ご挨拶

写真:下瀬川 徹

ライフサイエンス系の研究・教育・人材育成の拠点としての医学系研究科

東北大学大学院医学系研究科長・医学部長

八重樫 伸生
YAEGASHI, Nobuo

 医学は生物学という大きな学問領域の中に分類されますが、特に“ヒト“という生物を主対象としている点が特徴です。そのため医学を学ぶ者には知識とともに高い生命倫理観が求められます。そして医学部は医学を学ぶ学部であると同時に、医師や保健・医療専門職を育成する機関でもあります。人生百年時代といわれる中で、ただ単に長生きするのではなく、心身ともに健康であり続ける時間、いわゆる”健康寿命”を少しでも延ばすことが大切になっています。それを実現するために社会の中心で働いているのが医学部で学んだ人たちです。少子高齢化社会の中で我々が果たすべき社会的役割はますます広がり重要になっています。

 医学系研究科の研究領域はライフサイエンス領域の中に含まれます。他のライフ系の研究科や研究所との大きな違いは、生命・生物の中で特に“ヒト”を研究対象として捉えているところです。ヒトをターゲットとした研究と一口に言いましても研究領域としてかなり大きく研究手法も多種多様ですので、私たちの研究科では医科学専攻、障害科学専攻、保健学専攻、公衆衛生学専攻の四つに専攻を分けて、広く大学院生を募集しています。

 卒業生の中には世界的な業績をあげて活躍しているかたがたくさんいます。例えば免疫を担当する細胞が増殖し分化するメカニズムの解明からはじまった研究では、カギとなる遺伝子を発見しただけでなく、子供の重篤な免疫不全疾患の原因であることも突き止められました。さらにその遺伝子を改変したマウスでは免疫拒絶反応が起きず、ヒトの細胞がなんでも生着するので世界中の研究室で使われています。また、本研究科が深く関わっている東北メディカル・メガバンクプロジェクトでは、約30億個の塩基配列からなるヒトの遺伝情報について、日本人数千人分の解読を終了し日本人の標準的な遺伝子配列を公表しました。これが日本人向けの薬の開発や副作用の発現、病気の発症の個別化予防のためのゲノム医療の基盤となって使われることになります。実は最初に述べた“健康寿命“という用語を提案したのも本研究科に在籍する教授です。

 このように研究や人材育成は単独で行っているものではなく、東北メディカル・メガバンク機構や加齢医学研究所、医工学研究科、災害科学国際研究所、生命科学研究科、東北大学病院、歯学研究科、薬学研究科など、学内の他のライフ系の研究者たちと密な連携を取りながら行うことで世界をリードする研究成果を発信し、人材を輩出し続けています。多彩な教員と充実した機器、分野や専攻などの垣根を超えた自由な研究体制が私たちの強みなのです。

八重樫 伸生 (やえがし のぶお)

医学系研究科長・医学部長
東北大学大学院医学系研究科 婦人科学分野 教授
1984年東北大学医学部卒業。八戸市民病院産婦人科勤務、米国フレッドハッチンソン癌研究所博士研究員、東北大学産婦人科助手、1994年古川(現大崎)市民病院産婦人科部長。2000年東北大学大学院医学系研究科婦人科学分野教授。2015年東北大学副学長・病院長。2019年より現職。

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