大学院説明会
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私は言語聴覚士として脳損傷患者さんの評価やリハビリテーションに携わってきましたが、入職して間もない頃に担当した失語症の患者さんがとても印象に残っています。その方は身体のまひはないのですが、重度の発語失行があり、発声が困難でした。しかし、回復期リハビリテーションを経て再会した際、たどたどしいながらも一生懸命にお話ししてくださり、深い感銘を受けました。また、失語症の方の「言葉が出ない」「話しにくい」といった困難感に触れ、どうしてこのような症状が生じるのか、どうしたらこの問題を解決できるのか、考えるようになりました。このような出会いをきっかけとして、失語症や高次脳機能障害に関心を持ち、研究を志すようになりました。当研究室は、国内で唯一高次脳機能障害を専門としています。ここで自分の知識や技術を深め、さらに学んだことを臨床に生かしたいと思い、進学を決意しました。
大学院では、高次脳機能障害に関する専門的かつ幅広い知識を学ぶことができ、その奥深さにますます魅了されています。大学院で学んだことが臨床現場で症状に気付くきっかけになっており、探究する面白さを実感しています。現在はコロナ禍の影響で学会会場に赴いて症例発表をしたり講演を聴いたりすることはなかなか難しいですが、オンラインで開催される学会や講習会も多くあり、最新の知見を得ることができます。昨年は、オンラインで開催された国際学会で初めて発表することができ、非常に良い経験でした。
現在は、原発性進行性失語症における言語障害とその神経基盤に関する研究に取り組んでいます。東北大学病院に勤務していた際、初めて原発性進行性失語症の患者さんと関わる機会がありました。近年注目されている原発性進行性失語症は、脳血管疾患による失語症とは異なる病態を呈することから、その評価方法やリハビリテーションについてまだ一定の見解が得られていません。本研究によって、原発性進行性失語症における言語障害の特徴を明らかにし、新たな評価方法の開発や神経基盤の解明に貢献していきたいと考えています。
当研究室は、医師、看護師、言語聴覚士、臨床心理士など多職種がそろっています。週1回の研究相談会や抄読会は、自分の専門以外の領域についても学ぶことができ、非常に興味深く楽しいです。とても気さくな先生ばかりなので、ちょっとした疑問でも丁寧に教えてくださいます。自分の関心のあるテーマについて、どうしたら科学的な研究として成り立つかという視点で指導していただくことも多く、大変勉強になります。
学生が研究について学ぶ環境が整っていることです。中でも図書館サービスが充実しており、最初の症例報告から最新の研究まですぐに文献を入手できます。英語論文執筆セミナーなども開催されており、研究を進めるに当たって必要なスキルを身に付けることができます。また、他分野との共同研究が盛んに行われているため、幅広い領域のスペシャリストと関わる機会があり、とても魅力的です。
今後はさらに研究者としての視点やスキルを磨いていきたいと思います。臨床での不思議や疑問を科学的に探究し、その面白さを形にすることが臨床研究の醍醐味(だいごみ)であると感じています。まだまだ勉強不足の身ですが、臨床から研究へ、研究から臨床へとつないでいけるよう尽力したいと考えています。
天気の良い休日は、のんびり散歩に出掛けます。星陵キャンパスから歩いて20分ほどのところに、伊達家ゆかりの北山五山があります。中でも資福寺はアジサイ寺と呼ばれており、たくさんのアジサイを楽しむことができます。6月半ばから7月初めにかけて見頃を迎えますので、ぜひ足を運んでみてください。
東北大学教育学部を卒業後、国立障害者リハビリテーションセンター学院に進学して言語聴覚士の資格を取得。急性期・回復期病院や東北大学病院での勤務を経て、東北大学大学院医学系研究科に入学。