2021年4月12日

細菌における抗菌剤耐性の新しいメカニズムを発見

 熊本大学大学院生命科学研究部の澤智裕教授、小野勝彦助教らのグループは、同大学院先端科学研究部の井原敏博教授、北村裕介助教、東北大学大学院医学系研究科 赤池孝章教授らとの共同研究により、細菌がβラクタム抗菌剤を分解・不活性化する新しいメカニズムを明らかにしました。

 βラクタム抗菌剤は、細菌の細胞壁合成を阻害する抗菌剤で、その優れた有効性や副作用の少なさから、多くの細菌感染症の治療に用いられています。なかでもカルバペネムと呼ばれるβラクタム抗菌剤は、従来のβラクタム抗菌剤が効かなくなった耐性菌に対する「最後の砦」とされています。これまでの研究から、細菌の硫黄代謝過程で生じる硫化水素が、細菌の薬剤耐性に寄与することが報告されていましたがその詳細なメカニズムは分かっていませんでした。今回、硫化水素が超硫黄と呼ばれる分子に変換されると、カルバペネムを含むβラクタム抗菌剤を強力に分解・不活性化することを発見しました。構造解析の結果、分解された薬剤は、βラクタム環が開環し硫黄が付加した、カルボチオ酸という新規化合物であることが分かりました。このカルボチオ酸に対する高感度分析法を開発し、その生成動態を解析した結果、βラクタム抗菌剤は、細菌に取り込まれた後、菌体内の超硫黄分子によりカルボチオ酸へと分解され、さらにそれが菌体外に排出されていることを発見しました。今回の結果は、これまでに知られていない、細菌によるβラクタム抗菌剤の分解経路を明らかにした画期的な成果です。今後、菌体外に排出されたカルボチオ酸を指標(バイオマーカー)とすることで、細菌の超硫黄分子産生を阻害する化合物のスクリーニングを計画しています。このような化合物は、超硫黄分子に依存したβラクタム抗菌剤の自然耐性を弱める効果(アジュバント効果)を有することが考えられ、その結果、より低濃度のβラクタム抗菌剤での治療が可能になり、新たな耐性菌の出現が抑えられると期待されます。

 本研究成果は、令和3年3月30日(日本時間)に、アメリカ化学会の「ACS Chemical Biology」に掲載されました。
本研究は、科学研究費補助金ならびに乳酸菌研究会の支援を受けて行われました。

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●取材に関すること
東北大学大学院医学系研究科 医学部広報室
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