることができることが魅力的です。また学都仙台という名のとおり、学業に集中できる空気が街に漂っているように感じます。

●仕事との両立はどのようにしていますか?

周囲の理解を得て、感謝を忘れないことです。ただし、仕事と学業に育児が加わるとパニックになります…。

●今後の目標や抱負を教えてください

年齢的にはきびしいものを感じますが、今の歩みを止めずに、学業、仕事とも研鑽を積んでいきたいと思います。また学業で身につけたことを、社会との接点である広報という視点から、どのように一般の方の理解に繋げ、課題解決につなげていくのかに取り組み、微力ながら日本の医療に貢献できればと考えています。

mylife

キャンパスから歩いて10分ほどのところにある広瀬川の河原で、小学生の息子とバトミントンをしています。化石も発掘できるようなので、今度挑戦してみたいです。また宮城県内には季節の植物が楽しめる場所がたくさんあります。みちのく湖畔公園のコスモスやコキアや、せんだん農業園芸センターのバラ祭りなど、季節の植物が咲き乱れる様子を子どもと訪れ楽しんでいます。

写真1

PROFILE
公衆衛生学専攻
医療管理学分野 在校生
溝部 鈴
Rei Mizobe

東北大学農学部卒業後、京都府にある製薬会社の基礎研究所で技術員を経て、2002年より東京お台場にある科学館で科学コミュニケーター、2005年より理化学研究所で広報に携わる。2013年、東北大学病院広報室副室長。