大学院説明会
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高校2年生の時に生物の授業の一環として、実験合宿に参加したことがきっかけです。その合宿は希望者が集まり、さまざまな高校の生徒と協力して実験を行うものでした。いま思い返すと基本的な実験だったのですが、初めてピペットを使用し、他の高校の生徒と一緒に実験を行うことが新鮮で非常に楽しかったことを覚えています。また、合宿では実験がうまくいかず、2回目の実験を深夜まで行ったのですが、そこで実験の奥深さや難しさを感じました。その経験から高校卒業後も実験を続けていきたい気持ちがあり、研究者という職業が一番自分の目標に合っていると思い、大学院への進学を決めました。
学部生時代に実験する機会がなかったため、進学後についていけるか心配でした。しかし、さまざまな機器や実験動物を用いた実験手法を丁寧に教えていただいたことで、不安は一掃され学びに集中できました。実験はうまくいかないことも多いですが、やりたいことができているので、苦になりません。
博士課程では脳内炎症に着目し、うつ病の病態解明を目指して研究に取り組みました。これまで、うつ病のメカニズムとしてモノアミン仮説が提唱されていました。この仮説に基づいた抗うつ薬(SSRI; 選択的セロトニン再取り込み阻害薬)は効果が表れるのに数週間かかることや抵抗性のうつ病が存在することにより、これまでの仮説では十分に説明できていません。そのため、病態メカニズムの新たな仮説が必要とされています。そこで、私はうつ病患者で観察される免疫系の異常に着目しました。脳内の免疫系はミクログリアという細胞が担っています。このミクログリアが脳内で何らかの異常を起こしているのではないかと思い、「免疫系の異常」という切り口から研究に取り組んでいます。
うつ病は自殺にもつながるため、病態の解明や治療薬の開発は重要な課題です。うつ病のメカニズム解明によって多くの人々を一度に救うことができるのではないかと考えたことが、テーマを選んだ一番の理由です。また、うつ病をはじめとする精神疾患は遺伝的背景や環境的要因が多様であり症状に個人差があることなど、病態もさまざまであることが知られています。複雑な病態を示す精神疾患を多角的な視点から研究を行うことにやりがいを感じたことも理由の一つです。
災害精神医学分野は学生の希望に合ったテーマ選択を行うことができ、丁寧に指導していただけます。研究設備も充実しており、やりたいと思う実験はほとんど行うことが可能です。また、月に数回の抄読会や進捗(しんちょく)報告では分野のメンバーと議論することで、研究内容を多面的な視点で考える習慣がつきます。
東北大学は「研究第一」と「門戸開放」を掲げており、研究が盛んに行われています。特に、分野の垣根を越えた交流が積極的に行われており、知識の幅を広げることが可能です。各種セミナーが多数開催されているため、自分の興味に合わせて参加できます。
大きく分けると、学生教育と基礎研究の2つです。学生教育では看護学3・4年次学生の病棟における実習指導、卒業研究指導、授業補助が中心です。一方、大学院時代から継続している実験も毎日行っているため多忙な日々を過ごしています。現在所属の分野では動物実験を行っているメンバーがいなかったのですが、本年度から卒業研究の学生がメンバーに加わったため、基礎実験の手技を生かすことができています。また、多様なバックグラウンドを持つ研究者が集まることで、新たな研究アイデアが生まれるため、私のような基礎医学研究を行っている研究者の視点を看護学研究にも生かせるのではないかと思っています。
基礎と臨床をつなぐ懸け橋となれるような研究者を目指しています。看護学の中で基礎医学研究を行っている方もいらっしゃいますが、多くはありません。他の看護系大学でも同様の状況だと思います。学際的研究が推進される中で、多種多様な研究背景・手技手法を有する研究者の存在は重要であると考えています。私が現在行っている研究はモデル動物を用いた病態メカニズムの解明であり、直接患者さんに支援や介入を行うような臨床研究には少し遠い位置にあります。この「基礎医学研究(基礎)」と「看護研究(臨床)」研究の間をつなぐような研究テーマを見いだし、実施していくことが私の目標です。今後、研究に取り組み、精神疾患を有する方々の支援を実現できるように頑張っていきたいと思います。
研究に行き詰まった時やリフレッシュしたい時に、少し歩くことで気晴らしをしていました。星陵キャンパス内は植物も多く、四季を感じることができます。特に、1号館前の細道は距離も長すぎず、手軽に木々や野鳥を眺めることができるスポットとしてお薦めです。
2017年3月医科学専攻修士課程(災害精神医学分野)修了。2021年3月医科学専攻博士課程(災害精神医学分野)修了後、現職に至る。2016年6月学際高等研究教育院修士教育院生、2018年6月博士教育院生。2021年3月東北大学総長賞。