東北大学大学院医学系研究科・医学部

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大学院進学で仙台に来て10年
経験や立場の変化を経て成長を実感
和気あいあいとした研究室で
共に有意義な時間を

インタビュー
保健学専攻
分子血液学分野 講師
Molecular Hematology
平野 育生
Ikuo Hirano
2021.05.10

平野 育生

血球の分化を制御する因子と白血病発症との関係を探る

●研究の概要を教えてください

われわれの体の中には多様な血球が存在し、それぞれに特徴的な性質を持ち、体の恒常性の維持に働いています。これらの血球は、元はたった1種類の造血幹細胞という細胞より始まり、さまざまなサイトカイン刺激および各血球系統に特徴的な転写因子群の組み合わせにより、枝分かれするような形で分化して生じることが知られています。血球分化過程の研究の歴史は古いですが、近年の解析技術、特に遺伝子発現解析技術の発展により新たな知見が次々と明らかになり、古典的な知識が塗り替えられてきています。私たちの研究室では、血球分化を制御する重要な転写因子であるGATA転写因子群、特にGATA1, GATA2がどのようにして血球分化を制御しているのか、最新の解析技術も使用し研究を進めています。また、血液のがんである白血病は、血球分化制御機構の破綻がその原因となっていることが多いことから、これらの因子の異常がどのように白血病発症と関係しているのか、白血病モデルマウスなどを用いて研究しています。

教員と学生の距離が近く、外部の研究者との交流も盛ん

●研究室はどのような雰囲気ですか?

研究は決して1人で行うものではありません。もちろん、研究者は各自のテーマを持って研究を行いますが、1人では知識や視点の偏りが生じてしまいがちです。そのため、研究室内はもちろんのこと、他の関連研究室とも積極的な交流を図ることが重要です。分子血液学分野は決して大きい研究室ではないですが、医学系研究科や加齢医学研究所の複数の研究室、さらに海外の研究者とも定期的に研究内容についての意見交換を行っています。また、それぞれの研究室の持つ技術を共用し、多くの研究室と協力することで最新の研究技術を使用することが可能です。一方で、当研究室は、大きすぎない研究室だからこそ、清水律子教授や私を含め指導する立場の教員の目が届きやすい環境であり、教員と学生の距離が近く、和気あいあいとした雰囲気で研究活動ができています。東北大学の保健学科検査技術科学専攻の学生や卒業生が多いのですが、最近は他大学出身の日本人学生だけでなく、外国人留学生も参加してくれており、学生間でも良い刺激となっております。研究室は、ご連絡いただければいつでも見学可能ですので、興味がありましたら、ぜひ肌で感じに来てくれればと思います。

研究者としてわがままに貪欲に、有意義な大学院生活を

●学生にどのようなことを期待しているかなども含め、進学希望者へのメッセージをお願いします

進学希望の学生のほとんどは、卒業研究を通して研究活動の雰囲気を体験したことと思います。その上で大学院に進学を決めて来られたということは、もっと研究をしてみたい、少なくとも、もう少し研究を経験してみてもいいかなと考えている方だと思います。もちろん将来的な就職・キャリアのことも視野に入れて進学を検討されている方もいるでしょう。それでも、せっかく時間とお金を使って進学するわけですから、明確な意志を持って、全力で有意義な時間を過ごしていただきたいです。研究は趣味の側面がある、と言ってしまうと語弊があるかもしれませんが、元来、研究活動は知的好奇心・探究心を満たすためにパトロン・支持者を集め行うものだったわけですから、自主性・主体性を持って取り組むべきものです。教育を受けるものとして、「言われたことをやる」「期待されたことをやる」のも重要ですが、研究者としてある程度わがままかつ貪欲に「自分のしたいことをする」のも必要だということです。進学してきた学生がそうして有意義な大学院生活・研究活動を過ごし、一皮も二皮もむけて成長してくれれば、指導教員冥利(みょうり)に尽きます。

●修了後はどのような進路がありますか?また、修了生はどのように活躍していますか?

私たちの研究室は保健学科検査技術科学専攻に属していますので、同専攻の学生を受け持つ機会が多いです。そのため、修了後は病院で臨床検査技師として勤務する方が半分程度です。それ以外には製薬企業のMRや研究開発部門などの企業へ就職をされる方、博士課程を修了後そのまま当研究室で研究を続けている研究者もいます。

●病院や企業に勤務しながらの修学は可能でしょうか?

当研究室では、残念ながらそのような形で修学した方はいません。それは、これまでにそういった学生を受け持つ機会がなかっただけで、不可能なわけではありません。もちろんさまざまな調整が必要となってくると思いますが、事前によく相談し互いに了解が得られれば可能だと考えています。

国内有数の設備と快適な環境に学生たちも生き生きと

●東北大学の良いところは?

東北大学の建学以来の理念は「研究第一主義」「実学尊重」「門戸開放」です。実際、東北大学には文系・理系の多種多様かつ高度な研究を行う研究室が数多く存在しています。その多様性は、私も把握しきれないほどです。星陵地区だけで言っても医学系研究科の研究室だけでなく、歯学研究科や加齢医学研究所、東北メディカルメガバンク機構などにそれぞれ特色ある研究室があり、われわれは、その中のさまざまな研究室と協力関係を築き研究活動を行っています。単独の研究室では購入ができないような高額な解析機器類なども共通機器として充実しており、研究活動を行う上でここまで整った環境は国内外でも数少ないです。さらに、東北大学の立地である仙台は、仙台空港やJR仙台駅からの都心や他地方へのアクセスのしやすさもあり、地方特有の閉塞(へいそく)感のようなものも全く感じません。健やかな研究活動には息抜きも重要ですが、過ごしやすい気候に、程よく開発された街並み、少し足を伸ばすだけで行ける自然豊かな観光地など、とても住みやすい環境だと感じています。こうした環境が影響してか、東北大学の学生・先生の雰囲気も生き生きしていると個人的に思っています。

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mylife

大学院生として関東地方から仙台市に移ってきて10年以上が経過し、振り返ってみると短いようでいろいろなことがありました。趣味の面では元々好きではなかった日本酒の魅力にはまり仲間たちや酒屋さん、酒造関係者と日本酒の会を開いたりしました。うれしいライフイベントとしては結婚して子どもも生まれ父親になり、うれしくないライフイベントとしては震災を経験して生きていることのありがたみを実感し、また、このコロナ禍で日常のはかなさを実感しました。仕事面では学生から教員になり指導される側から指導する側に…。仙台に来た頃の自分と比較して、いまの自分の成長した部分を考えると、こうした経験や立場の変化がその根底にあるんだなと実感します。あと少しで不惑。あれこれと惑わずにものを考えられるようになるにはまだまだかかりそうですが、何事も恐れず経験し、変化を受け止めて成長していきたいものです。

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PROFILE
保健学専攻
分子血液学分野 講師
Molecular Hematology
平野 育生
Ikuo Hirano

北里大学理学部生物科学科卒。筑波大学大学院修士課程人間総合科学研究科を修了後、東北大学大学院博士課程医学系研究科に入学。同博士課程を修了後、2013年より、保健学専攻 分子血液学分野で赤血球分化を制御する分子機序の研究と白血病発症機序の解析に取り組む。検査技術科学専攻の教員として、血液学に関わる実習や講義に携わっている。

●MAIL

ikuo0804*med.tohoku.ac.jp(「*」を「@」に変換してください)